ウィンドウズPC用


『賢者のお買い物』


開発: Atom ShockWave

プレイ時間 : プレイ約20回

購入価格: 無料配信

執筆日: 2006年 09月11日





■第1章 『生活から生まれるゲーム』


『賢者のお買い物』(Atom ShockWave)は、
ShockWave.com で無料配信されているアクションパズルです。



魔法のホウキの材料を買うために店に行き、
財布の中の小銭が多くなり過ぎないように
気をつけながら買い物をする』
という、
一風変わったゲームです。


皆さんもコンビニなどに買い物に行ったときに、
財布の中に小銭が多くて、なんとかこれを少なくしよう
工夫した経験があるのではないでしょうか?

「5円玉が多いので、これを2枚一組で10円分として払う」
といった基礎的なことはモチロン、「738円の物を買って、
1238円を払い、お釣りをちょうど500円玉1枚にする」

といった気持ちの良い芸当も、計算に慣れるとスイスイ実行できるものです。



ゲーム企画者というものは、
こういう日常体験から『ゲーム性』を見つけ出すと、
「なんとかこれをゲームにできないかな?」と考えるものなのですが…

いえ、正直僕もネタとして持ってはいたのです、『両替ゲーム』

『賢者の買い物』の作者には先を越された形ですね、ムキーーー!




さて、それでは当ゲームの具体的なルールを見てみましょう。


★ 10回買い物をして、その合計点を競う。



★ 出てくる品物の金額は毎ゲームでランダム。

(もちろん、その合計額がプレイヤーの持ち金を越えてしまうようなことはありません)



★ 1回の買い物の最高点は150点。
お金を払うのに手間取っていると、
基本のタイムボーナス100点が少しずつ減点、
お釣り無しのピッタリの金額を払えばそれにプラス50点。
その両者の合計が、1回の得点となる。


(したがって、1ゲームの理論上の最高得点は1500点。)



★ 毎回サイフの中身がチェックされ、
小銭を持ちすぎているとペナルティとして減点。


(この『持ちすぎている小銭』とは、例えば、10円玉を5枚以上
持っているような状況のこと。 これが、どこかの場面で
10円玉で払えるところを50円玉や100円玉で払って
過剰に10円玉を得てしまった… と判断され、減点される。
過剰に持っている小銭1枚につき、マイナス20点。)




こんなとこですね。







■第2章 『目先だけのやり取り』


ところが遊んでみると、
これが何とも工夫の余地が無いというか、
目先の枚数ばかり気にして、
少しも長期的戦略を練る楽しみが無いのです。

いえ、アイディアを先に形にされたからといって
ネタミで言っているわけではありません。

試しに皆さんも こちら の ShockWaveページで
実物(無料)を何回か遊んでもらえれば、
以下に僕が語る内容に賛同してもらえるのではないかと思います。




何が原因で、こうも即物的な展開に感じるのか?
その最も大きな理由の1つは…

『得点システムの練りこみ不足』にあります。


本来ゲームというものは、
『ユーザーの取った行為』に対する評価として、
それに見合った得点を与える形を取っています。

『見合った得点』とは何でしょう?

それは、より高いテクニックをなしたユーザーに、
より高い得点を与える
という、
考えてみれば極々当然の相互関係のことです

『野球』、『麻雀』などの、秀逸で長年愛されているゲームには、
必ずこの「当然の相互関係」が見事に内包されているものです。





では、『賢者の買い物』ではどうなのか?

それを検討するために、当ゲームで高得点を
出すための方法
を分析してみましょう

このゲームで高得点を出すには、先の得点ルールと、
「タイムボーナスはそれほど極端には減点しない」ことの2点を考慮すると、
『ピッタリ払いの50点ボーナスが重要』であることが分かります。


ならば、どうするか?  …そうです!

『少しでも多く小銭を持って、
どんな金額にも対応できる』

ようにすればイイのだあぁーーっっ!!




…と結論が時点で、この戦法は崩壊します。

だって、このゲーム、『なるべく小銭を持たないことが
得点システムの大前提になっている』
のですから。

なにしろ、ハンパな小銭が1枚あるだけで、マイナス20点!
1回の買い物が終わった時点で余分が5枚あろうものなら、マイナス100点。
タイムボーナスが消し飛ぶ勢いです。

基本ボーナスが少々引かれても少し多めに小銭を持って備える…
といった駆け引きのレベルでは無いことは一目瞭然。


結局、『道を踏み外さないようーに地道に進んで、
神のご好意でピッタリ出せる瞬間が来たときだけ、
おこぼれで50点ボーナスをいただく。』

それがこのゲームの全てです



最も他人に差をつけられる可能性のある部分が完全な運まかせ

あたかも、宝くじやパチスロ・競馬だけが、
平凡な日々におけるマレの臨時収入源な、
万年サラリーマンの人生
のようです。

いやだ、こんな人生…  いっそ殺してくれ。







■第3章 『解決案』


では、どういった得点システムにすればよかったのか?



まずは、『余計な小銭を持った状態の
ペナルティを軽減』
してみてはどうでしょう?

そうすれば、多少の減点は食らっても、
対応できる金額に幅ができる… という、
リスクリターンのバランスを自己責任で
コントロールする戦い方
が生まれてくるはず。




次に、『財布の中身の小銭だけで得点評価せず、
払う金額の美しさによっても追加の評価を与える』
ことを提唱します。

つまり、第1章で書いたような
『お釣り小銭の数を極端に減らした場合』
追加ボーナスを上乗せする
のです。

『サイフの中身の状態』と、『出したお金の状態』
2つの評価基準を得点システムに持たせることで、
ユーザーのさらなる『臨機応変で個性的な戦い方』に対応させ
遊びの幅を広げられることでしょう。




最後に、『小銭を払うときの操作性』

現状では、ドラッグによってサイフからレジに
小銭を移動させてから「支払うボタン」、という形ですが…

これを例えば『サイフ内の小銭をクリックすることで色反転。
「支払うボタン」を押した時点で、色反転している小銭が支払われる』

とすることで、余計なマウスの動きをカットし、
ゲームにもスピード感が生まれると思うのです。



もし、続編を検討するのであれば、
上記のアイディアを ShockWave に
無料提供することをお約束いたします。



それにしてもこのゲーム、全体的な雰囲気や、
成績発表画面のBGMと画面の動きのシンクロなんかは
個人的には大好きなゲームなんだけどなー…







■第4章 『10万円相当』


それにしても、今回の批評はスゴイですね。
ゲームの改良案と、その原理の解説。

そこらのゲーム学校に行ったら、
講義だけで5〜10万円は取られる内容ではないでしょうか?


まぁ、いつもウチのゲーム批評を読んでくれている
気骨あるゲーム企画者(あるいは志望者)の皆さんへの
ささやかなサービスだと思ってくれたまえ(偉そう



さて、他人に偉そうに理論たれてるヒマがあったら、
俺も進まなきゃダメですね。

皆で良いゲーム、作っていこうぜ! エイエイオーー! ぱふー。






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