セガサターン用ソフト
『七ツ風の島物語』
販売…ENIX (開発…ギブロ)
購入価格 1680円
執筆日:2002年 7月3日
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■第一章 『ダメだ、こりゃ』
…
『七ツ風の島物語』は、
アクション・アドベンチャーゲームです。
主人公『ガープ』をあやつって島内を歩き回り、
島の住民たちと会話をして謎を解いていきます。
…最初にハッキリ言っておきますが、
『七ツ風の島物語』を
「ゲーム」として遊んでは
いけません。
「主人公の移動速度の極端な遅さ」
「ヒントの少なさ・分かりづらさ」
「画面が切り替わったときのロード時間の長さ」
(1つ隣の画面に移動するだけで『5秒』もかかります。
全ての場所で、背景全体を一枚絵として、ゆっくり3パターンでアニメーション
させているため、最初に長い読み込み時間を必要としているのでしょう。)
…などなど、
『スピーディなゲーム展開』と
圧倒的に対極をなす当作品は、
無職で
一日中家でブラブラしてでもいないかぎり
耐えて遊べるレベルでは無いのです。
(冗談ではなく、僕も遊んだ当時は無職でした。)
…自分が取った行動が
『絵本』の1ページとなって
記録されていくシステムは面白いアイデアですが、
ストーリーがほぼ一本道なので、
プレイヤーによってほとんど内容が変わらないのはガッカリです。
…で、今回は異例ですが、
「ゲーム批評」に関しては、
上記の
『ほとんどダメ』を結論として
サッサと切り上げます。
と言うのも、
「ゲームとしては失格の当作品」を、それでも
『皆さんに一度は触れてほしい』と僕が思う理由を、
今回の評論の
メインに据えようと考えたからです。
ゲーム評論を期待する方は、
これ以降はお読みにならなくてもOKです。
当作品の、
「ゲーム以外の部分の価値」に興味のある人だけ、
第二章以降を読んで下さい。
■第二章 『ゲームにあらず』
『七ツ風の島物語』は、
「ゲーム」ではありません。
多少
「ひいき目」な意見であることは分かっていますが、
主人公『ガープ』と同等の時間体験をしつつ、
島の住人達との生活とコミュニケーションを楽しみ、
島の自然の中で風を感じながら、
自分の遠い記憶の中の真実に対峙する環境ソフト
…と考えてプレイして下さい。
世露死苦ー。
…
『ガープと同等の時間体験』とは、つまり、
あなたが実際に島の中を移動するのにかかるであろう
「移動時間」を、
ガープが体現してくれているという事です。
例えば、島の頂上付近にある
『ガープの家』から、
海岸線にある
『岬』までの距離は、
ゲーム画面上で大雑把に見て
200メートルぐらいです。
あなたなら、200メートルの移動に
「歩き」で、どれくらいかかりますか?
…個人差はあるでしょうが、
だいたい
『3分』ぐらいだと思います。
(人の歩行速度を「毎時4キロ」として計算しました)
で、
『ガープ』はと言うと、
そこまでの移動に、やはり
『3分ぐらい』かけているのです。
…
「ゲームだ」と思うと
腹立たしい遅さですが、
『僕はガープなんだ』と思いながら歩くと
不思議と許せてしまうのは欲目でしょうか?
欲目でしょうねぇ…
(コントローラーの「移動ボタン」を押しっぱなしに
しないとダメなので手も痛いし。)
■第三章 『住人たち』
…主人公である
『ガープ』は、
ズン胴で羽の小さいドラゴンのような生き物です。
小さくて不恰好ですが、
愛嬌を感じさせるキャラクタです。
…数10体におよぶ島の住人は、実に
奇抜なデザインの者ぞろいで、
「哺乳類・爬虫類・昆虫・魚類・植物」などを基盤としていながら、
それらを
雑多に混ぜ合わせたような特異な外観を持っております。
中には
「無機物」と合成したような生き物までいて、
まるで
宇宙人の村です。
…例として、
「スズウサギ」の
リムルの
ディテールを見てみましょう。
「スズウサギ」の外観は、大雑把に見て…
@サンリオの「キティちゃん」の友達のウサギのような顔
A「着物」を着た、円錐形の体
B着物の内側下部には、足のかわりに、
自分の頭ほどもある大きさの丸鈴
の3点によって構成されています。
『ウサギ顔のテルテル坊主に、下から丸鈴をつっこんだ』
ようなデザインなわけですね。
いきなり見せられると、
違和感というか
不気味さのようなものを
感じずにはいられない姿です。
が、この仔が性格的に実に
素直な優しい少女で、
『話しをするたびに、耳をピコピコ振りながら、
足元の鈴を軸に起き上がりコボシのごとく
前後にユッタリと揺れつつ、
リンリンリン
と風鈴のような透きとおった声で鳴く』ので、
もう
可愛くて可愛くて…
用も無いのに話しかけて、
「リンリンリン…」という鳴き声に
心和(なご)まされたものです。
リンリンリン…
はあぁ〜。(ハート)
…彼女に限らず、島の住人全てに、
独自の
『声』と
『動き』があります。
そのどれもが、住人の
性格をうまく表現しており、
話した内容は忘れても、
彼らの動きだけは
ハッキリと思い出せるほど
記憶に染み込んでいます。
存在感があるのです。
TVの中の島で、
彼らが本当に生きているような、
ともに生活を営んでいるような
錯覚すら覚えます。
■第四章 『島の自然』
…
『七ツ風の島物語』は、
背景・
音声にも
力が入っています。
…
「背景」全体が随時、秒間2パターンほどのスピードで
「3パターンアニメーション」をしており、
ちょうど、
ゆるやかな風に木の葉がゆれるような感じの、
穏やかな風景を表現しています。
…また、BGMの代わりに、常に臨場感あふれる
『風の音』や
『虫の鳴き声』が聞こえています。
日差しの強い草原を歩いていると、遠くから聞こえる…
あれは
セミの声でしょうか?
岩場を降りて海に出ると、
波が広々とした砂浜を洗う音が、
寄せては、返し… 寄せては、返し… しています。
幸せです…
自分の中を、
やさしい風が通り抜けていくような心地良さ。
誰にもジャマされること無く、
この島の自然を満喫できる贅沢。
そろそろ
都会暮らしにも飽きてきた私のような人間や、
会社の都合などで街暮らしを余儀なくされている
自然派の方には
きっと、
胸に染み入るような強い魅力が感じられる事でしょう。
(逆に、田舎にお住まいの方には大して魅力を感じない部分だと思います。)
■第五章 『記憶の中の真実』
…さて、このように住み心地の良い
『七つ風の島』ですが、
ストーリー面では、主人公
『ガープ』にとって
大変に過酷な物語が展開されることになります。
「世界設定」なども交えて、順を追って説明しましょう。
…まず、
この世界に生きる者たちには
『前身年』というものがあります。
これは言わば
「幼虫」のような時期で、
これが終わると一度
『サナギ』の状態で
睡眠に入り、
1年ほどしてサナギからかえると
『前身年』の記憶をスッパリ忘れて、
全く別の生き物となって
第2の人生を生きる…
というものです。
ガープは既に
『前身年』を終えて今の姿になったのですが、
実は、
サナギからかえった直後(ゲームスタート時)に
不思議な経験をしています。
『黒い風』を目撃したのです。
…この島には、その名の示すとおり
「色々な能力を持つ7つの風」があります。
(それを修得して扱う者を『風使い』と呼びます。
ガープは『風使い』を生業としてこの島で暮らすことになります。)
が、その7つの中に
『黒い風』というものは
存在しないのです。
(…ちなみに、この『黒い風』は、ストーリー後半で、
島の住人の魂を次々に抜き取るという恐ろしい力を発揮します。
『風使い』であるガープが、「7つの風」の力を使って
『黒い風』を倒しに行く、というのが後半の山場のストーリーです。)
…さて、
「風使い」となったガープは、
様々な事件と出会うことで1つ1つ
「風」を修得し、
島の人々とも交流を深めていくのですが…
その過程で、
『黒い羽』や
『黒いシッポ』といった
不思議な破片を拾うようになります。
その
破片を媒介として見ることのできる
『前身年の記憶』から、
「ガープ」は、自分は
サナギになる前、
『巨大なドラゴン』であったことを知ります。
そして同時に、自分には
『コウモリのような、体の小さなトモダチ』が
いた事も分かりました。
「前身年」の終わりに共に眠りに付き、
サナギからかえったら、
また一緒に空を飛ぼうと約束した、
『たった一人のトモダチ』。
しかし、ガープが目覚めたときには、
そばには誰もいなかったはずです。
これは、どういう事でしょう?
…例の
『黒い風』が、この
「小さなトモダチ」の
行方不明に関わっていることは確かなのですが、
ならば
『黒い風』とは一体何なのでしょう?
なぜ、島の人たちを襲うのでしょうか?
そもそも、どうしてあの
「黒い不思議な破片」から
「ガープ」の前身年の記憶がよみがえるのでしょう?
この
破片が、
『ガープを知っている』という事でしょうか?
…全ての謎は、
「破片」が全てそろい、
ガープの
「全ての記憶」が明らかになったときに判明します。
その
5分間ほどのムービーに、
今までの
断片的な情報の答えが
全て入っています。
そこでは、
悲劇の記録が語られます。
前身年の頃、その
「巨体」ゆえに
皆に恐れられていた…
そんな
孤独なガープの
「たった一人のトモダチ」を襲った
悲劇の記録が。
…結末は、ココでは書きません。
アナタ自身の目で確認して下さい。
(謎が分からなくてつまってしまったら、当HPあてにご連絡をー。
解法をレクチャーしますんで。)
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