プレイステーション用ソフト
『シンプル1500シリーズ Vol.48 THE パズル2』
販売…D3パブリッシャー
購入価格 1380円
■第一章『猫にカツオブシ』
…昨年末、「シンプルで斬新なアイディア」「アクションパズル」の2つに目が無い
私のために作られたようなゲームを、雑誌を読んでて見つけました。
アクシスアートアミューズ開発の『THE パズル2』であります。
カラフルでシンプルな画面写真を見ているだけで、
このタイプのゲームに目の無い私の胸は高鳴ります。
記事の載っていた「ファ●ミ通」のライターの評価もけっこう高かったので、
さっそく1500円を握りしめて近くのビックカメラに買いに出かけました。
■第二章『元祖沸きゲー』 ←は『パネルでポン』では?
…みなさんは、テトリスの作者の1人「アレクセイ・パジトノフ」
(愛称パジちゃん)(←見城氏命名)をご存知でしょうか?
そのパジちゃんの作品の1つに『ブレイクスルー(ザ・ウォール)』という
ゲームがあります。 ネット上のフリーソフトで腐るほど目にすることの出来る
『鮫亀』のこと、と言えばピンとこられる方も多いのではないでしょうか?
『THE パズル2』は、見た目やプレイ感覚の点で
『ブレイクスルー』を色濃く引き継いでいるゲームです。
しかし、画面下方から沸いてくる大量のカラーブロックを
「4つ以上ならべて消す」という行為を見るかぎり、
むしろ『パネルでポン』(任天堂)から
派生したゲームという印象を感じます。
…それでは、ルールの概要を。
プレイヤーは、ブロックの並びの中にいる「主人公」を上下左右に移動させる
(このとき、主人公と移動先のブロックとの位置が入れ替わる)ことで
同じ色のブロックを一箇所に集め、4つ以上集まったものをパンチで破壊。
空いた隙間を埋めるように上に積まれていたプロックが落下して、
着地後に自然に4つ以上の並びができれば『連鎖』となって更なる破壊が起きる。
…と言うのが、当ゲームの流れです。
ブロックの最初の破壊方法以外は、まんま『パネルでポン』ですね。
破壊が遅れて、ブロックが画面上部にスクロールアウトしてしまうと、
その量に応じて画面内の水位が上昇。 水位は「連鎖」やアイテムで
下げることができますが、主人公が水に入ると徐々に体力を失います。
そして、体力が0になるとゲームオーバー。
なかなか分かりやすいルールです。
シンプルな作りのおかげもあってか、キーレスポンスはすこぶる快調。
ガンガンと気持ちよく爆発するブロックも心地よく、
初めの5分ぐらいは本当に爽快にプレイできるゲームでした。
■第三章『ところが…』
…ところが中盤に入ると、このゲームの印象はガラリと変わってしまいます。
ブロックが消せず、ぐんぐん水面が上がり、それを下げることもできない、
という場面が多々見られるようになります。
理由は単純で、出現するブロックの色の種類が5つ6つ… と増えてきたためでした。
「その程度で、そこまで遊びづらくなるの?」と疑問を持たれた方の中で
『鮫亀』を遊んだことのある人は、ちょっと思い出してみて下さい。
『鮫亀』のブロックの種類もだいだい5、6つですが、
これを「4つ以上並べられる」場面はけっこう少なかったはずです。
たいていは2、3個ずつをチビチビと消していき、
1つの色を集中して残すことで「大きな破壊」に至っていたのです。
ところが『パズル2』では、「大きな破壊」に至るための「チビチビ消す」という
行為ができません。 最低でも「4つ」ものブロックを必要とするため、
それをそろえること自体が難儀で、連鎖など運に頼るほか無い
といっても過言ではないほどの状況になってくるのです。
ブロックの種類は5つぐらいにとどめ、スクロールスピードなどで
ゲームバランスを取るべきだったのではないでしょうか?
…これ以外にも、上昇してくる「水面」が、
視覚的部分でゲームを遊びづらくさせています。
水面は「青い半透明」で表現されているのですが、
当ゲームには「赤」と「紫」のブロックが存在します。
勘のイイ方はもう気付かれたのではないでしょうか?
そう、「赤いブロック」が水面下に入ってしまうと、
まるで「紫ブロック」のように見えてしまうのです。
これは極端な例としても、水によるブロックカラーの変化が不条理なミスを生み、
瞬間的な判断を必要とする後半ステージでのヤル気をそぐ
要因の1つとなっていることは確かです。
…また、「取った得点の倍率を上げる」といったお馴染みのアイテムがブロックの中に
混じってくるのですが、一度でもブロックを壊すと「初期値に戻ってしまう」ため、
無理に取りに行くほどの魅力を感じません。
アイテムは、ただの「そろえても消せないブロック」になり下がり、
プレイテンポはますます悪くなっていくのです。
…以上の難点から、このゲームに欠けていた「大切な要素」が見えてきました。
このゲームに足りなかった物、それは『長期的戦略』です。
たしかに、昨今の複雑化するゲームシステムに疲れたプレイヤーたちは、
「シンプルで分かりやすいルール」の作品を求めています。
しかし、それは決して「短絡的で底の浅いルール」を求めたわけではありません。
「単純だから、短い時間でパッと遊べる。 でも、また何度も遊びたくなるゲーム」
に仕上げるためには、『長期的戦略』の要素は必要不可欠と断言できます。
近年、「シンプルなルール」を売りとするゲームは世に溢れていますが、
そのほとんどが、この事実を踏まえたゲーム作りをしていない点を
情けなく思います。
私は10年以上前、社会に出る直前というベストの時期に、
『テトリス』という偉大な作品に出会えたことを深く感謝しています。
『テトリス』こそ、一見シンプルながらもキッチリと『長期的戦略』を備え、
それらの大切さを私に実感させてくれた最初のゲームだったからです。
もし、これをお読みのアナタが、シンプルなゲームの企画をたてる立場になったときには、
迷わず『テトリス』を遊び、そこから学ばれることをお勧めします。
■第四章『我々はこの男を知っている』
…ところで、このゲームをプレイした人の中には、当ゲームがナムコのあるゲームと
非常に良く似た雰囲気を持っていることに気付かれたのではないでしょうか?
そう。『パズル2』のテイストは
『Mr. ドリラー』ととても似た部分があるのです。
単純に「カラーブロックを掘る」「酸素が生命線」といった
システムに関してのみの話ではありません。
両者は、その『長期的戦略が存在しないため、
長時間プレイがダレる』という点で似かよっているのです。
その場その場を瞬間的な判断で切り抜けるアクション性の楽しさはあっても、
より高度なプレイ(「なんらかのサブ行為が高得点につながる」
「後半のプレイを考慮した布石を前半のプレイで用意できる」などなど)を目指せる
「システム的な奥行き」に欠け、工夫の余地に乏しいプレイ。
製作者は『短い時間で遊べるゲーム』を目指したのかもしれませんが、
結果として『長い時間は遊びたくないゲーム』に
なったのだとしたら、これほど皮肉なことはありません。
単純なアクションパズルを意図して作られた両者は、
奇しくもその弱点においても似かよい、
それを克服できぬまま商品化されたケースと言えるかもしれません。
…今、多くのメーカーが、シンプルな作りのゲームを作る姿勢を見せています。
理由の多くは「ゲーム製作にお金がかけられない」という悲しいものですが、
本質を見つめなおすという意味では有意義な状況であるといえます。
しかし、だからこそ、そのようなゲームを作る全てのクリエイター(特に企画の方)に
肝に免じてほしいことがあります。 それは…
『シンプルかつ遊べるゲームの制作は、ある意味、
大作RPGに匹敵する「企画力」を必要とする』ということです。
この手のゲームは、数々のデコレーションや既存のシステムの流用などで
誤魔化せる部分が少ない分、あなたがたの「実力」が顕著に現れますから。
これを読まれた方の中でプロの企画者がいらっしゃるのなら、自分の実力を試す意味でも
「シンプルで遊べるゲーム」の企画書の提案をお勧めします。
あなたに本当の実力があるのなら。
戻る