プレイステーション用ソフト

『THE ブロックくずし』


販売 D3パブリッシャー (開発 TAM SOFT)   プレイ時間 :「オールクリア」

購入価格 480円                  執筆日:2003年 4月5日





■第一章 『名作から名作へ』


『THE ブロック崩し』(D3パブリッシャー)は、
古典的名作『ブロック崩し』に、
現代風のアレンジを施したアクションゲームです。




「ブロック崩し」は、『あらゆるゲームの基礎』とも言われ、
過去にも何度かリメイクされた原典中の原典です。


80年代中ごろにゲームセンターに登場した『アルカノイド』(タイトー)は、
(多分)初めて『自機のパワーアップ』『ブロックの耐久力』
『ステージごとに特色ある攻略を必要とするブロックの並び』

という要素を盛り込んだ、秀逸なアレンジゲームです。


また、プレイステーションソフトの『プリズムランドストーリー』(ディークルーズ)は、
『自機やボールが、様々なパワーアップをする』ことで、
通常では予想もしないような豪快で多彩なステージクリアに至れる
逆転性の高さが光る秀逸ゲームです。


自機の基本性能に着目したのは、
00年初期にゲームセンターに登場した『ガンバリッチ』(彩京)
ボールを打ち返す部分が「板」ではなく、
ピンボールの『フリッパー』になっている
ため、
ボールの反射方向をあやつれる自由度の高さでは筆頭でしょう。





…今回紹介する『THE ブロック崩し』は、丁度、
「ブロック崩し」『プリズムランドストーリー』
中間辺りに位置するゲームです。

次章で細かなシステムを考察しますが、
最初に結論から言っておこうと思います。



「驚きました。」



原典の雰囲気をキッチリと残しつつリメイクされたゲームの中では、
『THE ブロック崩し』五指に数えられるべき
秀逸なアレンジ作品である
と、僕は断言します。






■第二章 『システム』


…それでは、当作品のシステムを細かく見ていこうと思います。



■自機(パッド)の基本性能■


…ボールを打ち返す主人公です。
パワーアップで横幅が広がり、ボールを受けやすくなります。
(まれに、『ボールをキャッチして、好きなときに打ち出せるパワーアップ』
もしますが、できるステージはごく少数です。)


「○ボタン」を押している間、移動スピードが速くなりますが、
細かい位置調整は難しくなります。
(『コンフィグ』の設定で、上記とは逆に、普段は速く、
「○ボタン」を押している間だけゆっくり移動するようにもできます。)




…ボールに接触することでこれを打ち返しますが、
この時、自機が移動していると、
ボールの反射方向を微調整することができます。

『ボールの左右の動きに合わせるように打ち返すと、
ボールの速度が増し、角度が浅く(水平に近く)なります。』


逆に、『逆らうように動いて打ち返すと、
ボールはゆっくりに、角度は垂直になっていきます。』






■スカッシュ■


…当作品のオリジナルアイディアです。

ボールが自機に接触する直前に「×ボタン」を押すことで、
一定時間(1秒ほど)『ボールに貫通力』が備わります。


この状態になると、
どんなに耐久力の高いブロックでも一撃で破壊し、
しかも、跳ね返らずにそのまま突き進みます。

さらに、使用回数の制限一切無し。
いつでもどこでも、ガンガン発動させることができます。



…ただ、1秒ほどしか持続しないので、
ボールが遅かったり壊したいブロックが遠くにある場合は、
届く前に能力切れになってしまうので工夫が必要です。
(なお、元々破壊不能の『黒ブロック』だけは破壊できません。)





■ボールの発射■


…スタート直後や、ミスした直後などは、
ボールが自機の中心にセットしなおされ、
何かボタンを押すまで発射されないので、
自分の好きな場所にボールを打つことができます。


基本的には右ナナメ上に撃ち出されますが、
自機を動かしながら発射すると、
自機の『方向・速度』がボールの動きに上乗せ
されるため、
角度の深いボール・左方向へのボールなどを
自在に撃ち出すことが可能です。





■画面揺らし■


…「L・Rボタン」を押すことで、
いつでも、瞬間的に画面を左右に揺らすことができます。

これを、ボールが壁やブロックに触れている瞬間に行なうと、
ボールの反動を強めたり弱めたりでき、その結果
ボールの横方向のスピードを微調整することができます。

従来、ボールが自機から離れて帰ってくるまでの間は、
『結果待ち』のための時間でありましたが、
当作品にそんな手持ちぶさたは存在しません。


…また、壊れないブロックや壁の中に囲まれたボールが、
延々と同じループを繰り返す状態に陥ったときの
脱出手段としても使えます。





■防御壁■


…当ゲームの前半のステージでは、
最初から最下段に『防御壁』が設けてあり、
自機がボールを取り損なっても、その後ろの防御壁に
はね返されてボールが生還するようになっています。

ただし、リカバーに使用された部分の防御壁ははがれてしまい、
次のステージに行くまで復活はしません。


…防御壁は、横1列に4〜8枚並んでおり、当然、
枚数が少ないほど、1ミスで広範囲の壁が無くなってしまう
ので、難しくなります。








■第三章 『秀逸なブロック配置』


…もちろん、以上のシステム自体も、
互いをほどよくブレンドし合ってバランスが取られた
丁寧な仕事です。


しかし、これだけでは逸品と呼ぶには方手落ちです。


当作品の素晴らしさは、上記システムを十分考慮した
『ステージのブロック配置』
と組み合わさってこそ、その真価を発揮するのです。




…このゲームのブロック配置は、
従来の「ブロック崩し」と同様の戦い方でも
何とか突破できるバランスに仕上がっています。

『自機を移動させて打ち返すことによって、
ボールの反射角を微調整できる』
ため、
根気さえあれば、あらゆる局面に対応できるからです。

ただ、そんな戦い方では、プレイに時間がかかるし、
爽快感も今1つなのは否めません。



…しかし、
『スカッシュ』を活用し始めると、当ゲームの印象は
『よりスピーディで豪快』なものへと激変します。

何しろ、画面の下部までブロックが張り出してきているような
息苦しいステージでも、『スカッシュ』を連発することで、
ほとんど『穴掘りゲーム』のような手軽さで
大量のブロックをえぐり進めるわけですから
爽快感がケタ違いなのです。


先に説明したように『スカッシュ』には制限時間があるため、
ブロックが下段に集中してくれているステージは、
むしろボーナスステージ。

自分が遊んでいるゲームが
「ブロック崩し」なんだか「シューティング」なんだか、
分からなくなること請け合いの心地良さです。


そして当ゲームのブロックは、
そんな『スカッシュ』の快感を楽しみやすく、かつ、
攻略の手段となるように、実にうまく配置されているのです。




…また、良ーくブロック配置を観察してみると、
ある場所では、「スカッシュ」よりもむしろ
『通常ボール』で攻めたほうが効率がイイ場合もあるのです。

例えば、
『耐久力の高いブロックが
弱いブロックを囲むように配置してあるステージ』

では、外周を「スカッシュ」で壊してしまうよりも、
『通常ボール』のままで外周の切れ目から中に入れたほうが、
中でボールが大暴れしてくれて高得点につながります。



『ボールを跳ね返すときの自機の動き』『壁揺らし』
などのテクニックを駆使すれば、
ボールの角度を厳密にコントロールできる
当ゲームならではの
『狭い入口を設けたブロック配置』も見られます。




…絶妙な場所に配置された
『アイテム』『黒ブロック(破壊不可能)』も、
そのステージの方向性をより明確にしています。

『○○に穴を開けて、中にボールを入れ込めばクリアしたも同然』
『「●●⇒○○」の順でアイテムを取りに行けば、
「○○⇒●●」よりも効率がイイ』
などなどなど…

やり込むほどに見えてくる制作者からのメッセージには、
良質のパズルゲームのソレと同じもの
感じずにはいられません。





…ステージの方向性を見極め、
そのための戦い方を自分の反射神経で作り出す。


そのアクティブなプレイが醸し出す快感。


これぞ、『ゲーム』です。

このソフトには、『修得の喜び』にプレイヤーを導き、
そして応えるだけのが込められているのを感じました。






■第四章 『重箱の隅』


…最後に、細かいですが
当ゲームから感じられた不満をチラホラ。



…まず、
『黒ブロックの当り判定が大きいような気がする』点。

気のせいかもしれませんが、ボールが「普通のブロック」と
「黒ブロック」のちょうど中間辺りに当たったとき、
『黒ブロックに当たったことになるケース』が
多いように感じる
のです。

プログラム的に、
先に『黒ブロックとの当り処理』を見に行っているのかなー?
…と、ちょっと勘ぐってみたり。




…あと、『コンボによるボーナスが膨大すぎる』ようです。

コンボは『短時間で連続してブロックを壊したかどうか』
だけを判定基準としているため、
「スカッシュを連発するステージ」や、
「ブロックが狭い部屋を形成しているステージ」では、
苦も無く高得点が入ってしまいます。

『ステージ自体のトータルバランス』と
『得点』がかみ合っていないのが残念でした。





それと、追加要素として、
『好きなステージを1つ選んで、どこまで高得点が取れるか?』
に挑戦できるモードがあると、
さらに良かったなーと思いました。




…とは言え、久々に
キッチリと筋が通った『作品』に出会えたのが
嬉しくてたまらない、そんな今の僕なのです。




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