スーパーファミコン用ソフト
『天地創造』
販売…ENIX
購入価格 1500円ぐらい
■『はじめに』
…「何も無い地表に、新たな天地を創造するゲーム」。 それが『天地創造』です。
『シムアース』げなシミュレーションではなく、
クインテットお得意のアクションRPG。
主人公が各地に散らばる「ボスキャラ」を倒すたびに、
世界が一歩ずつ進化をとげていくという「目に訴える達成感」が秀逸で、
アクションゲームとしても中々爽快感があります。
また、それを彩る「音楽・映像」の出来も驚くばかりに秀逸で、
どうしてこれほどの作品が比較的マイナーなポジションに留まったのか
首をひねることしきりですが、まぁ、やっぱ世の中
ゲーム内容よりも宣伝なのかねぇ
とか思うに至り首を吊りたくなりましたけど、
それよりも当ゲームの魅力を余すところ無く世に知らしめることこそ
当ゲームを知る者の使命なりと思い至りますれば、
そろそろ句点がほしかったりもしますが、
主人公「アーク」の壮大な冒険を流れを追って解説いたしたき所存にて、
しばしお付き合いのほど宜しくお願い申し上げまする。
なお、ネタバレあり。 ご容赦のほどを。
■第0章『2つの意思』
…地球には「光」と「闇」の2つの意思が存在する。
「光」の意思によって、生き物たちは進化し、文明が進歩し、世界が栄える。
逆に「闇」の意思によって、氷河期がおとずれ、
戦争がおこり、生き物たちがその姿を消してしまう。
今、地球の上には生き物はおろか、その足元の大地すら無く、
ただ海だけが広々と横たわっていた。
かつて、2つの意思の争いによって、生き物と大地が姿を消してしまった地球。
その地表に今、新たな世界が生まれようとしていた。
■第一章『地裏』
…地球の内側「地裏(ちうら)」にただ1つ存在する村「クリスタルホルム」。
そこは、クリスタルブルーと呼ばれる水色の球体が空にただよう不思議な村です。
この村に住む悪ガキ、主人公「アーク」は、ひょんなことから
封印の小箱を開けてしまい、村人たちを氷付けにしてしまいます。
氷付けになってしまった村人たちを、そして幼なじみの少女「エル」を救うため、
「アーク」は地裏に5つある「試練の搭」を攻略する旅に赴きます。
小箱の中から現れた不思議な生物「ヨミ」を従えて、地裏を駆け巡る「アーク」。
1つ搭を攻略するたびに、じょじょに村人たちが元に戻っていくのですが、
このとき同時に、なぜか「地表に大陸が出現する」のです。
『この日、地表にユーラシア大陸が出現した』とか言って。
なぜ搭を攻略すると大地が出現するかは謎ですが、
なるほど、さっそく序盤から天地を創造してます。
…で、全ての搭を攻略した末に、主人公は村の長老から
『住み良い世界を作るため、地表に行って、
何も無い大地の上に生き物たちを甦らせよ』
とのお言葉を賜ります。
主人公、ヤル気まんまんで地表に旅立ちました。
■第二章『よみがえる世界』
…地表にたどり着いた「アーク」。 誰もいない、何も無い大地。
ふと振り返ると、さっき通ってきた「地裏への通路」は塞がってしまっています。
いきなり死ぬほどハードな状況ですが、
くじけず、生き物たちを甦らせるために世界を駆け巡ります。
まずは、植物たちの助けを求める声に導かれてモンスターを蹴散らし、
草木を復活させます。 世界に広がる植物の種たち。
赤くただれていた大地が、まぶしいほどの緑におおわれます。
続いて、大空を舞う鳥類を。
そして、大地を駆ける獣たちを復活させていく「アーク」。
…ここまでのゲーム展開は、いかにも「クインテット」然とした
アクション性とスピーディな流れが心地良いです。
各々のイベントにも「それぞれの生き物たちの存在する意味」
「生きる、ということの厳しさ」などのメッセージが溢れており、
それを支えるグラフィックと音楽の出来にも大満足です。
…が、「人間」が地表に姿をあらわした辺りから様子がおかしくなってきます。
まず、この時点で、変なデモが挿入されます。
とりあえず敵にやられたらしい主人公、バッタリと地面に倒れ伏します。
再び目を覚ますと、そこはどこかの村のベッドの上。
なぜか「動植物たちと会話できる能力」を失ってしまった主人公は、
これ以降「人類の文化レベル」を向上させるために人間世界を駆け巡るのですが、
これが何ともまどろっこしいです。
…具体的に原因を挙げていきましょう。
まず、これからしばらく「ほとんど戦闘が無い」ため、
アクションが楽しめません。
そして、世界を駆け巡ろうにも移動手段が「船」ぐらいしか無く、
港から遠い町には徒歩で延々歩いていかなければなりません。
また、与えられるヒントが抽象的かつタイミングが中途半端で、
「勘違い」や「後半で起こる(今は起きない)イベントを探して歩き回る」といった
無駄足を延々くりかえすような状況が増えてきます。
(実際、ネット上で調べてみると、このあたりで大半の人が足踏みを経験しています)
文化レベルが上がるたびに「町が成長」するのも面白いといえば面白いのですが、
そのたびに店の構成が変わるので混乱しますし、
メッセージも変わってしまうため、あらためて
住民全員と話しをしなければならなくなります。
特に、当ゲームは重要なイベントに関わる人物でも
「見た目が他の住民と変化がない」ため、
丹念に一人一人話しかけていかないとウッカリ重要な人物との会話を忘れてしまい、
後になってそのイベントを探して全ての町の人々と会話をしなおす
という状況も冗談抜きで発生します。 気が抜けません。
…そして何よりも、この世界や人間たちを蘇らせたのは主人公である「自分」であり、
その意味では自分は『神』、地上の人間どもは自分が作った『下僕』とも言えるはず。
その自分が、文化レベルを向上させるためとは言え、人間たちに命じられた
「お使い」のためにセッセと汗水を垂らしているという矛盾と卑屈さ。
第三章のタイトルが『もう疲れました』になっても
不思議はない一触即発の展開に、パッドを握る手も汗ばみます。
そんな中で主人公は、地裏の故郷「クリスタルホルム」そっくりの村と、
幼なじみそっくりの少女『エル』(名前までいっしょ)に出会います。
これは一体どういうことなのでしょう。
■第三章 『もう疲れました』 『表と裏と』
…文化レベルを上げた末に、人類は大空への翼「飛行機」を発明しました。
これを使えば、今まで行けなかった「ロシア方面」に入ることができます。
ところが行ってビックリ。
ロシアでは怪しい「科学宗教」がはびこりまくっていました。
「体格が良くて、チョビ眼鏡をかけた、への字口」という、
キャラデザは「ITOYOKO」(←知りませんか?)とおぼしき
怪しい科学者「ガルーダ」をグルと崇め、
一大化学工場で生物兵器の実験が繰り返されていたのです。
(この批評を書いたのが「2000年の夏」だったんだけど、それから2年半後の
「2002年10月」に、『2ちゃんねる』でこの批評が無断で取り上げられた際、
『ガルーダ』ではなく『ベルーガ』であることが発覚。 恥かいた。
正直、この批評を書いたときに、彼の名前に自信が無くて…
でも改めてアノ場面までプレイするのは御免だったので、
「たしか『ガルーダ』だったよなー」という、うろ覚えの記憶に頼ったのでした。
結果は惨敗。 やっぱ、確認は大事ね。 以下の文章では訂正してあります。)
工場の最深部で冷凍睡眠から目覚めた「ベルーガ」と対峙する主人公。
「クライマックスか!?」と思いきや、
なんと主人公、ワナにはまって
あっけなく死んでしまいました。(死ぬなよ)
…頭に浮かぶ長老の姿。
『おまえの役目は終わったので、ゆっくり休め』
とか冷たいことをおっしゃいます。
どういうことよグランパ。
リストラってやつ?
…しかし主人公、人間社会で知り合った友人たちの
心の励ましを受けて復活します。(なんで? )
そして、新たなる使命「5つの『星のかけら』集め」に奔走することになります。
…5つ集まった『星のかけら』の力によって男(なぜか主人公と同じ声)が現れ、
恩知らずにも、主人公にビームを撃ってきやがりました。
主人公、ビームを食らって
死んでしまいました。(またかよ)
…そして男は『今の地表の姿は、本来あるべき姿ではない』とか
偉そうに主人公に言うのです。 人を殺しておいてこの言い草。
ビートル号にぶつかってハヤタを殉職させておきながら、
ふんぞりかえって「すまなかったと思っている」とか言っていた
「ウの付く宇宙人」なみの失礼な態度に開いた口がふさがりません。
…その直後、なぜか「赤ん坊になって復活」(なんで? )している
主人公が、なぜか、地表で知り合った「エル」(以後「表エル」と表記)の家に
住まわせてもらっているシーンからゲーム再開です。
「表エル」は、あの人(アーク)の面影があったから、
赤ん坊になった主人公をそうとは知らずに拾って育てる決心をしたそうです。
似ているからって拾いますか? 赤ちゃん。
恋する女はつくづく怖いと思いました。
ところが、「表エル」がちょっと目を離した隙に主人公の元に現れたのは、
地裏にいた幼なじみのエル(以後「裏エル」と表記)だったのです。
長老の命令で主人公を殺そうとする「裏エル」。
自分そっくりの女が赤ん坊を殺そうとしている異常な事態に
わけが分からぬままも止めに入る「表エル」。
今までいっしょに旅をしてきたくせに、「裏エル」に主人公暗殺を急かす「ヨミ」。
長老の命令には逆らえないが主人公のことも愛しい「裏エル」は、
ついに「ヨミ」もろとも自爆という壮絶な幕切れを迎えるのでした。
…このシーン、2人の「エル」が入り乱れるので、
事前に分かって見ていないと、とてつもなく混乱します。
この後、それに拍車をかけるように、
今まで連れ添ってきた「ヨミ」が実は「裏ヨミ」で、これ以降は、
新たに封印を解かれた「表ヨミ」が冒険をサポートするという展開になります。
あの、すいません。 読んでて意味が分かりましたか?
私自身も書いてて頭がおかしくなりそうです。
このゲームのストーリーを書いた本人ですら分かっているのかどうか
不安になるほどです。
■第四章『決戦へ』
…で、主人公。 ついに「表エル」の住む村の秘密にたどり着きました。
この村で代々守られてきた武器が、
主人公に「地球の闇の意思ダークガイア」を
封じさせる力を与える唯一の武器だったというのです。
「長老」(実はダークガイア)は、その武器の復活を恐れて、
主人公に地表の文明を発展させ、人間たちの欲望をあやつって
「武器」を探させようとしたらしいのです。
クリスタルホルムの住人や村の構成が「表エル」の村と酷似していたのも、
「ダークガイア」が自分が封印されたときの記憶を元に
作り出した村だったからなのだそうです。
そして「星のかけら」を集めたときに現れた主人公そっくりの男こそが
「真の勇者」であり、主人公は「ダークガイア」によって作り出された
「勇者のコピー」であり、「ダークガイア」の目的のために
騙されて踊らされていた手駒に過ぎなかったというのです。
地裏で「主人公が小箱を開けた」のも計画どおりで、
「裏ヨミ」に冒険のサポートとスパイを兼ねさせていたという訳だそうです。
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あのー、意味がよく分かりません。
回りくどすぎて書いてて死にそうです。
雨が降ったら桶屋が儲かる感じですか、ダークガイア様ー。
そもそも「ダークガイア」の目的は
『地球上から生命を無くすこと』だったではありませんか。
ならば、ゲームスタートの時点で
目標は達成されているわけで、史上初の
『電源立ち上げたらエンディング突入』
でも何ら問題無かったわけですよね、ダークガイア様。
頭、大丈夫ですか? ダークガイア様。
…とにもかくにも、この機に乗じてなぜか青年に戻った主人公は、
自分を殺した「ベルーガ」に一発ヤキを入れるため、
仲間とともに敵の飛行船に乗り込みます。
で、追い詰めた! …と思ったら、「ベルーガ」は
脱出用ロケットブーツで難なく窮地を脱しました!
…と思ったら、飛行船のプロペラに吸い込まれて
死んでしまいました。
しかも、墜落した飛行船が「閉じられた地裏への入り口」に激突して穴があき、
主人公は地裏に戻れることになりました。
素晴らしい。
前半のスピーディな展開が戻ってきました。
…スピーディすぎますが。
…で、主人公。 地球の光の意思「ライトガイア」の勧めもあって、
元凶である「ダークガイア」(長老)に一発ヤキを入れるため、
故郷「地裏」へと乗り込みます。
「ダークガイア」をバキボコに粉砕、長かった旅に終止符を打ちました。
…目的を果たした主人公に、「ライトガイア」が語りかけてきます。
『よくぞ、ダークガイアを倒しました。 ダークガイア亡き今、
クリスタルホルムはその姿を消そうとしています。』
仕方ないよなぁ、ダークガイアに作られた村だったんだから…
とか思っていると、さらに続けて「ライトガイア」が言いました。
『お前も、もうすぐ消えます。』
仕方ないよなぁ、ダークガイアに作ら… て… えぇっ!!!
お、おいっ、どう言うことよ、それ!!
消えるってアンタそんなこと言わなかったじゃない。
つーか、こういう時は
「地球を救った褒美に、そなたを人間にしてあげましょう」が
定石ではありますまいか。
…唖然とするプレイヤーをほったらかしに、消え行く主人公は「最後の夢」を見ます。
それは「白い鳥になって、以前よりもひとまわり成長した世界を眺める夢」でした。
どこまでも広がる、緑あざやかな「草原と森」。
平原を風のように速く、そして力強く駆けていく「鉄道」。
きらめく星空を地面に敷きつめたような「町々の灯り」。
そして、自分と同じように白い翼を広げて、
どこまでも自由に軽やかに大空を舞う「飛行機」。
…あぁ、これは全て、僕の行為の果てに生まれたもの。
…さようなら、僕の作ったかわいい子供たち。
…さようなら、僕の作った地球。
:
:
:
:
そして最後の最後の場面。 夜中に「表エル」の家に誰かが訪れます。
「こんな夜中に誰かしら」と戸を開けた「表エル」が、
相手を見て言葉を失う、というところでこの物語は幕を閉じます。
まぁ、やっぱり「愛しい主人公が帰ってきた」と考えるのが順当なんでしょうけど。
でも、なんで? 消えたんでしょ、主人公? もう何がなんだか。
…上記の件に付いて、後日、ネット上で『天地創造』の評価を見てまわっていたら、
『あの夜、表エルの家を訪れたのは、
主人公ではなく「真の勇者」のほうで、
主人公は消滅させられた上に恋人を横取りされたのでは?』
という、夢も希望も消し飛ぶような推測がなされていました。
でも、確かにそう考えるとバッチリつじつまが合いますね。
正義はどこへ?
■最終章『総合評価』
…まず全体的に見ると、「音楽」「映像」による演出効果・統一感に、
かなりの高評価を感じる。 ゲーム内での行動を通じて、プレイヤーに様々な体験と、
物事のつながりを伝えようとしている姿勢も面白いと思う。
ダンジョンの構成も比較的狭いマップの中に
多彩な工夫が散りばめられており、謎を解くにしたがって
「新たな意味あいを持つようになる場所が生まれたり」
「マップ内の移動が容易になり、何度も訪れることが
苦にならない構成になる」など、2DのRPGを知り尽くした作りは、
さすが「イース」を生み出したスタッフ、と唸らざるを得ない。
その一方で、「あまりにも壮大な題材を扱ったために、
途中から統一感に欠け、尻つぼみになってしまったシナリオ」
「冷静に分析すると結構つながりがバラバラで脈絡が無いイベント」
「ヒント・伏線の少なさが生む、難解で唐突な謎解き」
「通れる場所・そうでない場所の区別が付きにくく、
気付くまで無駄足をくりかえし時間を浪費するダンジョン」
「重要度が判別しづらいアイテムや人物」など、
『ユーザーに情報を伝えるという配慮』が
欠けている部分が多少目に付き、非常に残念。
…とは言え、一度は遊んでみる価値のある作品です。機会があれば、ぜひ。
また、音楽が気に入られた方は、音楽CDも市販されているので
購入されてみてはいかがでしょう? 僕は買いました。
「船着場」など、お気に入りの曲がいくつか抜けていたのが残念ですが。
…最後に、蛇足ながらネット上での『天地創造』の感想から感じたことを少し。
このゲーム、ほとんど悪評が見られません。
特にシナリオ部分に関しては、絶賛につぐ絶賛と言っても過言ではないほどです。
しかし、上で書かれた批評を読んでもらえば分かるとおり、
落ち着いて見直してみると、けっこう穴のあるシナリオです。
良い音楽と映像を流されると簡単に雰囲気に流されてしまい、
「本質」部分(ストーリーの繋がりとか)を見失ってしまう、
「扱いやすい消費者として飼いならされたプレイヤー」の
実態を垣間見た気がして、ちょっと怖くなったりもしました。
…でも、そんな中にも「雰囲気に流されない冷静な分析」による
批評もチラホラ見られ、「見てる人はちゃんと見ているんだ」という
嬉しさに出会ったりもした、有意義な批評執筆でありました。
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