スーパーファミコン用ソフト

『トルネコの大冒険』
不思議のダンジョン

販売…ENIX (開発…チュンソフト)        購入価格 4000円強

執筆日:2002年 6月28日





■第一章 『1000回遊べる「パズル」』


(ちゃんと遊べる) 新システムの提供』において
業界屈指の実績を誇る「チュンソフト」の作品群の中でも、
随一の看板ゲームと言えば
不思議のダンジョンシリーズでしょう。


今回は、その記念すべき第1作目、
『トルネコの大冒険』のご紹介です。

(当作品は、海外の名作古典ゲーム『ローグ』を原型としている
そうですが、僕は実物を見たことがありません。
なので、それに関連した批評に間違った部分があったら、
知ってる方、ご指摘くださいね。 世露死苦ー。)




先の分からない地下ダンジョンの中を、
自分の『体力』『長期的・瞬間的判断力』のみを駆使して
目的を遂行する楽しみは、擬似的でありながら間違いなく
『冒険そのもの』であります。




…でも正直、発売された当初は、
購入するのに自分の中でかなり抵抗がありました。

冒険を始めるたび
『主人公のレベルが0に戻る』
という前情報を聞いていたからです。




…そもそも、それまでの「コンシューマRPG」の利点は、
『とりあえず戦闘をこなして主人公をレベルアップさせれば、
いつかは強くなって先に進め、誰でもエンディングに辿り着ける』

という所にありました。
(それは、現在(2002年)のRPGでも大差無い事実です。)


それが、1回1回クリアされてしまうという事は、
かなり困難なゲーム展開が予想され、
それで腰が退(ひ)けてしまったわけですね。


僕が(僕だけとは限りませんが) そう勘違いした原因は、
『トルネコの大冒険』が、「1000回遊べる RPG
銘打たれていたせいだと思うのです。




…結局は、『グラディウス』(コナミ)
「RPGシューティング」と呼ぶ (発売当時は、そう呼ばれてました)
のと同じで、主人公が成長・パワーアップするから
『RPG』とメーカーが名付けたようです。

このジャンル分けのせいで、チュンソフトさんは、
ユーザーを1人獲得しそこねたかも知れないわけですね。

くわばらくわばら。 (怖くないですか、そうですか。)






…では、『RPG』で無いなら、何なのか?


僕は『トルネコ〜』を、
『主人公が成長するパズルゲーム』
だと考えています。


ゲーム中に手に入る
「主人公のレベルアップ」「アイテム」が、
『得点』というわけです。



そう考えてみると、ゲームを始めるたび
「得点が0」になる (つまり、レベル0になる) のは、
むしろ当然と言えるでしょう。


1回あたりのプレイ時間が
「せいぜい1〜2時間」という手軽さも、
『パズルっぽく』ありませんか?  ね、ね?




…さてさて、長い前ふりで申し訳ない。
早速、『トルネコ〜』の評価に入りましょう。






■第二章 『広い広い間口』


『ダンジョンの構成が毎回変わる』
という奇抜なシステムを初心者に修得してもらうため、
当ゲームには実に様々な親切設計が盛り込まれています。



…ゲームの『導入部分』を例に取ると、
まず、主人公「トルネコ」がお城に行くと、
メインの「不思議なダンジョン」に入る許可を得るために、
『ちょっと不思議なダンジョン』の攻略を命じられます。

「不思議なダンジョン」より小さく、
アイテムも比較的豊富に落ちているため、
ちょっとコツを掴めばクリアできます。


それでも何度か失敗していると、手助けとして王様
『最初からいくつか武器を持たせてくれる』ようになります。





…こうして「不思議なダンジョン」
冒険に出かけられるようになったトルネコですが、当然、
「ちょっと不思議〜」以上にダンジョンの難度高くなります。


ここで手を貸してくれるのが、妻の『ネネ』



トルネコは冒険に失敗しても「持ち金が半分だけ残る」ので、
それを貯金して、やがて『小さな武器店』を建ててくれます。

これができると、冒険に行くときに
『武器店においてあるアイテムを、最初からいくつか持って』
ダンジョンに入れるようになるため、
だんだん冒険がになってきます。



冒険が楽になると、より深くダンジョンに潜れるようになり、
より利用価値の高い珍しいアイテムも手に入りやすくなり、
しかも、それを次回の冒険で活用するという選択肢も出てくるため、
冒険の楽しみの幅どんどんアップします。






…これらの親切設計に見て分かるとおり、
『トルネコの大冒険』のスゴさ…
ひいては「チュンソフト」本当のスゴさは、
『新しい遊び』を提供するだけにとどまらず、
その遊びにユーザーが慣れるための
様々な気配りをゲーム中に施してある点
にこそあると思うのです。



他メーカーの皆さんも、
こういう点こそドン欲に真似すべきではないでしょうか?




つーか、しろ。






■第三章 『十人十色』


…忘れてはならない『トルネコ〜』の素晴らしさの1つに、
『定石が無い』点が挙げられます。


僕が「いいゲーム」という評価を下す基準の1つ
『プレイヤーごとに異なる戦略』を
推奨するシステムになっているかどうか?

というのがあるのですが、
『トルネコ』のゲーム内容はそれとバッチリ合致します。





「ゲーム」と銘打ちながら、
『ココは、こういう風にしなければいけない』だの、
決まりきった攻略法「なぞらされ」たり「押し付けられる」だけの
メーカー側は作りやすいが、遊ぶ側にとってはたまらない…

そんな駄作があふれる世の中ですが…



『テトリス』をはじめとするアクションパズルゲーム、
『ストV』などの対戦ゲーム、
『フリーセル』等のテーブルゲームなどの中には、
各プレイヤー独自の自由で多彩な攻略を受け入れるだけの
幅広い懐(ふところ)を持った名作が、
数は少ないながらもまだまだ存在しています。



『トルネコの冒険』は、そんな名作の1つとして
胸を張ってオススメできる逸品なのです。






■第四章 『ただ…』


改良の余地が無いわけではありません。


最も気になるのが、『空腹度』というパラメータ。

これは本当に必要なのでしょうか?




続編『風来のシレン』でも登場するこのパラメータは、
「モンスターとの効率のイイ戦闘」「最短ルートの適確な判断」
といったテクニックではどうしようも無い、
『落ちているアイテムの種類』という
「運」によって大きく左右されるものです。


直接、主人公の生死にかかわってくるパラメータなのに、
これを運まかせにするのはどうか?
と思うのです。




…僕自身、冒険中に『ハラヘラズの指輪』を入手して、
それ以降の冒険でコレを必ず装備するようになってから、
飛躍的に「このゲームは面白い!」と感じるようになりましたが、
それまでの冒険は楽しさよりも苦痛の度合いのほうが強かったです。


今、考えると、
自分のテクニックではどうにもならない
「運」に生死を握られている空しさ
原因だったのだろう、と思い当たります。






…他にも小さな不満がいくつかありますが、
ゲーム全体の楽しさから見れば些細なことなので割愛します。


僕も、さすがに1000回は遊んでいませんが、
2、300回は遊んでいるはずです。

最近はプレイしていませんが、その理由というのが
『カセット内のセーブ用電池が切れたから』というものなので、
切れてなければ、さらに数100回はプレイしていた事でしょう。


恐ろしいソフトですね。





お薦めソフトですが、
「スーパーファミコン版」やめた方がイイでしょう。

発売からかなり時間が経っているので、
僕同様、「電池切れ」に泣くことになるでしょうから。


『トルネコ』より難度は高いですが、
『シレン』シリーズをお試しになってみてはいかが?

とにかく、一度はさわる価値のあるソフトです。




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