プレイステーション用ソフト
『ふしぎ刑事(デカ)』
販売…カプコン
購入価格 友人から借りる
■第一章『化け物島』
…当ゲームについて、「遊んだことは無いけれど名前ぐらいは知っている」と
おっしゃる方は、とにかく奇抜なキャラが出るゲーム
らしいという事だけはご存知だと思います。
そんな皆さんに、登場キャラの一部を紹介いたしましょう。
太ったコウモリの胴体から人間女性の艶かしい手足が生えている酒場の歌姫『姐さん』。
星型の服(カラーリングは囚人服)にスッポリと身を包み、
感情表現は手に持った板に描かれた顔で表現する『謎人物』。
ハートに羽が生えたやつを左右半分にちぎったような2匹の生き物。
二本足で歩く爬虫類のような外見で、口を開くと中からもう1つ
クチビルが伸びてくる酒場のマスター『テナ』。
山の頂上で巨大な岩を持ち上げて「ふん」とか「くっ」とか
言いつづけてる不気味な小人。
…などなど、単に「奇抜」という言葉で片付けられない、
製作者の心の奥底を目の当たりにしたような
不気味さすら漂う怪キャラのオンパレードです。
ちなみに私は、「稚拙な会話表現」と「一途さ」が愛らしい
『パンプティ=ダンディ』がお気に入りであります。
■第二章『これ以降はネタバレがあるので注意』
…これから書く内容には「ネタバレ」が含まれております。
結末を知りたくない人はブラウザの「戻る」ボタン等で
お帰りになることをお勧めします。
…大丈夫ですか? いきますよ? では、どうぞ。
…さてさて、これらの奇抜でクセのある登場人物たちの住む
「ふしぎアイランド」で、一体何が起こるのでしょう?
なんと殺人事件が起こるのです。
しかも殺されたのは、主人公『ふしぎ刑事』の
昔の同級生『カワイコちゃん』というハードな状況からのスタート。
…プレイヤーは、助手である『ネコニャ』と共に、
この難事件の解決に乗り出します。
と言っても、プレイヤーはほとんど推理する必要はありません。
周りの住人が、これでもかと言わんばかりに
露骨なヒント(次に行くべき場所)を教えてくれるからです。
それでも分からないときは『ネコニャ』と話すことで
さらに露骨なヒント(と言うより答え)が貰えるのでノープロブレムです。
困ったときは相談コマンド(by エスパードリーム)です。
…以上のことからご推察の通り、当ゲームは一見すると推理AVGですが、
その実は完全な「おつかいゲーム」で、行ける場所が10ヶ所程度という
控えめなボリュームも手伝って、非常にスピーディな展開になっています。
ゲーム中の選択肢をミスして主人公が死んでしまっても
『ドラクエ』以上の手軽さとノンペナルティで復活できます。
犯人のしぼりこみも簡単です。
何しろ、犯人以外の人たちがバコバコ死んでいくのですから。
最後に残ったやつが犯人に決まっています。
事件解決へ一直線です。
…解決と言えるかどうかは別として。
…さて、いよいよ事件も大詰めに至り、
なんと殺されたはずの『カワイコちゃん』がどこかで生きているという
トンでもない事実についての、たしかな「証拠品」が手に入りました。
そして、『謎人物』といういかにも怪しげなヤツが本当に犯人だった
という身も蓋(ふた)もヒネリも無い事実も明らかになります。
彼に誘拐された『ハンサムくん』(キザで嫌なやつ)を救うために、
『謎人物』の家に乗り込む主人公「ふしぎ刑事」。
『謎人物』のダブダブの服の下から現れた彼の正体は!?
なんと、殺されたはずの『カワイコちゃん』でありました。
この「ふしぎアイランド」で『ハンサムくん』と
2人きりで生活したかったというのが犯行の動機。
いやがる『ハンサムくん』の気持ちなどお構い無しです。
自分の死を偽装したのは、かつての同級生『ふしぎ刑事』の
高い推理力を警戒しての目くらましであったと言うのです。
…でも、ちょっと待って下さい。
たしかに『カワイコちゃん』がどこかで生きているという情報は
聞いていたものの、彼女の死は、ゲームスタート直後に『ふしぎ刑事』の
信頼できる助手『ネコニャ』の手によって確認されていたはずです。
「確かに心臓も呼吸も止まっていたはずだ」とうろたえる『ネコニャ』に、
不敵な笑いを浮かべて真実を語る『カワイコちゃん』。
「ジツハ、ワタシハ『カワイコチャン』ニヨッテ
ツクラレタ「ロボット」ダッタノデス。」
な、成程ー。 だから、心音も呼吸も無かったわけかー。
そしてロボットからは、さらに驚愕すべき真実が告げられました。
「ホンモノノ『カワイコチャン』ハ、
ズット イゼンニ シンデシマッテイタノデス。」
:
:
:
あのー、では私の手元にある「『カワイコちゃん』が生きている」という
情報の「証拠品」はどうなるのでしょう?
あれだけ劇的に入手した「証拠品」だったのに…
コレってシナリオのチェックミスではないんですの?
しかし、そんなクレームを訴える暇(いとま)も与えぬ勢いで、
『ハンサムくん』もろとも愛の爆死心中を図ろうとする『カワイコちゃんロボ』。
『ふしぎ刑事』と『ネコニャ』以外ではただ1人の
「ふしぎアイランド」の生き残りでもある彼を助けるため、
『ロボ』を狙撃して機能停止させる主人公。
主人公に心から感謝する『ハンサムくん』。
キザでイヤな所もあったけど、けっこう素直で
愛せるヤツかもな『ハンサムくん』… と、和んだ瞬間、
倒したと思った『ロボ』が再び起き上がり、
いきなり『ハンサムくん』に抱きついて自爆装置を再起動させました。
もはや手遅れ。
泣き叫んで助けを請う『ハンサムくん』を置き去りに逃げる、
主人公と『ネコニャ』。 爆発炎上して崩れ落ちる館。
「ふしぎアイランド」の住人、全員死亡という、
あまりにもあんまりな結末をもって、事件は終了したのです。
■第三章『愛って何?』
…当ゲームは、「奇抜」な中にもどこか「のどかさ」を持った
キャラクタを使用しながら、その内容は富野監督ばりの
「登場人物皆殺しストーリー」でありました。
「B級をねらった作り」との好意的な見方もできますが、
ストーリーとキャラクタの相性の悪さや、物語中の矛盾点を考慮すると、
「もしやC…」との思いも否定できません。
エンディングで『ネコニャ』が、「愛って何? 他人を傷つけてでも
手に入れたいものなの? そんな愛ならネコニャは欲しくないにゃ。」と、
変にシリアスに締めくくっているあたりに、ゲーム本編の「殺伐としたストーリー」と
「おちゃらけキャラ」の相性のチグハグさの総決算を見た思いです。
…総評ですが、ゲーム自体には「非常に手馴れた作り」が見られ、
製作者サイドの技術力と経験の高さが感じられます。
細かなサービスも行き届いており、商品としてのクオリティは十分でしょう。
とは言え、『奇抜なキャラクタ』と『連続殺人事件』という
パーツの組み合わせ(あるいは組み合わせ方)に改善の余地が無かったか?
…と考えると「NO」と答えざるを得ないのが正直な感想です。
『1+1は必ずしも「2」にはならない』という、
作品作りにおける戒めを再認識させられるという意味において、
『ふしぎ刑事』は、学ぶところの多いゲームでありました。
戻る