スーパーファミコン用ソフト

『かまいたちの夜』

販売…チュンソフト       購入価格 0円 (妹にもらう)

執筆日:2002年 5月9日





■第一章『第二弾』


…サウンドノベルの元祖「チュンソフト」の、
サウンドノベル第二弾。

それが『かまいたちの夜』です。


前作でのストーリー面の弱さを補うため、
原作を本業の小説家 (我孫子武丸さんでしたっけ?) に依頼したり、
グラフィックを格段にパワーアップ(雪の動きにはビックリしました)
するなどの改良が加えられています。



…また、ゲーム画面内に登場人物を出すという、
前作にはなかった試みにも挑戦しております。

それも、
『半透明機能を使った人影』を表示することで
「人物の概要」を伝えつつ
「プレイヤーの想像力を必要以上に固定しない」
という、独創的で見事なアイデアによるものです。




…さてしかし、
見た目的には大きく様変わりしていますが、
前作が持っていた弱点については
克服されているのでしょうか?



20回ほどプレイしてみたのですが、


何というか…



『スッキリしないゲーム』
というのが正直な感想です。




…今回は、前作『弟切草』との比較を交えて、
(『弟切草』とは方向性の異なるゲームなので
比較は不本意だ、と言われるかも知れませんが…)

その理由を検証していこうと思います。





■第二章『基本システムの比較』


ストーリーを読み進めていき、
要所々々でプレイヤー自身が行動を選択し、
それによって話が「分岐」「ザッピング」する

という基本的なシステムは、
『弟切草』をそのまま継承しています。


今回は特に
「犯人の正体が分からないため、
そうと知らずに殺人犯と行動を共にする」

場合もあるため、ザッピングの重要性
前作と比較になりません。

(自分の行動を変化させることで、他人のアリバイの裏が取れるからです)




…ただ、

『謎解きと直接関係無い選択肢なのに、
それを適当に選んだせいで
重要な場面に出くわせなかった』
り…

『何をすればイイのかは、自分の推理で
ある程度分かっているのに、それを行なうための
「選択肢」がルートによっては出現してくれず、
ヤキモキさせられた』
り…

その結果、
『犯人のトリックは見破ったのに、
それを指摘できないままダラダラと話が進んで
結局、皆殺しにされた』
り…

と、サウンドノベル特有の弱点
そのまま放ったらかしになっている
のにはガッカリしました。

(謎解き自体がそんなに難しくないので、
犯人がすぐに分かるぶん、余計にイライラするのかも知れませんが)





…なお、
『分岐地点(及び、フラグ立て)の分かりづらさ』
も相変わらずですが、これは後年に
同社から発売されたプレイステーション版
『分岐チャート』を付加するという改良が
されてますから、ツっこんだ非難はせずにおきます。





■第三章『ストーリーの比較』


前作『弟切草』のシナリオは
良く言えばバリエーションに富み、
悪く言えば破天荒な代物です。


『かまいたちの夜』では
本職の小説家さんを用意しただけのことはあり、
前作ほどのメチャクチャな流れはありません。



…が、悪くもなければ良くもない
平均点シナリオが多く、
『わざわざ高いお金を払って読む価値があるのか?』
という疑問が、たえず脳内をうろつきます。



…また、サウンドノベル特有の、
『幹になるシナリオから外れた枝葉のシナリオは、
おざなりになりがち』

という弱点ももちろんですが、それ以前に
『精神的につらい話が多すぎる』
のは、問題なのではないでしょうか?


全体的に誰かが死んだり殺されたりする話が多く、
それを払拭するような逆転の爽快感弱い
(主人公は所詮「普通の青年」ですから) ので、
無力な自分を呪いたくなるような
モヤモヤした後読感の悪さがあります。




…僕の抱いた感想を「実感したいと」いう方は、
このゲームを深くやりこむ必要はないので、
とりあえず1度だけプレイしてみて下さい。


初プレイで見られるシナリオは
大雑把に言うとこんな感じです。






ある冬、あなたは
恋人の「真理」といっしょに、
彼女の叔父さんが経営する素敵なペンションに
スキー旅行に出かけます。

ペンションに着くと、
『今夜12時、誰かが死ぬ』
という不吉なメモが発見されます。


彼らを含む10名ほどの人達は、
激しくなる吹雪のために、ペンションから
出られないまま一夜をすごします。

その閉鎖空間の中で、犯人も分からぬまま、
親しくなってきた矢先の人たちが
次々と殺されていき、
猜疑心から皆の心はバラバラになっていきます。


あげくの果てに主人公は、
恋人である「真理」にすら殺人犯と誤解されて、
スキーのストックで刺し殺されてしまうのです。


END







いかかでしょう?

こうして改めて文章にしてみると、
つくづくイヤな話ですね。


この話が、ゲームを進めていくうちに現れる
「数ある分岐ストーリーのうちの1つ」
であるなら、それほど気にはならないのでしょうが、
ほぼ全てのプレイヤーが最初に辿り着く結末なわけですから
冗談抜きで泣きたくなります。



その「救いの無さ」にイヤ気がさして、
すぐには2回目のプレイをする気分になれなかったのは、
僕ばかりではないと思うのですが…




…他のシナリオも、
ショートギャグ(『釜井たちの夜』)だったり、
マッピングゲームだったりと、



なんか…



どこか…




制作者とユーザーの求める物の
ズレを感じさせる内容が目立ちます。




『弟切草』のシナリオに見られた、
B級ではあるが破天荒な面白さはココには無く、
底々のレベルのシナリオが
あちらこちらで不完全燃焼のごとく
ブスブスとくすぶっている
ような感じがします。 




破天荒でもイイから『ゲーム的な幅』を持たせるか?


体験できる状況のバリエーションを減らしてでも
『シナリオの完成度』を突き詰めるか?



この2つの、どちらにもしぼりこめず、
中途半端な妥協点にとどまったゲーム。


それが『かまいたちの夜』を遊んだ僕の感想です。




…などと書いているうちに、同社から
『かまいたちの夜2』の発表がありました。

前作をクソミソにけなした後で何ですが、
実はけっこう、個人的に楽しみにしているのです。



…今度は、妥協点ではなく、
2つ(『ゲーム』か『シナリオ』か)のうち
いずれかに突っ走ったゲーム
であることを期待します。


真にプレイヤーの心に残るのは、
そういったゲームであると僕は思っています。




戻る