スーパーファミコン用ソフト

『ぱにっくボンバーW(ワールド)』

販売…ハドソン    購入価格 200円



★序章『北の地より』★

…今日は皆様に、北の雄「ハドソン」の看板タイトル『ボンバーマン』を題材とした
落ちゲー、『ぱにっくボンバーW』をご紹介したいと思います。

 実は前々から資料を読んで、気になっていたタイトルでした。

 資料からの印象では… 「@ 落ちゲー」で、
「A 3個のブロックがL字型になって落ちてきて」、上に積み上がらないように
「B 爆弾を使ってブロックを壊す」 ゲームだと思っていました。

 @とAに関しては予想通りだったのですが…

『ぱにっくボンバーW』への飾らぬ思い。 ぜひ最後までお読み下さい。



★第一章『水と油』★

…それでは、とにかくゲームを始めてみましょう。

 ブロックの並びがL字型であること以外は、まんま『コラムス』です。
 L字型の並びのせいで『コラムス』より組みにくい印象がありますが、
それでも4連鎖ぐらいなら何とかなりそうです。

 4連鎖の用意ができました。
 あとは起爆点となる赤のブロックを待つばかり、と関係の無い別の色のブロックを
他の場所で破壊した途端、悲劇は起きました。

 画面最下段からニョキっと生えた数個の爆弾。
 それが上に乗っているブロックを持ち上げてしまったのです。
 当然、上のブロックの並びはズレ、 連鎖が無効になってしまいました。

 実は、このゲームにおける爆弾は、敵の送ってくるお邪魔ブロックを消し飛ばす
ためのもので、普通のブロックの消去には一切影響を及ぼさない存在なのです。
 私の想像したゲーム内容とは、Bの点で食い違ったわけですね。

 それが、こんなにもゲームを遊びづらくさせるとは…

 消す対象としては最小の「1色3個」のブロックを消去しただけでも、
必ず「最低1個」の爆弾が生えてきます。 つまり、このゲームは、
「連鎖の準備が出来たら、どんなに苦しくても起爆色が来るまで耐え」
その間、「他の色を消さないように励み」  …その上で、
「連鎖が崩れるのを覚悟で出来るだけ爆弾を出して反撃にそなえる」 と言う、
お互いがお互いの足を引っ張り合う見事なまでのバランス
によって構築されたゲームシステムを持っているのです。

 例えて言うなればアレです。  「何とかと何とか」。

 こうして、ボンバーマン(と俺)の苦しい戦いの火蓋は切って落とされたのです。



★第二章『輝く太陽とレゲエ』★

…マニュアルでは、ストーリーを漫画で解説しており、
子供向けソフトとしての配慮はさすがハドソンと言ったところです。

 主人公ボンバーマンの元に、仲間である「世界各国のボンバーマン」が暴れている
と言う信じ難いニュースが飛び込んだところから物語りは始まります。

 駆けつけたボンバーマンの前に立ちはだかる、かつての友人『ラスタボンバー』の姿に、
これから起こるであろう悲しい物語の幕開けを感じます。

 しかし、いきなり爆弾で彼を吹き飛ばすボンバーマン。
 参った参ったといった感じで起き上がるラスタボンバー。

 この漫画から分かることは、彼らにとって爆弾は 拳(こぶし) のような物であると。
 格闘家は拳(爆弾)と拳(爆弾)で語るものなのだと。
 そう言うことですね師匠。

 起き上がったラスタボンバー、 『ふぅ〜、正気に戻ったー』
などと分かりやすいセリフをのたまいます。

 このセリフ1つで、『世界各国のボンバーマンは操られている』
『操っているヤツが黒幕』
と言う物語の全貌がいきなり見渡せてしまいました。
 名セリフです。 今度、私も万引きで捕まった際に使用してみましょう。
 『ふぅ〜、正気に戻ったー』


… 倒したラスタボンバーからは
『誰に操られていたか分からないが、
きっとメタルボンバーの仕業に決まっているゼ』

…との情報が得られました。
 メタルボンバーを追って、舞台はイギリスへ。

 しかし、ここで良くマニュアルを読んでみると
「メタルボンバーとラスタボンバーは仲が悪い」
などと書かれています。

 複雑な人間関係の中では情報はゆがんで伝わると言う
社会の縮図 を垣間見た気持ちです。

 全国のお母様方。

 教育ソフトとしての付加価値も高い当作品を、是非お求めになっていただきたい。



★第二章『クールでニヒルなナイスガイ』★

…メタルボンバーとの死闘(←割愛)を経て、アメリカ大陸へと渡るボンバーマン。

 そこでは、テキサスにその名を馳せた『ボンガンマン』が待ち受けていました。
「早撃ち0.2秒」と言う 次元大介 ばりの特技を持つも、
銃を使わず爆弾で勝負してくるあたり紳士と言えます。

 しかし顔立ちに テリーマン の面影があり、
いかに努力してもNo.2止まりな哀愁に満ちています。

 しかも倒した後のセリフで『ミーは今まで何を ?』
「おそ松くん」のイヤミ のようなセリフを吐きます。

『次元大介+テリーマン+イヤミ』

伝説の誕生です。



★第三章『熱い闘志を心に秘め』★

…数々の死闘(←割愛)の末、「世界各国のボンバーマン」を打ち倒した
主人公ボンバーマンの前に、
『何か怪しい宇宙人ボス(名前わすれた)』が登場します。

 もはや平和は目前。

 無限コンティニューに支えられた苦しい戦いの果てに、
ついにボスをひざまずかせる事が出来ました。

 ところがこいつは『俺が悪いんじゃない』などと 泣き言 をほざくのです。
 そして『本当の黒幕は…』と言いかけた瞬間、
何者かに口封じされたところでゲームエンドになってしまいました。

 私は「イージーモード」でプレイしていたので、
『続きはノーマルモードでね』 と言うことらしいですが、
多分、正体はマニュアルの表紙に出てる

『洋ナシ型の頭にアンテナの生えた、変なボンバーマン』

だと思うので、 もうどうでもいいです。

 私の死闘は終わりを告げました。



★『許せ太郎』★

…ところで賢明なる皆様は、「購入価格」から当作品が中古購入されたことを
容易に想像できたことと存じますが、実は添付されていたマニュアルに
以前の持ち主の手による書込みがなされていました。

 ピンクの蛍光ペンで書き込まれた4ケタの数字。

 実はコレ、ストーリーモードでの「パスワード」だったのです。
 調査した結果『ノーマルランクの「ボンガンマン」を倒した直後のもの』と判明しました。

 志(こころざし)半ばで倒れた先人の無念を感じます。

 その拙い文字から、恐らく小学生であろう彼の名を、
あえて 『太郎くん(仮名)』 と呼ばせていただきます。

少ないお小遣いをはたいて買った、大好きな「ボンバーマン」のゲーム。
その理不尽な出来に、幼い太郎くんの心はどれほどに傷付いたことでしょう。
攻略らしい攻略法が存在しない当ゲームを相手に果敢に挑み続けた太郎くんのひたむきな姿は、
「同じ数字が2箇所に書かれていた」 ことからも痛いほど伝わってくるのです。

 私は誓いました。

『太郎くんの無念は俺がはらす』と。

 …あれから一週間。
 私はいまだに太郎くんとの約束を果たせてはいません。

 この原稿を書き終えたら、件のゲームは押し入れ行きになり、
そして恐らく再び日の目を見ることは無いでしょう。

 この空の下のどこかにいるであろう太郎くんに、この場で私は詫びたいと思います。

キミの無念を晴らせなかった未熟な私の技術を。
 



★『システム考察』★

…このゲームからは、『緻密な下準備を必要とした上で連鎖が成り立つ』と言う
「コラムス」タイプのゲームシステムに、『豪快な爆発で、広い範囲に攻撃可能』といった
「ボンバーマン」としての快感を加えようとした企画意図
(あるいは「上」からのゴリ押し)
が感じられますが、
恐らく制作サイドも気付いてのとおり、その思惑は失敗に終わっています。


『@ 大量のバクダンを爆発させ一気に障害物を破壊するゲームにしたい』

『A しかし大量の障害物を上から降らせると、ブロックが全然並べられない』

『B ならば、下から障害物を生やせば良い』

『C すると、連鎖を組んであったブロックがズレてゲームにならない』

『D やはり、少量の障害物を上から降らせるようにしてみては…』

『E それじゃバクダンの存在価値が弱まりボンバーマンらしくない』

『F では「ボンバーマンらしいゲーム」とは一体 ?』

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 …そんな無限ループに苦しんだのでしょうか企画者は ?
 身につまされる話です。

 私にとっては「自社のものとは言えキャラクターゲームを作ることの難しさ」
を知ることの出来る貴重な資料として価値が、このゲームにはあります。

 前半でボロクソにけなした事に対するバランスを取るわけでは無いですが、
当ゲームの『視覚演出』や『サウンド』は、かなり高水準です。
 『プログラム』においても同様で、小さなエフェクトも
手を抜かずに作りこんである姿勢を感じました。

 にも関わらずつまらなかった当作品。
「ゲームシステムの重要性」という当たり前の言葉が思い出される。

そんなゲームでした。



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