プレイステーション用ソフト
『通天閣』
販売…ソニー ミュージックエンタテイメント
購入価格 980円
■第一章『あれから17ヶ月』
…PS初期の作品のヒドさを、
どれだけの方々が覚えておいででしょうか?
当時、数多(あまた)の ゴミが
表現に問題を抱えた作品がPS上でリリースされました。
…どんなヒドいゲームでも、
制作のための資金は製作者が捻出しているわけですし、
出来に対して他人である私がとやかく言うのは
筋違いだということは重々承知しています。
しかし、市場には「ユーザーからの信頼」という
目に見えないパラメータが常に絡んでいるのです。
一部の人間が適当な駄作を排出することが、
後々、業界全体にどんな悪影響を及ぼすかという当たり前のことを、
どれだけの製作者が真剣に受け止め理解しているのでしょうか?
…何かよく分からないけど とりあえずゲーム業界は
手軽にビッグになれそうだという思い込みから、
中途半端な自己顕示欲と思い上がった自信を小脇に抱え、
理論もへったくれもなく、若さだけを原動力に、
分析も推察も推敲もせずに勢いだけで吐き出した
何処を楽しめばイイのか製作者に詰問せずにはいられぬ
「作品」と呼ぶのもおこがましい、ゴミを
「ゲーム」と銘打って流通させる奴らのブ厚い『面(つら)の皮』を
CTスキャンで拝見してみたいものですな。
…いや、申し訳ない。 ついつい熱くなってしまいましたね。
今回紹介する『通天閣』は、そんなPS初期に販売された
面(ツラ)の皮の厚いゲームの1つです。
正直、購入時(2000年5月)に批評を書いて、
開設したばかりの当HPで糾弾しようと思ったのですが、
当時の私の稚拙な文章力では、このゲームの「魅力」を
余すところ無く表現するのは不可能であろうと考え、
今日まで機会を伺っておりました。(←なんと奥ゆかしい)
今、満を持して御紹介できることに無上の喜びを感じております。
伝説のゴミゲー『通天閣』。
その魅力を存分にお楽しみ下さいませ。
■第二章『美麗! OPムービー』
…まずは礼儀として「OPムービー」を拝見いたしましょう。
ライトアップされた夜の大都市『大阪』上空を、
主人公の乗った哨戒ヘリが飛行しています。
当時としては結構イケてるポリゴン映像だと思います。
カメラ視点は上空をフラフラ飛ぶヘリを追いかけたまま、
主人公と管制室との会話が始まります。
以下が、その内容です。
ただし、サンプリングによる音声の劣化が激しくて
聞き取れない部分があり、そこは前後の会話から
推察して書かれております。
また、文章では分かりませんが、
関西人に聞かれたらブン殴られそうな
メチャクチャなアクセントで語られています。
主人公『こちら「ランプリン(?)−001」。
えらいこっちゃー。 なんや大阪の上空に
トンでもない物が飛んどるらしいでー。』
管制室『アホー。 トンでもない物が飛んどるて何やー。
トンでもない物は飛んでないからトンでもないちゅうのに、
トンでもない物が飛んどるて… もぉ、ええわいっ。』
:
:
:
正直、自分の耳が壊れたかと思いました。
その次に、耳から入った音声を認識する
脳のほうが壊れたのかとも疑いました。
しかし、そのどちらでもなく、この音声は間違いなく
ゲーム画面から聞こえてきたものだったのです。
この台本を最初に読んだときの
声優さんの絶望感は察するに余りあります。
こんな「サムいセリフの仕事」でも引き受けなければならない
我が身を呪い、涙で枕を濡らした夜もあった事でしょう。
自分の中の迷いを振り切るが如く熱演する様には、
痛々しさすら感じられます。
…で、主人公は、大阪上空に浮かぶ不思議な飛行物体3機に
ヘリで接近していきます。
これらの物体は、実は異空間『ディープ大阪』からの使者(?)で、
大阪のシンボルである
[かに道楽のカニ]
[えび道楽(?)のエビ]
[道頓堀の食い倒れ人形]
をアレンジしたメカデザインになっているらしいのですが、
たいへん中途半端です。
元ネタを無視した甚(はなは)だしいアレンジの割に、
大してカッコ良くもないのです。
…何と申しましょうか、
「このゲームはギャグ仕立てなんですよ」と
企画者に言われたデザイナーが、
「ギャグとかそういう安っぽい仕事って
僕的にプライドが許さないんですよね」とか
実力もろくに無いくせに思い上がりやがって
勝手に自分好みのデザインにしてみたものの、
ヘボい実力が祟(たた)って
時代と少ーしばかりズレていたせいで、
えもいわれぬ物体に仕上がってしまった感じ、
と言えばご理解をいただけるでしょうか?
「どっち付かずほどカッコ悪いものは無い」
という言葉を具現化した好例として
記憶にとどめておきたいものです。
…そんなデザインの物体ですから、
管制室の『何が飛んでいるのか?』という問いに答えた主人公の
『そやなー、強(し)いて言うたら、
カニが1匹、エビが1匹、人形が1体…』
というセリフが完全にスベっています。
事前にマニュアルを読んで飛行物体の元ネタを知っていなければ、
緊急事態のせいで主人公の気がふれたと言われても
違和感が無いほど画面と噛みあっておりません。
無残です。
…その後、ヘリに乗った主人公が、3体の飛行物体と共に
並んで飛んでいくのんびりとした映像が流れます。
実はそうではなく、主人公が飛行物体に誘導されて
連れ去られていく衝撃の瞬間なのですが、映像を見る限り、
優雅なランデブーとしか思えないのです。
稚拙なカメラ演出を補おうと、
声優さんの死に物狂いの演技がくりひろげられます。
主人公『あ、あかんっ。 操縦桿、言うこと聞けへんっ。
お、お前ら、何者やっ。
う、うわーー、連れて行かれるーーーっ。』
…セリフを聞いているだけで、
何が起こっているのかがとても良く分かりますね。
「小学生レベルの頭の人でも理解できるように」との
製作サイドの配慮でしょう。
…どっちが小学生レベルかは別として。
■第三章『衝撃! ゲームスタート』
…OPを見て グッタリしたところで
本編への期待も高まったところで、
いよいよゲームスタートです。
主人公は、自分を連れ去った3機の飛行物体の中の1機に乗り込み、
異世界『ディープ大阪』で戦うことになります。
「なんで?」とか聞かないで下さい。
私も上の文章を書いてて、わけが分からなくて
気がふれそうになったんですから。
それぞれの機体の特徴は、以下のとおりです。
★カニ
…正面と左右斜め前方の、計3方向にショットが撃てます。
ショットパワーがかなり弱いので、
辛いでしょうが頑張って撃ちこんで下さい。
マゾな方にお薦めっ。
★エビ
…ボタン押しっぱなしで極太レーザーが撃てます。
と言うか、極太レーザーしか撃てません。
したがって左右がガラ空きになります。
正面からの敵弾も見えにくくなります。
と言うか見えません。
予知能力で避けて下さい。
エスパーにお薦めっ。
★人形
…ショットの横幅が広く、けっこう連射もききます。
でも、そのせいで画面の混乱度も高く、
ショットパワーも帯に短くタスキに長い感じで、
どっち付かずでイライラします。
ギャルゲーの主人公にお薦めっ。
…この選りすぐりの3機の中から、
あなたのベストパートナーを選んで下さい。
選びたくなくても選んで下さい。
ゲームが始まれば、この自機選択よりもっと辛い試練が
アナタを待っているのですから。
■第四章『戦慄! 戦場報告』
…それでは、各ステージを順を追って解説していきましょう。
★ステージ1 『ディープ梅田』
…最初は『カニ』を選択して出動することをお薦めします。
と言うのも、『カニ』の発進基地が梅田の高層ビルなのですが、
なぜか、このステージの敵の本拠地が同じビルで
当ゲームの間抜けぶりをいきなり体感できて得だからです。
しかし作ってて気付かなかったのでしょうか、製作者の方は。
わけ分かりませんね。
★ステージ2 『ディープ大阪城』
…『大阪城』と言いつつ、どこにも大阪城が出ません。
海上での戦いだし。
わけ分かりませんね。
★ステージ3 『ディープ道頓堀』
…テレビがボスです。
わけ分かりませんね。
戦いが長引くと、画面3分の1はあろうかという巨大な「腕」が現れて、
自機に「つっこみチョップ」を食らわせます。
当たればもちろん死にます。
…ステージ後半に入ると、『ドラゴンスピリッツ』(ナムコ)で出てくるような
巨大昆虫が敵として登場します。 そろそろスタッフも、
大阪のパロディを作るのがイヤになってきたのでしょうか?
★ステージ4 『ディープ四天王寺』
…『デンジャラスシード』(ナムコ)みたいな、
画面半分ほどもあるジャマくさい中ボスがぞろぞろ出ます。
中国かどっかの壺みたいなデザインのやつらです。
わけ分かりませんね。
★ステージ5 『ディープ通天閣』
…同じような敵の構成が、延々10回ほど繰り返されます。
スタッフが敵配置を考えるのに飽きたのでしょうか?
ステージ最後にいる、金色の宇宙人みたいなヤツ
(通天閣内に実在する『ビリケン様』という像だそうです。 とほほほ)
(能力:回る・笑う・「行くで」と言う)
をブチかませばゲーム終了です。
…お疲れ様でした。 本当に本当に心から、お疲れ様でした。
■第五章『感動! 平和再び』
…ふと気付くと、主人公はヘリに乗ったまま、
もといた大阪上空をゆっくりと飛行していました。
主人公の機体との通信が回復して、
再び管制員のサムいギャグを聞かされる羽目になります。
でも、とりあえず丸く収まったので2人は高らかに笑い合います。
あっはっはー
あっはっはっはーー
…その笑い声は、やっとサムい仕事を終えることが出来た
声優さんのあふれる喜びを表すかのようです。
…さて、最後に総評を。
ハッキリ言って、ありふれたシステムに、
自己満足レベルのパロディが付加されただけの、
悪い意味で『同人的』なゲームだったと言えます。
当ゲームから感じられるC級ぶりは、
「パロディ」という物がイメージ (あくまでイメージ) として
持っている「安っぽさ」が原因では決してなく、
それを貫けなかったという中途半端さにこそあると思うのです。
「パロディ」ひいては『笑い』というものをなめてかかった
製作サイドの姿勢が、そのままゲームの出来に
反映されたのではないでしょうか?
あるいは、お笑い路線を目指しながらも
心のどこかで「お笑いは低俗なものなのでは?」と迷い、
他人の評価を恐れて自分を貫けなかった結果、
こんなお粗末な代物が出来てしまった
…と考えるのは邪推でしょうか?
…物を制作する上で「熱意」や「勢い」は大切な要素の1つです。
でも、下積みの無い「熱意」はカラ回りし、
方向が定まらない「勢い」はただ迷走をくり返します。
そういったゲームが、
PS市場の初期になんと数多く存在することでしょう。
…そんな中途半端なアマチュア根性で形にしたものを
「とにかく制作費を回収したい」という
自分勝手な薄汚い欲望にまかせて市場に流し、
ユーザーから金をかすめ取るという行為の厚顔無恥さに
一日も早く気付いて下さいバカの皆さん、と申し上げたいですね。
厳しい物言いかもしれませんが、
これぐらいハッキリ言ってやらないと
分かってくれないんですよね、バカは。
でも、この手のバカは、ハッキリ言ったら言ったで
今度は逆恨みして異常な報復手段に転じるから困りものです。
バレエの実力で勝てないからといって、相手のトウシューズに画鋲を入れて
一矢報いたつもりになっているような人間があふれるこの日本ですけど、
良いゲームシステムを探求なさっている皆さんには、
このようなバカに負けることなく戦いつづけていただきたいものです。
1ユーザーとして切に願います。
…ちなみに当ゲームのBGM制作は、
『パンツァードラグーン』(セガ)で有名な東さんです。
でも、彼の作品とは思えないほど荒れた曲調なのは、
ゲーム内容にビックリして、キーボードを弾く指 (…と制作意欲) が
痙攣(けいれん)してしまったからではないかと
幾分、本気で心配している私です。
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