ワンダースワン用ソフト

『そろばんぐ』

販売…加賀テック (開発…メカニックアームズ)       購入価格 1480円

執筆日:2002年 6月24日





■第一章『葉隠精神』


『そろばんぐ』(メカニックアームズ)は、
ちょっと変わったアイデアのアクションパズルです。


当批評コーナーをご熟読の方であれば、
『あぁ、池袋ふきの好きそうなジャンルだなぁ、けけけ』
と、ほくそえまれた事と存じますが、

どうせそぉだよ、カーッ ペっ。 ←逆ギレ




…でも、『そのジャンルが好き』なのと、
『そのジャンルのゲームを面白いと思う』のとは、
別問題であります。


むしろ、「好き」だからこそ、そのジャンルに対して
目が肥えてしまい、なかなか『コレは!?』と思える作品に
出会えずヤキモキさせられるという点では、他ジャンルよりも
『面白いと思っている作品が少ない』かも知れません。


ちょっと悲しいですね。




…でも、だからこそ
『パズル系ゲーム』に対する自分の評価は、
妥協を許さない、愛と厳しさを理論に託した批評になっている
自負する一方で、常々自戒しつつ書いております。





アクションパズルの批評を書くときの池袋ふき
『本気』です。


パズルとは死ぬ事と見つけました。



皆さまもそのつもりで、命を賭してお読み下さい。

(ウソだよ、ウソ。 命かけなくていいよ。
リラックスしてお茶でも飲みつつ読んでくれたまえよ、ヘーイヘーイ。)






■第二章『システム』


…それでは、『そろばんぐ』のシステムをご説明しましょう。


当ゲームのルールは、
フィールド上に散らばった『玉』を移動させて、
『同じ色どうし、3個以上隣接させれば消せる』
という、
たいへんにシンプルなものです。



玉のならべ方は「一列」である必要はありません。
隣接さえしていれば、「L字型」でも「階段状」でもOKです。



で、移動のさせ方ですが…

ちょっと変わっています。


その前に、
「ワンダースワン」独特の操作ボタン
について説明しましょう。





…持っている方はご存知でしょうが、この携帯ゲーム機には、

『移動用の4方向ボタン』、
おなじみの『A・Bボタン』の他に、

『十字に並んだボタン4つ』が付いています。


…で、『そろばんぐ』は、このボタンを
『フィールドを上下左右にズラす』ボタン
として使用しているのです。





で…

@ まず、縦横「8×7」のフィールドの好きな場所まで
「移動ボタン」で『カーソル』を動かします。

A そこで、『フィールドをズラす』ボタンを押すと、
押した方向に列・あるいは行が1つズレます。
当然、その上に乗っている『玉』も同時に動くので、
これを利用して玉を並べます。

B なお、画面の外にハミ出たものは、反対側から出てきます。




…言葉のみで説明できないかと頑張ったのですが、
なんかムリそうなので下に図をつけました。 見て下さい。







赤い星がプレイヤーの『カーソル』のある場所だとします。

この場合、『フィールドズラし』ボタン
左右を押せば「黄色い部分」が左右に動き、
上下を押せば「水色の部分」が上下に動きます。


これを駆使して、玉を並べ替えるわけですね。





並べた『玉』は壊れますが、
この時に、アクションパズルの定番として、
『連鎖破壊』を狙うことができます。

玉が壊れて消えるまでの『1秒強』の間に、
消えていくのと同じ玉をさらに隣接させる『後付け』と、
別の場所で他の「玉」を消す『連鎖』という
2つのテクニックが狙え、
成功すれば、当然、高得点が入ります。





…また、フィールド上の「玉」は、
一定時間ごとに『補充』(5個) されます。
(場所はランダムです)


この時、補充される場所にすでに別の玉が置かれていると、
『ミスゲージ』のメーターが上がり、
メーターがいっぱいになるとゲームオーバーです。


そうならないためには、
補充予定の場所 (カーソルマークが付く) にある玉を、
速やかに「どかす」「破壊する」かしなければなりません。



…以上が、『そろばんぐ』の全ルールです。





■第三章『遊んでみて…』


シンプルなゲームだと思います。

今までにも、あまり無かったタイプのアイデアですし
(強いて言えば、プレイステーションの
『蟲の居所』というゲームのシステムが似ていますが…)

それでいてプレイを初めて10分もかからずに
スンナリと修得できる操作系
です。


なんと言うか…

前情報無しで初めて出会った人物が、
『清潔な服装でおとなしい笑顔が似合う青年』
だったような心地ですね。


とりあえず、第一印象は良好です。





ところが、この青年。

実際に会話を交わしてみると、なんだか物足りない。



常におとなしい笑顔を浮かべながら、
こちらの会話にはちゃんと答えている。

でも、踏み込んだ深い話になっても
当り障りのない一般論を1つ2つ語るばかりで、
やっぱり静かに笑っているだけ。



…不快感を感じない反面、印象にも残らない。


『悪い人じゃないけど、
別に、あの人じゃなくてもイイな。』

と思わせる、「そんな人物がゲームになった」ような感じを、
この『そろばんぐ』から受けるのです。


…説明が抽象的なので、具体的に何が悪いかを以下に列挙してみましょう。





@『思い通りに並べられない』


…床を動かすときは、「1列」とか「1行」とかを
いっぺんに動かしますよね。

これは同時に、
『7〜8ヶ所の床の位置がいっぺんに変わる』
ことを意味します。

皆さんだったら、床が移動した後のそれぞれの
「玉の位置」完璧に予想できますか?



…多分、ムリでしょう。
(いえ、もちろん僕もムリですけど…)



でも、それが出来なければ、
『そろばんぐ』で大きな連鎖を組むことは難しいのです。



…床をメチャクチャに動かすことで、
偶然に『後付け』が成功し、
「3〜4連鎖」ぐらい行くこともあります。

でも、それは所詮、『偶発的』なものであって
『プレイヤーの実力』によるものでは無いのです。


自分の実力によらない成功で喜べるほど、
僕らプレイヤーはバカではありません。



…結果、遊べば遊ぶほど
当ゲームの「偶発性」に頼ったゲーム内容が露呈し、
良質のゲームが持つ『戦略で勝利したときの手応え』と比較した時、
どうしても味気無さを感じてしまうです。





A『長期的戦略の乏しさ』


@に関連して、後々の事まで考えて布石を敷くような
『長期的戦略』(大きな連鎖を作るとか)やりにくいです。


…いや、ハッキリ言ってしまえば、
単発的に目先の破壊を繰り返すだけのゲームで、
ほとんど『長期的戦略とは無縁です。




の要素が強すぎるため、
「プレイヤー自身の成長」も、すぐ頭打ちになってしまい、
『上手くなりたい』という気分になれないのです。





…以上2点から分かるとおり、当ゲームの弱点
すなわち『奥の浅さ』なのであります。


この手の『単純明快なシステム』のゲーム
『テトリス』以降、各メーカーからいくつも出ているのに、
そのほとんどが『目先の行為』のみにとどまって、
『長期的戦略』置き去りにされているのは
嘆かわしい限りです。





『シンプルなシステムのゲーム』は、
『人当たりの良い人物』と同じで、
ある程度の場数をこなせば誰にでも底々のモノに辿り着けます。


しかし、卑しくも「プロ」の名で呼ばれるからには、
『シンプルかつ、奥の深いゲーム』
目指して下さい。





…『作れ』とは言いません。



どうせ無理でしょうから。






…言い過ぎですか?

でも、言いたくもなりますよ?


こんなに、見るゲーム見るゲーム全てが
『シンプル』かつ、『奥浅いゲーム』ばかりでは。


君らも他人サマから金を取る以上、
せめて気概だけでも『葉隠れ精神』見せてみなさいよっ!!!





ちょっと怒ってみました。


この怒りは、『そろばんぐ』の企画者さんだけではなく、
世の多くの企画者に対するものなので気に病まないで下さい。



でも、ちょっとは気に病んでください。





■第四章『最後の砦』


…さて、最後にちょっと脱線など。


ゲーム業界も誕生から20年以上経って、作り手側も
『作り方のマニュアル』のようなものを見出してきたようです。

でもそれは、『形にするためのマニュアル』であって、
『面白いものを作るマニュアル』ではない事を、
メーカーの方々は肝(きも)に銘じるべきです。




…あいかわらず不景気まっしぐら(2002年現在)の昨今ですが、
『量より質』『アイデア1つ』大逆転も夢ではないのが、
『シンプルなアクションパズル』というジャンルの強みです。



一攫千金の夢をチラつかせて
クリエイターを釣るつもりは無いですが、
「ゲームらしいゲーム」の最後の砦は
『アクションパズル』であると僕は思っています。



…他メディアでは絶対に実現できない、
『ゲーム』というメディアの底力
ユーザー諸君に見せ付けてやろうじゃねぇか、野郎どもっ!!!





…いや、分かってる分かってる。

俺も頑張るよ。 オーーっ!!!




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