スーパーファミコン用ソフト


『マリオのスーパーピクロス』


販売:任天堂               プレイ時間 :「クリア2回」

購入価格:4000円?        執筆日:2003年 10月3日





■第一章 『ピクピク』


『マリオのスーパーピクロス』(任天堂)は、
「ピクチャークロスワード」と呼ばれる系統のパズルゲームです。


長方形のフィールドにマス目が敷き詰められており、
上と左に表示された「数字」をヒントにそれらを塗りつぶして、
そこに隠された「絵」や「文字」を浮き上がらせる論理パズル
です。



…「ピクロス」とは『ピクチャークロスワード』の略であり、決して
『マリオがロスアンジェルス市内で
寝転んでピクピク痙攣するゲーム』

では無い事をご了承下さい。(by 吉田戦車)






■第二章 『最初の1歩のために』


…この『マリオのピクロス』は、
僕が始めて触れた「テレビ画面によるピクチャークロスワード」
であり、同時に、
コンシューマ機初の「テレビ画面によるピクチャークロスワード」
だったと記憶します。


…その事もあってか、
チュートリアルの丁寧さは、
かなりのものです。

単に「任天堂作品だから丁寧」という範疇にとどまらず、
テレビゲームのユーザーに馴染みの薄い
『ピクチャークロスワード』という題材の面白さを、
いかに端的にプレイヤーに伝えるか

を目標とした工夫が随所に見られるのです。


『難度の低い問題を、多数用意している』
『最初のほうの問題は、ゲームタイトルの文字を
そのまま使って、完成予想を立てやすくしている』

などなど。



新しい面白いシステムをゲーム化するとき、
特にそれが従来からあったものだと、
製作者の『やり込めば面白さが分かる!』という自信から、
チュートリアルをおざなりにしてしまう
ことが往々にしてあります。

が、いくら製作者が面白さを知っていても、
プレイヤーにとっては『新システム』
である事に変わりはありません。

面白さが分かる前に『投げてしまう』可能性も、
当然あるわけです。




…その難題に真っ向から挑んで、
見事克服した、当作品の開発者の偉業。

世に「新システム」を問う企画者の皆さんには、
この作品から『大切な事』を学んでいただきたいものです。






■第三章『色々』


…では、当作品の細部を見ていきましょう。



『彫る、という行為』

…元々「ピクチャークロスワード」は、
『塗りつぶす』という行為によって成り立つゲームです。

ところが、「マリオのピクロス」は、これを
『壁面を掘っていく行為』に置き換えています。


「隠されていた物が徐々に姿をあらわす」過程を、
『彫刻』『化石の発掘』に置き換えることで
生まれた装飾なのでしょう。
実に巧みなアレンジです。

マス目を彫るたびに、
カチンカチンと効果音を鳴らすことで
プレイの心地良さを増している、
という付加要素も見逃せません。


…以降、僕も様々な「ナンクロ」で遊びましたが、
この心地良さを超えるゲームには、
いまだに出会えていません。




『完成から、正体へ』

…昨今の同系列ゲームでは、マス目が規定どおりに埋まると、
直後に、今まで白黒だったマス目に色が付いて、
その正体が明らかになります。



ところが、『マリオのピクロス』は、
完成直後に周りの装飾が取れてマス目部分だけの表示になり、
そのままプレイヤーのボタン入力を待つ形になります。

そして、ボタンが押されて初めてタイルに着色がされ
隠されていた物の正体が判明するようになっています。


…これはつまり、
出来上がりをプレイヤーに眺めてもらって、
『色が付く前に、これが何か推理してみよう!』
というステップを挟んでいるわけです。

単に「答え」に辿り着くだけではなく、
『出来上がったコレは何なんだろう?』という想像の楽しみ、
予想どおりの答えだったときの嬉しさ。


そういったものも付加した
(いや、「付加」というより、「本来」ナンクロの楽しみは、
こうあるべきなのかもしれませんね)

至れり尽せりのシステムが、以降の同系列ゲーム
引き継がれなかったのは残念です。




『2つのモード』

…『マリオのピクロス』には、2つのモード
「マリオのピクロス」「ワリオのピクロス」が存在します。

両者を比較すると…

モード 良  い 悪  い
マリオ 間違った個所を掘ると、
コンピュータが教えてくれる。

残りタイムを一定量消費することで、
部分的に答えがわかる
『ヒントルーレット』がある。
『制限時間』があり、
間違ったときにペナルティとして
残りタイムを減らされる。
ワリオ 間違っても、
ペナルティを取られない。

自分の推理するままに、
自在に彫ることができる。
間違っていても、
コンピュータは教えてくれない

間違ったまま進むと、
延々と悩むことになる。



…つまり、
『マリオモード』は「ナンクロ」に慣れていない人が
何度も挑戦して答えに辿り着くシステム、

『ワリオモード』は慣れた人が
独力で答えに至ることを目的としたシステム

なわけです。


以降の同系列ゲームを見ても、
両方を兼ねそろえている作品は
恐らく『マリオのピクロス』だけでしょう。

この作り込みには、頭が下がります。






■第四章 『逸品』


…以上に見てきたとおり、
当作品はたいへんに練り込まれた名作です。

まだ、「ナンクロ」というゲームに触れた事の無い方には、
何をおいてもお薦めしたい逸品です。


…うっかり他のメーカーの「ナンクロ」を遊んで、
面白さが見えてくる前に投げてしまうような
勿体無いことにならないよう、強くお薦めします、
『マリオのスーパーピクロス』




戻る