プレイステーション用ソフト
『くるくるトゥインクル』
販売…トミー(開発:トムキャットシステムズ)
購入価格 2280円
★序章『やつは道を誤った』★
《《ストーリー紹介》》
「流れ星にねがえば、どんな願いも叶えられる。」
なかよし兄妹の「クルト」と「ステラ」は、町外れの「願いの丘」で
夜空を見上げて流れ星を待ちつづけていました。
と、その時、2つの流れ星が…
何とその流れ星たちは、小さな2つの星に姿を変えたかと思うと、
兄妹のいる「願いの丘」の上に静かに舞い降りてきたのです。
『私達は星の案内人「ピッコリ」と「チッコリ」。
あなた達の願いを叶えるお手伝いをします。』
その言葉に、妹の「ステラ」はドスのきいた低い声で凄みました。
『お手伝いやのうて、お前らが叶えんかいっ』。
↑うそ
…『「くるくるトゥインクル」、結構イイよ。』
落ち物パズルゲームをこよなく愛する我が盟友POP氏の一言が、
このゲームとの出会いでありました。 そんな氏がキャラ本を
作るほどにのめりこむ作品なれば購入せぬ手なし、とショップに
走り、私にとっては少々高めの出費にて当作品をゲット。
胸ときめかせて帰宅し、早速プレイしてみました。
ところが、今までの落ち物ゲーに見られない特異なシステムに翻弄され
あろうことかイージーモードの一人目すら越えられません。
その後、POP氏より「おじゃま石を横一列に並べることで一気に
逆転を狙うと効率的」との戦法を教わり、再度挑むも、イージー
モード3人目が限界。 ハードモードすらクリアしているPOP氏が
急に遠くの存在に思え、
「POP氏は『マリナちゃん(人魚少女)』
の魅力に惑わされてシステムを過剰評価しているに過ぎぬ」
と落ち込み、深夜ラジオに自作のポエムを投稿する日々が続きました。
ラジオネーム
「寂しがりやの愛のジプシー」
★第一章『人生の転機』★
…それから3ヶ月。
任天堂の名作『パネルでポン』と当作品における類似点と
相違点からシステムの研究をするため、再び件のゲームをPSにセット
する日がやってきました。 以前よりも慣れて、少しは進めるように
なったものの、前半のキャラ「おとめちゃん」に阻まれ、
ボコボコにされ続けた私のハートは序々にささくれ立っていきました。
そしてついに、今風に言うところの
『まじキレ』状態に陥ってしまったのであります。
「おじゃま石」ばっかボコボコ送ってきやがってよ、
犯してフィリピンに売るぞ、この腐れ●●●。
…腹立ちまぎれとは言え、もう少し言葉を選べなかったものでしょうか。
テレビ画面に向かって中指を立て般若のような形相で凄む私を、
飼い猫が何とも言えない表情で見つめています。
そして私は、あろうことか「おじゃま石を横一列に並べる準備だけ
して、危なくなったらソレを並べて反撃するだけ」という、世にも
消極的な、ヤケを起こした子供のようなプレイに徹したのです。
ところが、それが始まりでした。
今まであれほど苦戦していたのが何かの間違いかと思わせるほど、
勝率が上がり始めたのです。 たったこれだけの戦法で勝つわ勝つわ。
2時間後にはハードモードのエンディングに辿りつくという、
「ラピスペンダント」も裸足で逃げ出すサクセスストーリー
には、
この事実を読者に信じてもらえるのかと心配になるほどです。
しかし、エンディングに至って私を包んだ思い、
それは「むなしさ」でした。
こんな遊び方になんの意味があるのでしょう。
夕日に照らされる荒れ果てた地球の大地の前で、私は嗚咽したのでした。
何が「くるくるトゥインクル」だ。
何が「おじゃま石を横一列」だ。
うおおぉ。
東方不敗。
★第二章『パネルでポン』★
…とにかく『パネルでポン』とよく比較される当作品。
ならば、トコトン比較し尽くすべし、と意気込んで調べてみたのが
以下の資料です。 システム面についてだけですけど。
★『フィールド面積』
…両者とも「横6キャラ分、縦12キャラ分」の幅を持つ。
これは、『ぷよぷよ』や『パズルファイターUX』等と同じ。
ちなみに『コラムス』『コズモギャング・ザ・パズル』等は
「縦13キャラ分」の高さを持つ。 とは言え、落ち物パズル
としての標準的な値は、だいたいこの前後に収まるようだ。
★『パネル(石)の色数』
…両者ともジャマ関係が「2種類」で同じ。
しかし基本パネル(石)は『くるくる〜』が
7色(ハードモードで8色)、
『パネル〜』が5色(ハードモードで6色)であることから、
単純に考えれば後者のほうが色を揃えやすそうに思える。
★『色の揃え方』
…両者とも「縦か横に同じ色を3個以上」並べればOK。
ただし『くるくる〜』のみ、それが「隣り合ってさえいれば直列
でなくても消える」ため、『パネル〜』よりも揃いやすくなっている。
全体的に見れば、両者の「揃って消える確率」は同じ程度か、
微妙に『くるくる〜』のほうが消えやすいと思われる。
★『パネル(石)の補充』
…『パネル〜』は下から生えてくる。 そのため、偶然に色が
揃うときもフィールドの下のほうで消えるため、全体の土台が
崩れて予期せぬ連鎖を生み出してくれる可能性が高い。
逆に『くるくる〜』は上から降ってくるため、
揃っても付近の並びに影響を与えることが少ないどころか、
折角用意した連鎖の一部分を消してしまうことすらある。
★『攻撃』
…『パネル〜』は、「連鎖」あるいは「4個以上同時に消す」ことと、
「ビックリマーク」を揃えることで、2種類の横長の障害物を敵に送る。
種類の異なる障害物は同時には消せないので、それぞれを交互に相手に
送る戦法が有効だが、当然、しかけるにはテクニックを要する。
『くるくる〜』は、「連鎖」等によって相手のフィールドの下から
石を生やし、「おじゃま石」を揃えることで相手のフィールド上部より
「消すのが難しい石」を送りつける。 両方を同時に実行すると
非常に強力。 その割には、けっこう簡単にしかけられる。
詳細は第三章で。
★『カーソル内のパネル(石)の並べ替え』
…『パネル〜』は「横2個分」。
これの左右を入れ替えることだけがユーザーの行動の全て。
『くるくる〜』は「縦横2個分」。
上下2個ずつ、あるは左右2個ずつを入れ替えることができる。
一見すると便利だが問題アリ。 詳細は第三章で。
★『危険時』
…『パネル〜』では、フィールド全体が埋まった瞬間から
「約3秒」の猶予があり、この間に揃えたパネルの攻撃力
などが普段より高いため、押し返せる可能性がある。
『くるくる〜』は積み上がった瞬間アウト。 常に緊張感があり、
試合がダラダラ長くなることも無いのでイイという見方もある。
★『一発逆転の要素』
…『くるくる〜』には「魔法」があり、例えば
現在フィールド上に最も多く存在する石を全て消してくれる等、
6種類が存在する。 必要なパワーが溜まっていれば、いつでも
使用可能。 ところがコイツは反撃の手だてである「おじゃま石」
ですら消してしまうことがあり、「魔法」のおかげで状況悪化
という冗談のような事態も招く。
『パネル〜』では、前述の「危険時の利点」をいかして、
わざと高く積み上げてから一気に消すことで高い攻撃力を
相手にぶつけることが可能だが、高く積み上げれば当然、
敵のちょっとした攻撃で死亡する危険性もある。
★『フィールド揺らし』
…『くるくる〜』のみが持つシステムで、Lボタンを押しつつ
方向キーを左右に入力するとフィールド内が揺れ、高く積み上がって
いる石が低い場所に落ちて全体の高さが平均化される。
たしかに良いアイデアだが、一番上まで石が積み上がったら
即ゲームオーバーという厳しいシステムを考えれば、Lボタンを
押すだけでフィールド上部が自動的に平均化(ただし、石の並びは当然
ランダム)されるぐらいの即効性がないと無意味なのでは、とも思える。
…以上、全体的な評価をまとめると、『パネルでポン』は各々の
攻撃手段に一長一短があり、その全てが「パネルを
そろえる」という同一の方向性によって成り立っている。
そのためユーザーは、「揃えればOK」「ただし、どのタイミングで
揃えるかが重要」というシンプルなルールに基づいて数々の戦術を
組み立てることができる。 反面、純粋に実力が要求されるため、
実力に差のある物どうしの対戦では勝敗は歴然としており逆転性も低い。
そのため、対戦時はお互いのレベルを設定することができる。
さて、『くるくるトゥインクル』についてだが、一見すると
プレイヤーのできることが多く、したがって『パネル〜』よりも
幅広い戦術を組み立てられそうな印象があるが… とりあえず、
筆者なりの結論を述べた「第三章以降」をお読みいただきたい。
★第三章『システムから導かれる戦法』★
…まず、重要なのは『カーソルの問題点による連鎖の難しさ』。
当ゲームは、カーソル内の4個の石を縦横どちらにも入れ替える
ことが出来、それだけ聞けば『パネルでポン』以上の
自由度を持ったシステムにのように思えます。
ところが、そのために一度に4個もの石の位置が変わってしまうため、
ほんの一部分を動かしただけで思いがけずに付近の別の石が並んで
消えてしまい、折角用意した連鎖がダメになってしまう場合が多々
あるのです。 縦横に3個並ぶのはモチロン、「L字型に3個
並んでも消える」ため、連鎖の組みにくさは従来のゲームの比では
ありません。 その割に、連鎖による相手への攻撃力は弱い、
と言うより後述の「おじゃま石」を混ぜたものを相手に送るため、
かえって状況が不利になる可能性が高いのです。
このゲームにおける『連鎖攻撃』は「成り難く、弱し」と言えます。
この結論から、「連鎖」はあくまで補助攻撃として考え、別の強力な
攻撃手段を軸として戦ったほうが有利であることが分かります。
…次に『おじゃま石』による攻撃ですが、これは6個の「おじゃま石」
を横一列に並べれば、その下にある他の石を全部消してくれた上に、
相手に結構イヤな攻撃をしかけてくれるというものです。
この時、足かせになるのが前述の「簡単に並んで消えてしまう石」です。
「おじゃま石」を並べようと付近の石の並びをいじるたびに、
近くの石が消えて「おじゃま石」が土台を失い、一から並べなおし…
という状況はストレスが溜まります。
それでも連鎖よりははるかに組みやすく、敵の攻撃によって送られて
くる石の中には必ず「おじゃま石」が含まれているので枯渇することは
少なく、何より一発逆転を狙える『魔法』の発動に必要な「スター」
を入手できる唯一の方法がこの攻撃とくれば、使うに越したことは
ありません。 見返りの多さからも分かる通り、『おじゃま石攻撃』は
「成り易く、強し」と言えます。
…以上2点から1つの戦法が導き出されます。
@ わざと敵に「連鎖攻撃」をさせておく。
A こちらは「おじゃま石攻撃」を準備しておく。
積み上がりを避けるため、上のほうの石を適度に消しながら待つ。
B ある程度フィールド内が積み上がったら「おじゃま石攻撃」発動。
C 攻撃が終了するまでの時間(けっこうある)を利用して、
上のほうにある石を並べかえ、連鎖攻撃も同時にしかける。
D 結果、相手は上下から攻撃(「連鎖攻撃」による下からの突き上げと
「おじゃま石」による障害物落下)を食らって瀕死になる。
CPU戦の場合、この戦法を2〜3回しかけることが出来れば、
8割以上の高確率で勝利を物にできることからも、当ゲームで
最も効率のイイ攻撃の組み合わせだと思われます。
このゲームには、それ以外の攻撃手段や回避手段もありますが、基本
的には上記の戦法に比べてリスクが高く、あまり意味を持ちません。
★第四章『そして全ての仲間へ』★
…第三章で、このゲームの「勝ち方」が判明しました。
僕もハードモードのエンディングに辿り着くまでになりました。
それはそれで嬉しいことですが、同時にハッキリと認識したことが
1つあります。 それは、厳しい言い方ですが、
「当ゲームのシステムは不充分である」ということです。
ご存知の方には耳にタコのできる例え話しですが、
『ジャンケン』の凄さは、そのシステムの素晴らしさにあります。
「グー」を出せば「チョキ」には勝てるが「パー」に負ける危険性を
伴います。 「チョキ」や「パー」を出したときも同様で、
そのどれもが「勝ち」「負け」「引き分け」をキッチリ3分の1
の確率で持ち合わせています。 当たり前だと笑うかもしれませんが、
それを今まで数多く生み出されたゲームに照らし合わせてみると、
その「当たり前」を踏まえてシステム化することがいかに
困難なことかを思い知るはずです。
『くるくるトゥインクル』の「おじゃま石攻撃」は、言わば
「グーを出せば、とにかく無条件に勝率が5割になる」
ようなもので、それが分かったとしたら貴方なら
「チョキ」や「パー」を出すでしょうか?
ユーザーの取る全ての行動に「明確な一長一短と異なる方向性」
があり、「危険を伴う行為は、成功時にそれに見合う見返りが
得られる」システムこそが目指すべき理想の『勝負』であり
『ゲーム』であると僕は考えます。 出来ることの種類が多いことが、
そのまま「豊富な戦術」に繋がるとは限らないのです。 何らかの
「新しいシステム」が、今まであったシステムのバランスを崩してしまう
『蛇足』となる事態は、実に頻繁に発生しているのですから。
その意味では『テトリス』『対戦格闘ゲーム(ハメ部分除く)』等は、
ほぼ理想の領域まで踏みこんでいる作品と言えるでしょう。
ところで正直、初めは少々バカにしながら遊んでいた『くるくる
トゥインクル』ですが、システムの端々に何となく「後付け」した
ような部分を感じます。 それは、より面白いシステムを目指した
制作者の努力の跡かも知れません。 しかし、どんなに過程で努力を
しても、ユーザーに届くのは「結果部分だけ」だということを
プロである全てのジャンルの人間が肝に銘じるべきでしょう。
勿論、僕自身も…
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