セガサターン用ソフト

『古伝降霊術 百物語』

販売…ハドソン     購入価格 980円



■第一章『概要』

…この作品は、心霊番組などで有名(らしい)な『稲川淳二』氏の語りと、
CGと音声が楽しめるデジタル怪談本です。

物語の構成は基本的には「CG付きのデジタル小説」ですが、
場面によっては「ムービー」が入ったり、まるまる全部が
「稲川氏の生音声による語りとCG(ムービー)」だったりして、
バリエーションに富んでいます。

選択肢などは一切無く、純粋に怖い話を堪能できるように
なっている作りには、とても好感が持てます。


一話語られるごとに画面内にズラリと並んだ ムチと ロウソク
一本ずつ消されていき、広間の中が徐々に薄暗くなっていく演出も、
いい雰囲気を出しています。

ちなみに、どの順番でロウソクを選んでも、
語られる話自体の順番が変わらないのは、ちょっと残念です。



■第二章『ここが怖い』

…さて、当作品の怖さと言えば何といっても『グラフィック』です。

しかも、他の作品のグラフィックが、メインの怪談を盛り上げる
「挿絵」にとどまっているのに対して、当ゲームのそれは
「生理的嫌悪感の限界ギリギリ」であり、
幼い子供がうかつに見ようものなら、
「良くてトラウマ、悪くてショック死」
のレベルなのであります。

「大雑把なポリゴン」「取って付けたようなテクスチュア」「画質ザラザラ」
という3大要素を兼ねそろえた、これらのムービーやイラストは、
ゴミ捨て場に捨てられて雨ざらしになりながら無表情にこちらを見つめる人形
のような無機質な恐怖と不快感を感じさせ、色んな意味でイヤです。


中でも、実写取り込みの画像に中途半端に陰影を施した
『看護婦の顔面アップ』は泣くほど強烈です。

単に「影」に手を加えただけでこれだけの恐怖をユーザーに与えるあたり、
元々モデルの方の顔が グラフィッカーの技術力の勝利と言えますね。



■第三章『ここがヘボい』

「稲川淳二の語り」がヘボいです。

て、いきなり当ゲーム最大の売りの部分がヘボいんですか?

ヘボいというより怖いと思えないんです、稲川淳二。


大まかな理由は「2つ」あります。

…1つは、語られている内容自体にあまり恐怖を感じないこと。

目に見えない存在(霊)がいるらしいけど
直接自分には危害が及びそうにない話だったり、
霊能力のある人間だけに見えているといった
「霊能力信望者に媚びたような話」が中心で、
質の高い怪談の持つ『迫り来る恐怖』に乏しかったことが、まず1つ。


…そして、もう1つは、氏の語りに「重みと情感」が感じられないこと。

実は同時期に、ヴィジット社の『大幽霊屋敷(だいおばけやしき)』
遊んだのですが、その中でメインの語りを受け持っている
「浜村 淳」氏の丁寧な語り口と比較すると、
どうしても「稲川氏」のそれに物足りなさを感じてしまいます。

ジックリとした語り口を持たない稲川氏の口調では
前述の「重みと情感」が足りないため、
聞いていて物語の主人公たちに感情移入できず
何か、自分たちとは全く関係無い場所でおこった話のように感じるのです。

テレビで見る「他国の紛争」のようで、差し迫った緊迫感が皆無です。


幽霊に会ってしまい腰を抜かし半泣きになりながら地面を這いずって
逃げ惑う主人公の恐怖と狼狽
を感じさせる「浜村氏」の語りの後では、
「稲川氏」のどこか気取った語り口は「幼稚」に感じてしまうのです。


…さて、それ以外にヘボい点というと、『怪談部分』がヘボいです。
て、今度は「売り」どころかメインダメですか?

実は当ゲームの話はけっこう質が低く、
「霊能力というものが本当にあるという観点で語られている話」
「世の中の怪談話の定番アイテム(金縛り・女の泣き声)などを
適当に羅列しただけの話」
といったような、
『怪談として評価するのもはばかられるゴミ話』
が大半を占めてしまっているのです。


話の数自体は100話もそろっているのに、
他人にも薦められる質の高い話は、せいぜい10話前後。

そこそこのレベルの話が40話ほど。

残りの大半は、製作者の精神状態に疑いを持つほどの安っぽさで、
何が怖いって、このレベルの話を真顔で製品化できるプロデューサの神経
当ゲーム最大の恐怖ですね。


…あと、取って付けたような「3D移動モード」は、
当ゲーム全体に漂う「安っぽさ」とどめを刺している感があり、痛々しいです。



■第四章『なぜかアッチ方面大充実』

…ちょっと蛇足ながら、当ゲームの実写部分に出演している
女の子が結構かわいかったこと(一部例外あり)と、
高校生ぐらいの女の子がやたらとパジャマやキャミソールで登場して、
とてもエロくて素晴らしかったことをご報告申し上げます。

さらに隠しストーリー(101話)では、
キャミソール姿の女の子が両手を縛られて吊るされるという、
その筋の方(筆者含む)号泣のムービーがあったりもします。

製作者は何を考えているのでしょう? もしかして同好の方ですか?
でも趣味と仕事をゴッチャにしてはいけませんね。

よって、ハドソン社内にあるムービー画像のマスターデータは
当方が没収するものとします。
後日、郵送したまえよ。 ←誰に言っているのか?



上記の101話は、『私を殺した女』という話です。

実はこれを書いている2005年12月の時点で、久々にこのゲームについて
調べてみたのですが… 色々なHPや、過去の『大技林』、いずれも
101話は『生き人形』という話だ、と書かれているのです。

僕の見た101話は、一体何だったんだろう??

…と、悶々としていたところ、某掲示板で
『最初の年齢設定によって、2通りの101話がある』
という目のさめるような記述に遭遇。
なるほど! たしかにアノ101話の映像は、お子ちゃまには少々毒かも。

難問、氷解。 ココチイイ〜。





■第五章『細かい部分も大充実』

…それ以外にも、当ゲームは色々なところで
変に凝っていたりして楽しませてくれます。


…まず、オマケとして説明書内に『お札』が入っています。
これをソフトのケースに貼り付けて遊ばないと、霊に取り付かれるのだそうです。

すいません。 中古で買ったので、すでに切り取られておりました。
私に不幸が訪れたら、それは霊のしわざです。
もう、3回もクリアしてるけど。


…他にも、ゲーム中のグラフィックのちょっとした所に
「心霊写真」のような効果を施しているものが見られます。

歩道橋を昇る稲川氏の足元に「手」が見えているとか…
(ちなみに、残念ながらこの点においても、前述の『大幽霊屋敷』
のほうが質・量ともに上回っていると言わざるをえません。) 


…そして一番の目玉は、説明書内で
『ゲーム中におかしな動作をすることがありますが、それは霊現象です』
と断言されている点であります。

たしかにゲーム中には、明らかに意図的にやっていると思われる
無関係な音声(悲鳴など)が突発的に聞こえるなどの不具合がありますが、
問題は、私が以前勤めていたゲームメーカー「日本テ●レネット」でも
同様の現象が製品版で確認されていたという点です。

当時、テストプレイヤーも兼ねていた私が、テスト版で発見された不具合を、
確実な発生条件とともに開発チームに報告しても製品版で直らなかったのは、
開発陣の怠慢ではなく霊現象だったからなのですね。

申し訳ない。 てっきりバグだとばかり…


…ならば、彼らが
『ユーザーなんかバカだから気付きゃしねーよ』とか
『裏技です、とか言って誤魔化しとけよ』とか
悪態をつきたくなる気持ちも分かります。

だって霊現象なんですもん。 不可抗力よなー。


そうと分かっていれば、ユーザーサポートの仕事のときも
ユーザーの方に頭下げなくて良かったんだなぁ。


ユーザー 『○○で○○すると、アイテムが異常になるんですけど…』

私 『あぁ、それですか。 直りません。 霊現象ですから



「テ●レネット」って実は霊スポットだったのですね。

いやーん。 くわばらくわばら。



…ちょっと話がズレてしまいましたが、最後に当ゲームについて一言。

シナリオの質の低さは否めませんが、それ以外の要素でけっこう楽しめます。
話の見せ方のバリエーションを求める人には、まあまあお薦めできるレベルです。

怪談好きで財布に余裕のある方はお試しをー。



戻る