プレイステーション用ソフト

『くるくるぱにっく』

販売…クールキッズ     購入価格 1480円



■第一章『くるくるくるくる…』

『くるくるぱにっく』です。

『くるくるトゥインクル』でも『ぐるぐる温泉』でもなく
『くるくるぱにっく』です。

くるくる。

口にするだけで頭が回りそうな単語ですね、くるくる。


制作は、『うずまき』『らせん』も手掛けた
『クルクルキッズ』です。(多分にウソ含む)


…温泉街を舞台に「巫女」やら「バレリーナ」やら
「婆ぁ」やら「ハムスター」やら「偽宇宙人」やら
「銅像」やらが入り乱れて戦います。(ウソ含まず)



■第二章『その中身について』

…まず、ゲーム画面の構成が特殊です。

自分のフィールドが円盤状
と言うところだけ見れば、さほど珍しくはないのですが、
下図のように互いのプレイヤーのフィールドが部分的に
重なっているのは非常に珍しいというか僕は初めて見ました。




…ゲーム的に遊びにくい点もありますが、
この思い切ったデザインには学ぶべき部分が大きいです。

当ゲームには、これ以外にもデザイン的に優れている個所が見られます。



…さて、肝心のゲーム内容ですが、当ゲームの一見奇抜に見える
ゲームシステムも、基本的には従来の「落ち物パズル」と大差ありません。

360度(だいたい7方向)から円盤の中心に向かって落ちてくる
6色の「水滴」を、フィールド全体を回転させることで
着地点をコントロールし、同じ色どうしで「3つ以上」隣接させて
消していくというものです。 「連鎖消滅」もできます。

言ってみれば、従来の「落ち物〜」のフィールドを、
円に沿ってグルリとひん曲げたようなゲーム
が、
この『くるくるぱにっく』なのです。



…従来の「落ち物〜」と異なるのは、水滴の落下中でも、
(同時ではないが)次々と水滴が降ってくることがある点です。

その際は当然、水滴の着地の順番も考慮した
フィールドのコントロールが必要
となるわけです。


…以上の説明だけ聞いていると、けっこう面白いゲームに
感じられるのではないでしょうか、『くるくるぱにっく』。

ところがところが、この結構「良さげ」なアイデアが、
たった一点の仕様によって完膚なきまでに粉砕
されてしまっているのです。 その仕様とはズバリ…

『落下を始めた水滴は、フィールドといっしょに回転してしまう点』です。



…言っている意味が分かりにくいと思うので、
これを従来の「落ち物〜」に当てはめて例をあげてみようと思います。

例えば、『テトリス』『コラムス』『ぷよぷよ』などで、
ブロックの落下が始まるまでに1秒ほどの移動時間があり、
落下が始まったら、もうそのブロックは左右移動できない
というシステムだったとしたらどうなるでしょう?

人によって差はあるとは思いますが、
かなり困難なプレイ状況が想像できるのではないでしょうか?



人間は短時間ではなかなか「最善の策」を導けないものです。

でも、とりあえず物事をスタートさせて、
それが完了する (落下しきる) までに出来るかぎりの工夫を
凝らせるところに、「落ち物〜」の戦略性とアクティブ性、
そしてスリルがあると僕は考えます。

…にも関わらず『くるくるぱにっく』は、
この部分をバッサリ切り捨てたシステムになってます。
(企画ミスというより、恐らく本当はやりたかったんだけど
プログラマの技量不足か何かの原因で出来なかった
のではないかと見ております。 あくまで推察ですが。)


そのため、水滴落下までの短い時間で
フィールド全体を見回して最良の策を練る必要のある、
たいへんに厳しい難易度のゲームに仕上がっています。


…元のアイデアは決して悪いものではないはずですが、それをキッチリとした
「ゲームルール」に仕上げるだけの力量が製作者に欠けていた典型的なケースです。



■第三章『再会と敗北と』

…実は、僕は「当ゲームと同様のアイデア」を、
10年以上も昔に雑誌で見かけたことがあります。

電波新聞社の『マイコンBASICマガジン』という
読者からの投稿プログラムの掲載をメインとした
その雑誌に載せられていた投稿ゲームは、
まさしく『くるくるぱにっく』のオリジナル
と呼ぶに相応しいルールを持つ「落ち物パズル」でした


もうタイトルも覚えていませんが、シャープの「X1」で動くそのゲームは、
『くるくるぱにっく』から細々としたサブルールを取り除き、
フィールドを「円型」ではなく従来の「縦横型」にしたもの

と考えてもらって差し支えありません。

しかも『くるくるぱにっく』の製作者にとっては屈辱的なことに、
そのゲームでは
「落下後もフィールドの回転に関わらず水滴が落下する」のです。


同じアイデアから出発していながら
「アマチュアがシステムを生かす方向でゲームを仕上げ、プロがそれに至れなかった」

という事実は、プロとアマの境界があやふやになったと嘆かれる
現在のゲーム業界を示す「実例」であり、
『くるくるぱにっく』の製作者は「システム構築」という点において、
プロでありながらアマチュアに10年先んじられた上に敗北した
結論づけても決して言い過ぎではないのではないでしょうか?



…この『くるくるぱにっく』に限らず、PS初期のゲームには
「アイデアだけが先行して練りこみが不足している物」が、
とにかく目立ちます。

プロとアマの間をウロウロしているような、中途半端な
制作姿勢を感じずにはいられない駄作が目白押しです。


「思いつき」はアイデアとは言わない。


この、当たり前の心構えを忘れない制作姿勢を、
全てのメーカーが当たり前のように持てる日が来ることを切に祈ります。



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