プレイステーション用ソフト

稲川淳二
『真夜中のタクシー』

販売 ヴィジット        プレイ時間 「オールクリア2回」

購入価格 1280円        執筆日:2003年 1月7日





■第一章 『ヴィジット』


『稲川淳二 真夜中のタクシー』(ヴィジット) は、
怪談アドベンチャーゲームです。


…主人公はタクシーの運転手となり、闇夜の道路を走りながら、
その道中で拾ったお客から数々の怪談を聞かされることになります。


『タクシー運転手だから、お客の話は聞かざるを得ない』
『夜中のタクシー車内という密閉空間が醸(かも)し出す、
孤独感と恐怖』
など、その設定の上手さに唸らされます。




…状況説明も巧みで、
メッセージによる説明がほとんど無いかわりに、
効果音が充実しています。


『私はタクシーに乗り込み、エンジンをかけ、走り出した』
とメッセージが出るかわりに…

『バッタム』(車のドアを開く)
『バム!』(ドア閉める)
『カチャキ キュキュキュー』(キーを回してエンジン始動)
『ブオムブオム』(ふかし)
『ブモモモモモモ〜…』(発進)

といった豊富なSEが、どんな言葉よりも確実に
『自分がタクシーに乗り込み、それを発進させた』
という状況をすんなり理解させてくれます。




…常々感じていたのですが、『ヴィジット』というメーカーは、
こういった『雰囲気づくり』が本当に上手いです。

一見ムダなように見える小さな演出の1つ1つが、
確実に『臨場感』を盛上げ、自分がゲーム内の主人公と
同じ視点に立っているような錯覚すらおぼえさせられます。



…また、キーレスポンスが良く、
スタートボタンによるスキップ(場面飛ばし)もいたるところで可能、
一度聞いた怪談は後から何度でも聞きなおせるよう保存されていく

など、親切の塊のようなシステムには
頭が下がりっぱなしです。






■第二章 『でも…』


…これで、内容さえ良ければ文句無しの『名作』なのですが、
残念ながら今イチでガッカリです。

何がマズいかを列挙してみましょう。



@『怪談画面が小さい』

…お客が怪談を語りだすと、
主人公の目の前の、フロントガラスの右半分
『怪談の内容に応じた画面』が映し出されるのですが、
これが小さくて迫力に乏しいのです。

「目」「耳」で楽しむ怪談ゲームにとって、
『その片方の迫力が無い』というのは、
かなり致命的ではないでしょうか。




A『明るい』

『登場人物(お客)』が全体的に明るすぎます。

照明のほとんど無い、薄暗いタクシー車内という
絶好のロケーションにも関わらず、
バックミラーに写るお客の顔の明度はまぶしいほど明るく、
浮いて見えてしまっています。


…顔つき自体も『人が良さそう』で安心感があるし、
何より『語り口がハキハキサッパリとしていて軽快すぎ』です。

「ちょっと変わったことがあってねー、あっはっは」
という感じに爽やかに話されては、
怖がれというほうがムリです。


…メインの稲川氏も、
あいかわらず浮かれたようなビックリ声で話すので、
怪談を聞くときのしみるような恐怖感がほとんどありません。




B『聞きづらい・読みづらい』

…当ゲームでは、臨場感を増すために
常に『タクシーの低いエンジン音』が鳴っているのですが、
そのせいでお客の話が聞きづらくなるという
悲しいジレンマが発生しています。

また、「会話」ではなく「文章」(メモとか)で怪談を読む場面では、
『ぶらさがり』(句読点が文章の先端にきてしまっていること)が実に多く、
読んでてイライラさせられます。

(これ、実はヴィジットの作品の伝統なんですが。 改良してほしいです。)




C『話自体が…』

…何より、語られるの数々が、どれも今イチなのは辛いです。

『お守りを使ったら悪い霊が退散した』とか
『霊をからめた安っぽい人情話し』とか
『この世にありもしない「霊感」を、まるで何かの
特殊技能のように語る、さもしい媚び話し』
とか…


この手の三流怪談は、
話数をかせぐには適しているかもしれませんが、
ほどほどにしないと聞いてて完全に白けます。


話自体もダラダラと長く、
途中の描写に不要な箇所が多々見られてイライラします。






…と、いった所です。

怪談ゲームとしては、底々及第点といった所でしょうか?



同社の『稲川怪談』は、他にもいくつかあるようですが、
現時点ではちょっと買う気になれません。

将来、上記の難点が改良されることを切に願います。








■■ 2003年 10月 ■■

後日、もう一度、通しプレイする機会があったので、
改めて「全36話」について評価をまとめてみました。
(評価は4段階で、A〜D)

こうしてまとめてみると、稲川淳二が語っている話には
ほとんどイイものが無いことがハッキリして、
イヤになっちゃったよ。



語り手 お勧め
 残された男 稲川淳二
 いけにえドライブ 稲川淳二
 かかってきた携帯電話 稲川淳二
 盆踊り 稲川淳二
 207号室の患者 稲川淳二
 消えた階と友人 稲川淳二
 赤ちゃん人形 稲川淳二
 ツアーの話 稲川淳二
 クラス会 稲川淳二


語り手 お勧め
 犬鳴峠 稲川淳二
 旅館の部屋 稲川淳二
 おまえか
 2人で聞いた
 首無し地蔵 稲川淳二
 おいでおいで
 あぶないゲーム
 テープは告発する
 後ろのテレビ


語り手 お勧め
 鋸引き峠
 重い水
 霊にとりつかれた赤ちゃん
 私
 お面 稲川淳二
 黒い足
 うつ伏せ
 おしろい
 湖底の恋人


語り手 お勧め
 二十五年目の復讐 テキスト
 写真 テキスト
 石段神社 テキスト
 電話の向こう側 テキスト
 黄色い人間 稲川淳二
 ピーラー テキスト
 おもいで テキスト
 親子づれ テキスト
 ストーカー テキスト





P.S.

…そうそう、ゲームの『3日目』で、
まれに『遊泳場のほうを走る』ことになって
読める怪談が変化するんですが…

この状態にもっていく「分岐条件」がどうしても分かりません。

ご存知の方、いらっしゃいます?





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