セガサターン用ソフト

『テトリスS』

販売…BPS     購入価格 2280円



■第一章『出会い』

…「ゲーム性」というものを突き詰めて考えるときに、
『テトリス』という作品の持つ、美しいまでの
完成度には魅了されずにはいられません。

かくいう筆者も、1989年にPC版の『テトリス』との出会いを通して、
「ただのゲームマニア」から「プロを目指すゲーム性探求者」への
華麗な(そうか?)転向を果たしており、
人生が「卓越した師との出会い」によって導かれる物であるとすれば、
かの作品は 『わが人生の師』であると断言できましょう。

『テトリス』と呼び捨てになんか恐れ多くて出来ないほどですよ 『テトリス様』

「師」とお呼びしてもイイですか『テトリス様』

「先生」なんて言ってみてもイイですか『テトリス様』

「亀仙人のじっちゃん」 とか呼んでみてOKですか『テトリス様あぁ』



…そんな『テトリス様』がセガサターンで遊べるというので、
嬉々として買ってきましたよ『テトリスS』

「対戦」も出来るというので、けっこう期待してました。

で、遊んでみてビックリ

以前、アーケードで『テトリス グランドマスター』(アリカ)を
遊んだときは、その秀逸なアレンジに驚いたものですが、
当ゲームの出来には別の意味で驚愕に値します。

以下の説明で、私の驚きが少しでも伝われば幸いです。



■第ニ章『驚愕のOPムービー』

…まず『テトリスS』には「OPムービー」が付いています。

さすがはセガサターン。
PCで初めて遊んだ頃からは隔世の感があります。

で、その内容なのですが…


@ ポリゴンになって立体感と丸みが増した『テトリス猿』 (セガ版テトリスで有名)が、
「尻を掻いたり」「バンザイしたり」「ひっくりかえったり」
した後に、画面いっぱいに『テトリスS』のタイトル画面が出る。


A タイトル画面、なぜかグニョ〜と丸まって球体になり、
ゆっくりと落下。 なぜか一軒家の煙突の中に吸い込まれていく


B 煙突の出口は暖炉で、なぜかそこから延々と伸びるベルトコンベアー。
球体がコンベアの上を流れていくと、なぜか「2本の金づち」
空中に現れ、カンコンカンコンと球体を叩きはじめる。


C なぜかコンベアの前方に青い半透明のガラス板が登場。
そこを通過した球体、なぜかテトリスの水色のТ字型ブロックに変形。
コンベア上を流れていく。


D コンベアが途切れた先はなぜか暗ーい空間
Т字型ブロック、その暗闇に消えていく。 ⇒END





…あのー、理解できましたか?

いえ、画面は理解できたと思うんですが、
このムービーが意味するところは理解できたでしょうか?
私にはサッパリです。

こんな代アニの課題作品実験プログラムのような
ムービーに、一体どんな意味合いが含まれていると言うのでしょう?

しかし、「意味」とは求める者にこそ与えられるもの。
邪念を捨て、製作者の熱い気持ちに思いを馳せたとき、
見えてきました、このムービーに託された 重く深いテーマが。

そのテーマとは、ズバリ「会社人間の末路」

上記のA以降を以下のように解釈することで、
真に製作者が語りたかった「思い」に肉薄することに成功しました。




A 今日からは社会人なんだから、「私」という個性は捨て去り、
丸く、トゲの無い人間になりました。


B 会社は辛いところです。
上からは抑えられ下からは突付かれる。
変わりばえのしない毎日がただ延々と続いていくのです。


C そんな「私」にもようやく定年という転機が訪れました。
たくさんの退職金も手に入りました。
昨日までの自分とは違う、新しい「私」に今日から生まれ変わるのです。


D …と思ってはみたものの、自分なりの特技も持たぬまま
年を重ねた末に会社を離れた「私」
何ができるでしょう?

有効な活用手段すら思いつかない退職金を食いつぶすだけの余生
どんな意味があるというのでしょう?

やりなおそうにも、私の残りの人生などたかが知れているし、
もう昔ほどの体力も残っていない。

私は、私はどうすればあああぁぁぁぁ…






………なんと深い内容でありましょう。 驚きました。

ただのおまけムービーかと思いきや、その実は
「サラリーマン国家日本」を深く鋭く風刺した
製作者からの警鐘であったのです。

平坦な日々の中で失いつつある、「個の確立」というものへの
飽くなき探求と深い憂い。

このムービーだけでも、当ゲームの価値は 100万円 ぐらいはあると申せましょう。



…実のところ当初はムービーは@までだったんだけど、
後から出来あがってきたBGMが妙に長かったので、
慌ててBGMとつりあうようA以降を付け足したのでは?
とか考えるのは邪推です。



■第三章『驚愕のシステム』

…OPムービーで味わった熱い感動を胸に、本編のゲームに挑んでみましょう。

まず気が付くのは、このゲーム、やけにロードが長いです。
また、ほぼ全ての場所に「スキップ機能」が存在しません

そのため、見飽きた画面を延々くりかえし見せられる苦痛は特筆もの
製作者の生み出した全てのパーツを余すところ無く堪能できます。



そうそう、このソフトには「対戦モード」があったではありませんか。
そちらも試してみようと思います。

かつて私自身も1989年当時、高校のコンピュータ部で
『テトリス』を自作し、アレンジとして、一定得点ごとに
プレイヤーが有利になる状況が発生する
「アイテムモード」なるものを付けたものです。

その中に
「自分のフィールドのブロックが右(あるいは左)に詰められて隙間が無くなり有利になる」
「ブロックの落下地点が分かり、ケアレスミスがへる」

というアイデアがありました。

何年か後に、スーパーファミコンの『テトリス武道外伝』や、
アーケードの『テトリス グランドマスター』などで
同様のアイデアが使用されているのを知り、
「みんな考えることは同じなのねぇ」と思いつつも、
それらに先んじた自分にちょっと優越感など感じていたりしたものです。


さて、『テトリスS』はどんなアイデアで私たちを楽しませてくれるのでしょう?

マニュアルを読んでみると…


★2ライン消すと、相手のブロックの落下速度が速くなる。(1回)

★3ライン消すと、相手のブロックの落下速度が速くなる。(3回)

★4ライン消すと、相手のブロックの落下速度が速くなる。(5回)






………… えーと。 つまり、速くなる「だけ」なんですね。  成程成程。

決してゴテゴテとした装飾の果てに真実があるとは限らないという、
製作者のゲーム性に対する信念、しかと賜りました。

されば、CPUとレッツ対戦プレイ。

しかし、いくら攻撃を仕掛けても、
ブロックの落下速度が速まるぐらいでミスするわけねぇじゃん
お互いの力が均衡してしまって中々決着が付きません。


そもそも相手はコンピュータ。
失敗など犯すはずがないのです。


参ったなぁと絶望感に打ちひしがれていた私が、
ふと、もう一度CPU側の画面を見てみると…
おや? 気のせいかさっきよりもCPUのブロックの積み上がりが高いような?

さらに観察してみて、その理由が判明しました。

どうやらCPUは、プレイが長期化してくると、5〜6回に1度の割合で
わざとミスをするように設定されているようなのです。

私はCPUに手加減していただいて勝ちを拾っているのですね、と気付くにつけ
人間の能力の儚さと、製作者の細やかな心遣いが感じ取られて、
死にたくなりました 嬉しくなりました。


前述のとおりCPUはミスをしませんから、必然、
戦いは長期戦になり、CPUのミスを待つ形になります。

そのため、どんなに早くても1対戦あたり3分近く時間がかかります。
3本先取制なので、1人の相手に対して最速でも10分程度
5人勝ち抜いてエンディングを見るためには
50分近く戦い抜く根気が必要なわけです。


でも、それを乗り越えた先には、
取って付けたとしか思えないゴミムービー
栄えあるエンディング
が待っているのです。

そう考えれば、50分程度の苦労など
我慢できるヤツがいるほうが不思議
あって無いようなものです。
 



…さて、この時点までベタ誉めの感のある当ゲームですが、
実は たくさん 1つだけ困った点があります。

それは、他機種で出ている『テトリス』と違って、
「接地した時点で破壊判定が行われてしまう」という点です。

よく分からない方は、下の図を見てください。



…下図は、すでに積まれているブロックの上に、
「Т字型のブロック」が着地した「直後」の状態です。




…他機種の『テトリス』の場合なら、ここで素早く
2回「ブロックを回転」させれば、
下図のようにピッタリと隙間にはまり、
2ラインを消すことができるのは、ご存知の通りです。




…ところが『テトリスS』の場合は、
「着地した時点で破壊判定が行われる」ため、
ブロックを回転させる猶予が全くありません。

その結果…




…最上部の1ラインだけが消えて、上図のような
中途半端な残り方をしてしまいます。

これは特にブロックが高く積みあがってきたとき
大きく足を引っ張る仕様で、不本意な隙間が増えることで
追い詰められて死んでしまうケースが多いことは
ただでさえヘボいキーレスポンスと相まって
最悪のプレイ環境を提供してくれます

本当に残念です。





…最後に、今回やたらと訂正線が多く
読みづらい文章になってしまったことをお詫びいたします。

当然ながら訂正線のあるほうが  本音 間違い です。



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