スーパーファミコン用ソフト

『魔法陣グルグル』


販売 ENIX (開発:TAMTAM)   プレイ時間 「クリア2回」

購入価格 380円         執筆日:2003年 3月10日





■第一章 『原作付き』


『魔法陣グルグル』(ENIX)は、
同名のマンガを題材としたRPGです。


物理攻撃担当の少年『ニケ』と、
魔法陣を使用した魔法攻撃担当の少女『ククリ』の2人をあやつって、
13のダンジョンを攻略し、
時をつかさどる鳥「オクロック」の『タマゴ』を
モンスター達から取り返しましょう。






■第二章 『システムなど』


…当ゲームは、ちょっと変わった戦闘システムを持っています。



まず、プレイヤーが動かせるのは魔法陣を使う『ククリ』だけ。

相棒の『ニケ』は、オートで「一番手近の敵1体」と戦うのみで、
細かな戦闘指示を出すことはできません。



そのため、いかにうまく『ニケ』をサポートするか?
を考慮しながら魔法をかける工夫が要求されます。
おそらく制作者も、そういった部分を
このゲーム独自のウリにしたかったんだと思います。

(第三章への伏線)





グラフィック面では絵柄に統一感があり、
かなり大きいサイズの人物キャラを使用しているので、
けっこう原作マンガの雰囲気が出ておりイイ感じです。



音楽は、昨今のゲームBGMに慣れた人には
チープな印象を与えるかもしれませんが、
PSGぽい音色と、曲として比較的うまくまとめているあたりに、
個人的に好印象を持ちました。
(たまたま見つけた「サントラCD」まで買っちゃったりも…)



武器店のラインナップにも工夫がされており、
最初のうちは「安いが弱い」ものしか並べられてないのが、
完全攻略したダンジョンの数が増えるにつれ、
じょじょに「高くて強い」武具が並ぶようになります。

ダンジョン攻略を終えて、貯まったお金を持って、
店に新しいラインナップがあるかどうかを見に行くのは
結構楽しいです。






■第三章 『テストバージョン』


…さてさて、では総合的に見ると、
このゲームの出来はどうなのか?


最初にハッキリ言ってしまうと、まるで
『これから練り込み段階に入るテストバージョン』
を、テストプレイヤーになって遊んでいるような気分になるゲームです。



…個々のアイデアは、
もしかしたらバケる可能性もあったかもしれませんが、
それぞれの「つながり」を見てみると、
『開発時間が足らなくて、とりあえず入れるだけ入れた』
としか思えないほど、システムどうしの関連が中途半端なのです。

具体例を挙げてみると…




『魔法陣システム』


『ククリ』の役割を、
「魔法陣による戦闘サポート」にしぼったのは
面白いアイデアだと思う。

が、実際の戦闘では
『風系 (中盤は炎系、後半は雷系) の攻撃魔法を、
敵の数によって調整して撃っているだけ』
で、
アッと言うまに戦闘が終了してしまう。

単調極まりない。



…ダンジョン内の床に描ける『トラップ魔法陣』も、
短時間で消えてしまうので使いどころが難しく、
マニュアルに書かれているような
『戦闘が減って楽になる』感じは乏しい。



…また、魔法陣が重要なゲームシステムの割には、
マニュアル内で「魔法陣効果」についての説明が
ほとんど無いのは疑問。

『プレイヤー自身の手で効果を調べて楽しんでほしい
という開発側の意向』
という好意的な解釈もできるが、
ゲーム全体の出来を見る限り、
「マニュアル作成時に、
まだ仕様が固まっていなかったのでは?」

という疑いのほうが強くなる。





『自動マッピング』


…通った部分がオートでマッピングされる機能は、
ありがちではあるがほのかな達成感があり、
ダンジョンを歩き回るささやかな楽しみになっている。

なのに、階段を上り下りしただけで
今まで書かれたマップがクリアされてしまう
のは、ちょっとヒドいのでは?


これが、『トルネコのダンジョン』シリーズのように、
入るたびに内部構成が変わるダンジョンなどなら納得もいくが、
何も変化しないのだ。


無意味な手間をかけさせられている気がする。





『武器の効果』


…ニケが装備する武器には
「グローブ」 「剣」 「ハンマー」 などの系列があるが、
これらの違いが今イチ明確で無い。


自分で遊んだ感覚では、
『攻撃力が小さい系列 (グローブなど) は、
攻撃時の隙も小さく、敵に連続ダメージしやすい。
攻撃力が大きい系列 (ハンマーなど) は、その逆。』

といった感じだが、定かではない。


マニュアル内に説明も無いし。





『バランスの悪さ』


…弱い敵から得られる経験値が多かったり、
強い敵なのに少なかったり。

ダンジョン自体の難度に関わらず、
宝箱の中のゴールドの量に大きな差があったり。
(当ゲームでは、戦闘ではゴールドは得られない。 全て、宝箱から入手する。)


得られる物のバランスの悪さが、
難しいダンジョンに挑む気力をなえさせる。


簡単なダンジョンでちょっと多めに戦えば、
高難度のダンジョンと同等の経験値がもらえるから
だ。





『緊張感の欠落』


いつでも、アイテムで体力回復できる。

戦闘中はおろか、
敵からの攻撃を食らっている最中ですら回復OK。

その回復アイテムも、ちょっと敵と戦闘するだけで
ザクザク入手できるので、買い足す必要無し。

よっぽどウッカリしていない限り、
死ぬことは皆無と言い切れるほどで、
安全すぎて、スリルの欠片も無い。



『システムやバランスの悪さによる「ハマり」を
回避するために用意した逃げ道なのでは?』

という悲しい推測が頭をよぎる。

そして、多分そのとおりなのだろう。
(子供向けソフトという事もあるし)









■第四章 『自戒を込めて』


第三章で散々批判した当ゲームですが、
この後のコンシューマRPGの変遷を見ていくと、
実に惜しい、可能性に満ちたアイデアが散りばめられた
作品だったとも言えます。




物理攻撃をCPU (ニケ) に担当させることで、
プレイヤー自身は「魔法陣」による
サポート・攻撃に専念できる『管理型戦闘システム』。



戦闘では入手できないゴールド・アイテム等を、
ダンジョン内に隠された宝箱を見つけ出すことで
一気に大量取得する、『探索の喜び』。



…武器によって異なる、攻撃力と予備動作を考慮したサポート。

例えば、ガードの固い敵に対するとき、
プレイヤーの攻撃魔法でガードを崩し、
その隙に予備動作の大きい「ハンマー系武器」で一撃必殺を狙うか?

あるいは、
ダメージ総量は低いが高確率でヒットする「グローブ系武器」に
全体攻撃魔法のダメージを上乗せして
まんべんなく息の根を止めるか?


そんな、『CPUとプレイヤーの連携プレー』の楽しみ。



地面に配置した「魔法陣」の効果によって、
あるいは敵をワナにはめ、
あるいは敵を誘導・操作することで突破できる
『パズル性の高いダンジョンの設置』。






…こうして文章にしてみると、これらのうちのいくつかに
『後出のゲームでスタンダードになっていった要素』
が見られる事にお気づきと思います。



…が、もちろん、これをして
当ゲームの肩を持つつもりはありません。

いくら、『イイ要素を含んでいる』と惜しんでも、
このゲームを買った人間にとっては、
今の状態が現実なのですから。



…事実、「魔法陣グルグル」には『2』も存在しますが、
『1』(当ゲーム) ヒドさを目の当たりにしている僕は、
中古ショップで見かけても全然購入する気になれません。

制作者を信用できないからです。




『どんないいアイデアでも、
ちゃんとした形にできなければ全て無意味』


そんな、厳しいけれど当たり前の自戒を、
このゲームを通して、改めてヒシヒシと感じた僕でした。




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