プレイステーション用


『最終電車』


販売: ヴィジット

プレイ時間 : 全エンディング到達

購入価格: 780円

執筆日: 2006年 10月06日





■第1章 『かまいたち』


『最終電車』は、サウンドノベルです。


『かまいたちの夜』(チュンソフト)が確立した、
実写(あるいはそれに近い)背景の手前に、青い半透明の登場人物を
表示することで、かぎりなく実写に近い雰囲気を出しつつも
プレイヤーの想像力に許容範囲を持たせたシステム。


それを、そのまま流用したゲーム画面となっています。


何らかの形でエンディングに辿り着くたびに、ゲーム内の選択肢が増え、
今までに行けなかったルートを通って、新たな別のエンディングが
見れるようになる、という流れもマンマ『かまいたちの夜』ですね。

オリジナリティという面では、ちとプロ仕事にしては
工夫が足りなさすぎる気がしてマイナスです。



ちなみに、辿り着けるエンディングは10通りですが、
1つの事件から派生した別エンディングもあるため、
『5つのストーリーで、10の結末』といったところです。







■第2章 『良し』


まずは、当ゲームの良さげなところを列挙。




『3Dオブジェクト』

車内などの3Dオブジェクトの表現がうまいです。
うまいというか、雰囲気・質感がちゃんと出ている。

ヴィジットのゲームは全般的にグラフィックの質感が高く、
シックな雰囲気づくりに成功しています。

リアリティを重視するという意味で、
ゲームメーカーとしては稀有な存在ではないでしょうか?




『密閉感』

「高速走行する電車」という身近な密閉空間を
題材にしたのは、面白いと思います。

ホラーはやはり「密閉空間」という舞台があってこそ、ですね。




『路線図』

データセーブ画面で、ストーリーの分岐を「路線図」で表現しており、
統一された表現のアイディアに感心しました。




『通りゃんせ』

あるストーリーで、女の子の歌う
「通りゃんせ」が流れるシーンがあるのですが…

元の歌をエフェクトをかけて歪ませてあるのか、
異様につまらなさそうな覇気の無い歌い方に聞こえて
とんでもなくブキミです。







■第3章 『悪し』


続いて、印象の良くなかったところを…




『登場人物の心理』

このような緊急事態に陥っている割には、主人公たちが
あまりにも冷静かつ理論的に対処しすぎている気がします。

感情移入できない、と言っているのではありません。
世間にあふれる、中高生ぐらいの思考で感情中心に動く主人公の
ゲームにさっぱり一体感を感じられない三十路の僕らにとって、
主人公「石岡」青年の思考は、むしろスンナリなじみます。


とはいえ、場面は緊急事態。

しかも、早い時点から同行するOL「畠山」と小学生「白石くん」も、
負けず劣らずの分析力を発揮。 全登場人物6人のうち半分にここまで
理論的に行動されてしまうと、どうしても「作り物」感が漂ってしまいます。




『内容について』

ホラーとしてもサンペンスとしても、ありきたりすぎる気がします。

メインと思われる「冥界封印編 封印の章」自体も、
あまりにも都合良すぎというか、
「よくまあ、こんなムチャな符合に登場人物が気づいたものだ」
と呆れるというか…

文章も、密度に比べて長すぎて、
どうしても中ダルミが出てしまいます。


上記の「登場人物」にも表れていますが、
おそらく書き手の『大迫純一』さんは、
理論派で、心理学にも多少の造詣をお持ちの方なのでしょう。

とはいえ、それを文章にした時、
話として、ゲームとして遊びやすいかは別問題

文章に長けた方なら、短い文章であっても
エッセンスを盛り込むテクニックをお持ちのはず。
その辺りまで考慮した文章づくりに配慮してもらいたかったところです。


あと、最後に取ってつけたように10年後を語って、
ムリに大河感を出そうとしているのも、ベタすぎてツライです。




『ぶら下がり』

だーかーらー、ヴィジットのゲームはどうして、
句読点やカッコのぶら下がりを放ったらかしにスルノデスカ!
(画面の左端に文字ではなく記号あると、
視覚的に落ち着かない、違和感のようなものを感じること)


見ててイライライライラ…




『舞台設定による弊害』

「電車の中」という状況はたしかに密閉感はあるのですが、
そのせいで画面に変化が無さすぎます。

一応、各車両ごとに発生イベントを固定することで、
かろうじて差別化をはかっているようですが…




『おちゃらけシナリオ』

個人的に、こういうおちゃらけシナリオは勘弁してほしいです。

「笑いがあるから、恐怖もいや増す」、「プレイヤーの箸休めに…」という
思惑から付加されたのだ… という、メーカーに好意的な解釈もできる一方…

単に開発陣が疲れてナチュラルハイになり、変に気持ちが大きくなって、
自分たちの悪ふざけにブレーキが効かなくなってしまっただけ
では?
とも思えて仕方ありません。(実際に、ゲーム開発の現場を見てきた自分には…)


「最終戦隊編」も相当のものですが、
『銀河鉄道編』に至ってはグラフィッカーが仕事を放棄したのでは?
と心配になるほどの殴り書き背景。

中学生がASCIIツクールシリーズで作ったアドベンチャーゲームと
区別がつかない絵柄に、疲れが極まってドーパミンが垂れ流しになった
開発陣の脳状態
を垣間見た気がして、背筋がうすら寒くなりました。







■第4章 『まとめ』


全体としては、『かまいたちの夜』でアドベンチャーの魅力に目覚めて、
そういったゲームならどんな代物でも楽しめる盲目的なユーザー
ぐらいにしか、お勧めできない内容… というのが総合的な感想です。

今まで遊んだこのテのゲーム(といっても10本程度だけど)の中で、
何を見せたいか?が最もボヤけた、印象に残らないゲームでした。



そうそう、「冥界封印編 封印の章」のエンディングのスタッフロール後の、
岩の扉の向こうから光が広がるんだけど、アレは何なんだろう??






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