プレイステーション用


ブレイヴフェンサー 武蔵伝』


販売: スクウェア

プレイ時間 : クリア1回

購入価格: 480円

執筆日: 2006年 09月27日





この批評の原文は、2005年11月に書きました。



■第一章 『良し』


『ブレイヴフェンサー 武蔵伝』(スクウェア)は、3Dジャンプアクションゲームです。

主人公「武蔵」が、連打がきく『雷光丸』と、
一撃が強い『レイガンド』の二刀流を武器に、
『ジャンプ』を駆使して冒険する、そんなアクションゲームです。

早速ですが、当ゲームの良し悪しを列挙してみましょう。




『様々な見せ場』

全体的に、見せ場の多いゲームだと思います。

クッキリとした分かりやすい色合いで表現されたキャラクタや、
場所ごとに特徴のある風景オブジェクト、
敵ごとの独自のアクション、我の強い登場人物たち、
時刻によって刻々と変化する背景の色あいの美しさと、効果音・BGM。


それらの要素が、プレイヤーの心に少しずつ
『臨場感』『思い出』を植えつけてくれて心地良いです。




『マップ構成の上手さ』

当ゲームのマップ自体は決して広くないですが、
場所ごとの特徴分けや密度の高さのおかげか、狭さを感じさせません。

毎回何らかの発見があるように綿密に練られている感じで、
うっかりジャンプミスした落下先に、それを慰めるようにちょっとした「お宝」が
隠してあったりするあたりには、姑息さと職人芸の両方を見る思いです。

『スルメのような味わい』のマップです。




『BGMと効果音』

水際なら「水がはねるような足音」
配管の上なら「金属板が響くような足音」を使って、
自然に『臨場感』を演出しているのは見事です。

また、全体的に壮大で元気なBGMは、プレイしていて大変心地良いです。
ループして聞いていてもなかなか飽きない巧みさが、この楽曲にはあります。

作曲者は『関戸 剛』さんか… メモメモ。

(ネットで調べてみたら、以前はコナミで作曲なさってた方らしい。
あの『スペースマンボウ』(キャ〜)の作曲もされたとか。 うむー、色々と納得。)





『レベルアップ』

主人公の能力は「4種類」あり、
各能力は個々にレベルアップしていきます。

まず、2本の剣、『雷光丸』『レイガンド』にはそれぞれにレベルがあるので、
自然と両方を使うようになり、自然と両方に慣れていけます。

歩いた歩数によって上がっていく『防御力』は、
色々な場所の探索を前提とした当ゲームにとっての弱点である
『同じ場所を何度も行き来する行為』にまで意味を持たせており、見事です。
(ちと「姑息さ」すら感じますが)

また、『リミットレベル』というシステムがあり、
例えば物語の第一章が終わるまでは、4つの能力のレベルは
それぞれ「8」までしか上がりません。

一部の能力が突出したり、物語序盤でレベルが上がりすぎて
相対的に敵が弱くなるのを防いでいます。





『城の人を助ける』

序盤にさらわれた30人近い『城の住人』を探して助ける事が、
ゲームのサブ目的になっています。

サブとはいえ、彼らを助けるたびに
主人公のパラメータ上限が延びるので、軽視できません。
また、彼らを助けなければ物語が進まなくなるなど
メインに絡んでくる場面もあります。

助けた事でBGMが豪華になるなど、
福利的な効果を発揮する者もいて面白いです。


この、『助けた人が後々の冒険の役に立ったり、自分の能力上昇に関わる』
というシステムは、クインテット社の作品と似た楽しさがあり、個人的に好きです。




『ゲットイン』

当ゲームの「売り」の1つですが、どちらかと言えば
『なぜか今まで覚えたテクニックでは突破できない場面』
での対処法となることが多く、使用箇所も限られているので、
ユーザーの裏をかいたスパイス的意味合いとして使われている感じです。

毒を吐く敵の前後に「ゲットインで解毒作用を発揮する敵」を
配置してあるなど、心憎い隠し要素がちりばめられていたりもします。







■第二章 『悪し』




『振り回され感たっぷり』

主人公の基本的な行動が「村人が依頼するお使い」なのは、
アクションゲームとしての流れ上、ある程度仕方が無いと思いますが…

攻略すべき「地形」「迷宮」自体が、いかにも
『ジャンプゲームの基本問題 → 応用問題』という構成で、
「はい、この問題解けたら、次はこれやって」という
製作者の声が聞こえてきそうな不愉快さがあります。

何というか、奥に進むに比例して緩急無く上がっていく難易度に、
『製作者の手のひらで弄ばれているだけような寂しさ』を感じるというか…

ボス戦も、基本的には『決まった攻略の繰り返し』でしかないし。


全体的に、『製作者の想定した遊び方にしたがって、お手本どおりに
できるようになるまで必死に頑張れば、エンディングに辿り着けますよ』

といった、「義務教育」の臭いがするゲームという印象がぬぐえません。




『カメラ視点の劣悪さ』

ある意味このゲーム最大のトラップは、
『カメラ視点』かもしれません。

ジャンプ中、あるいはジャンプ前から
主人公が障害物の裏に隠れてしまい、
目測を誤って何度墜落した事か…

場面によっては『カメラ距離』も変化してしまうので、
相対的にジャンプ位置を見誤ったり、
画面の奥のほうにいる主人公がどういう位置にいるのか
目を凝らして確認する
といった、
悪い冗談のような事態も頻繁に発生します。

壁際で敵と混戦になったときなど、見えない主人公と敵との戦いで、
頼れるのは「己の運」だけ。 勘弁して下さい。


あと、カメラ視点がポリゴンモデルの裏側に回って
真っ黒な裏側が見えたりするのは、やはり興ざめです。




『入力方向の不愉快さ』

当ゲームの主人公の移動は、
『その時点の画面に対してのもの』になっています。

つまり、主人公が画面奥に向かって進んでいるときは
プレイヤーの入力そのままの動きをしますが、
主人公が手前に向かってきているときは
入力がまったく逆になる
わけです。

と言っても、この程度の遊びにくさは、他の「3Dアクション」でも
採用されていたり、慣れることもできるので、ある意味「許容範囲内」です。

問題は、(おそらく)このゲーム特有の、
『カメラ視点がスムーズに回転している最中でも、
入力ルールが変わらない』
というシステムにあります。


つまり、例えば主人公が溝を越えるために
「右」にポ〜ンとジャンプしている途中で、
カメラ視点がグル〜リと主人公の後ろに回りこんだとすると…

主人公のジャンプ軌跡はグイッと「右」にズレていき、
向こう岸に届かずに奈落の底へまっさかさま。


冗談で言っているのではありません。
マジにそういう場所がそこかしこに存在するのです。

他のゲームでは、例えば
『レバーから手を離すまでは、カメラ視点が変わっても、
変わる以前に向かっていた方向にそのまま進み続ける』

といった対策が施してあるのですが、
そういった心遣いはこのゲームにはありません。

自分の能力に関係ない部分でミスする不愉快さは格別で、
この歳になって大人気も無くパッドぶん投げたり机けっ飛ばしたりしたね。

PSの「3Dジャンプアクション」は、本当に
カメラ視点が不愉快なゲームの宝庫だとしみじみ実感しました。




『サブゲームの恐怖』

当ゲームのヒドさを語る上で絶対に外せないのが、
このサブゲームの存在です。

要は、『ジャンプゲームとはあまり関係ないミニゲーム』
物語にアクセントを加えているつもりなのでしょうが、
これが不愉快に難しい。

当然今までのゲーム内容とは無関係なので、
その場面だけのために新たにアクションの練習を積まねばならず、
ゲームの流れが止まってしまいます。

それ自体で死亡することは無いのですが、後戻りができず、
できるまで何度も何度も何度もコンティニューをくり返して
突破する行為はまさに苦行、まさに無間地獄。

ミニゲームて、ボーナスでしょ? 箸休めでしょ?
そんなにユーザーを先に進めたくないのですか、製作者様?




『全体的な流れが悪い』

上記の「サブゲーム」以外にも、
必要なときに必要な場所が使えない不便さを伴う『時刻システム』、
忘れがちな『ゲットインシステム』に絡む謎、
カメラ視点切り替えが絡んで全体が把握しづらいマップ、などなど…


『ゲームの現在の情報に慣れて、だんだんノってきたな〜』と思った矢先に
足元をはらわれて転ばされるような不愉快感が常につきまといます。

何が何でもスムーズには進めさせん!
といった雰囲気に満ち満ちてる感じです。




『ラスボスの形態変化て…』

第二形態への変身行程を見たとき、
『あれ? これって…』とチラと気になってはいたのですが、
最終形態では『やけにスッキリした姿』になってしまい、
身もふたも無い感じです。

ムサシが怒りによって金色の戦士に目覚めなかったのは、
開発者のギリギリの良心ですか?







■第三章 『まとめ』


当ゲームの印象は、
『良くも悪くもジャンプアクションの集大成』
といったところでしょうか。

ジャンプを絡めた膨大なトラップの種類に感心する反面、
往年のゲームを思わせるしつこいほどのトラップの連続に
『なんでこんな苦労をしょいこまなければならんのか?』と、
ふと寂しさにも似た冷めた気分になってしまいます。



そういえば、ちょと噂で聞いたのですが、当ゲームの製作者さんは、
コナミ社で『ゴエモン』シリーズを作ってらっしゃった方だとか?

だとすれば、僕がこのゲームから感じていた、『経験に裏付けられた巧みさ』
『「作り手の都合」を優先した、ジンワリと感じられる姑息さ』も納得がいきます。





さて、今回は実に2年近くぶりの大きめのゲーム批評だったので、
まとめるのに苦労しました。(苦笑)

でも、今まで敬遠気味だった(時間に対する面白さの密度が低く感じられた)
『ジャンプアクションゲーム』について考察できたので、
この批評は自分にとって結構「塚」になってくれそうな気がします。




そうそう、蛇足ですが…

このゲームは僕にとって、
『スクウェア作品初クリア』という
記念碑的作品であります。

同社のゲームはたいてい序盤でイヤになって
棚に放りっぱなしにしてきた僕なので、
なにか肩の荷が降りた感じです。



でも、『武蔵伝』のオマケとしてついてきた
『FF8』の体験版がすごくアレだったので、
せっかくプレイする気が出始めていた「FF」への気力がまたポッキリ折れましたが…


『武蔵伝』と関係無い話でしめてすみません。 以上〜。






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