プレイステーション用


『ミスタープロスペクター
ほりあてくん』



開発: リズミックス

プレイ時間 : 宝物252種コンプリート

購入価格: 1680円

執筆日: 2006年 09月18日





■第一章 『スッキリ』


『ミスタープロスペクターほりあてくん』は、宝探しゲームです。


洞窟に調査に出かけたまま帰らない父親探しを理由に近づいてきた
自称「ミスタープロスペクター」であるほりあてくんの口車に乗せられて、
彼を自宅で寝泊りさせた上に、洞窟への入山料までまかなわされる
ハメになった少女貞操の危機が描かれます(8割ウソ


システムとしては、
地面の中を黙々と掘り進み、ランダムで出現する「宝箱」をゲット。
敵と体当たりで戦闘しつつ、酸素ボンベが空になる前に
「最深部」か「入口」のどちらかから脱出する…

というゲームです。



黙々と未知なる宝を探し続けるシンプルなプレイシステムと簡素なグラフィックは、
『ファミコン後期 〜 PCエンジン時代』のゲームを彷彿とさせます。

ファミ通誌上で紹介されたときも、てっきり携帯ゲーム機用の商品で、
「プレイステーション用ソフト」の表記は誤植だと思っていたほどです。

逆に、その『シンプルな匂い』が、
僕が購入した理由の大半でもあったのですが。

昨今の数多のゲームの持つ、枝葉ギトギトの
まとまりの無いゲームシステム
にお腹いっぱいな僕らに、
贅肉をそぎ落としたスッキリシステムを見せてくれそうな予感がして…

その期待の結果は、以下をご覧下さい。



ちなみに、当作品は独自のシステムが多々見られ、他の作品との
比較評価が難しいので、普段のウチのゲーム批評とは流れを変えて
『それぞれのシステムごとに批評』してみようと思います。







■第二章 『システム考察』



以下、猛烈に長いですが、『ほりあてくん』のシステムを、
余すところなく分析しておりますので、がんばって読んでほしいし。




『十字ボタンだけゲーム』

当作品は、ただもう黙々と掘り進むだけのゲームです。

というかここまでくると最早ゲームですら無く、
黙々とおみくじを引き続けているような心地です。

プレイヤーの工夫の余地といえば『効率よい掘り進み方』ぐらいですが、
それも例えば「右」に1つ掘り進んだら、
その場から「上・右・下」と掘って1歩右に進み、同じ動作のくり返し…
といった『3ブロックが1セット』の考え方が限界。
すぐにルーチンワークに早変わりです。

敵モンスターとの戦闘も「体当たり」なので、
発掘現場では「十字ボタン」以外使いません。
右手が化石化しそうです。




『掘る力』

「土」には何種類かの硬さがあり、完全に壊れるまで
何度も体当たりしないと「掘る」ことができません。
難度の高い洞窟ほど、より硬い土で構成されています。

主人公は成長するにしたがって、より少ない回数で、
最終的には1回の体当たりで掘り進めるようになるため、
移動にかかる時間も短縮され、
同じ酸素量でも、より奥に進めるようになっていきます。




『フィールド』

フィールドの構成は単純で、
ある程度ランダムで障害となる壁が配置されたりもしますが、
基本的に「土」だけで構成されます。

つまり、自分の掘り進むスピードが変化するだけで、
どこへでも自由に進む事ができます。

ハマる心配がほとんど無い反面、緊張感も希薄です。




『宝箱』

地面の中にランダムで埋まっている宝箱の内容はランダムです。

が、それでは誰も「難度の高い洞窟」に挑戦しなくなるので、
洞窟の難度に応じて、よりレア度の高い宝箱が出現しやすくなっています。
宝箱は『水色→ピンク→白→オレンジ』にしたがって
レア度が上がり、出現頻度が下がります。

また宝物は、「宝箱の色」によって出現が決まっています。
『この宝物は、この色の宝箱からしか出現しない』という感じに。

中身は全252種
ごく一部に、地面以外から入手する宝物もあります。

洞窟から脱出すると、レア度の低い宝箱から順番に開封されます。
初めて出会うアイテムの場合は「NEW」マークが付くので、
分かりやすく、嬉しさもひとしおです。

ただ、両者で開封ファンファーレに変化が無いのはちょっと…




『酸素と縄ばしご』

淡々とした展開に変化を出そうとしてか、
時間が経つにしたがって減っていく『酸素』と、
一定の長さを持つ『縄ばしご』がシステムに組み込まれています。

前者は、0になる前に洞窟から脱出しないと冒険失敗になり、
今回の冒険で得たアイテムがほぼ全て没収となります。

後者はかなり特異で、現在の足場から
一定の高さまでしか上り下りできません。
つまり、ウッカリ深みに落ち込むと入口に戻れなくなり
出口に辿り着かないかぎり、やがて酸欠で死亡です。

また、下に進むときには『わざと天井となる地形を残して、
そこを基点にハシゴで降りる』という手間をかける必要があります。

筆者はそのことに全く気づかず、かなり長期間、
最初の洞窟の「上3段」だけを掘る日々をくり返しておりました。
友人の朝霧君が下に掘り進む方法に気づいてくれなかったら、
今でも「上3段」だけを掘り続けていたかもしれません。 ゾッとします。




『BGMと効果音』

決して、『秀逸なBGM!』というわけではありませんが、
不思議と耳に心地良い聞き飽きない曲が多く、好感が持てます。

反面、効果音はチープですが。




『アイテム帳』

掘り出したアイテムに関しては、
『アイテム帳』でいつでも内容を確認できます。

この中で各アイテムに関する 解説 が読めるのですが、
これがまた『悪乗りにも似た愛』にあふれており、
パロディはもとより、製作者の思い出話やウンチクにまで及ぶ遊びぶり。

憶測ですが、製作者たちはここの解説を書く作業が
最も楽しかったのではないでしょうか?


ユーザーにとっても、この解説は
楽しみ所の1つといっても過言では無いと思います。




『モンスター』

洞窟内にはそれぞれ、7〜8種類ほどの
モンスターが生息し、主人公を阻みます。

といっても、主人公の位置に応じて
動きを変えるような上等な思考は無く、
左右に浮遊するなどのルーチン的行動しか取りません。


モンスターにはそれぞれ弱点… というより、
『勝利判定に関わるパラメータ』が存在します。

それが例えば「すばやさ」なら、主人公のパラメータの基本値に
装備分を足した値が一定以上
(50以上とか)に達していれば
体当たりすることで必ず倒せ、「酸素」、「金」、「経験値」などがもらえます。

逆にパラメータがそこまで達していない状態でモンスターと接触すると、
主人公は必ず負け、酸素残量が減ってしまいます。


結局、あるラインを超えたとたんに、
敵はただの「酸素」「経験値」ゲットのための浮遊アイテムと化し、
その洞窟の難度は激変、冒険の緊張が消滅するのはヒドイ話です。




『金』

店でアイテムを買うときと、洞窟に入るために必要な「金」は、
モンスターを倒したり、宝物を売ることで得ることができます。

が、店で買える物と同じものを宝箱から入手できる上に、
そういう必需品はたいてい有り余っているので、
店はほとんど利用しません。

また、洞窟に入るための入山料は、
最初こそ、たったの10ゴールドですが、難度が1つ上がるにしたがって
『10倍ずつ、最後は100万ゴールド』
というメチャクチャな上昇を見せます。

でも、その程度の金額は、その1つ下のランクの
洞窟の敵を4〜5匹倒せば貯まるようになっています。
つまり、ランクが上がるにしたがって、
倒した敵がメチャクチャな量のお金を落としてくれるのです。
 
恐らく、『難度の高い洞窟に慣れないうちから飛び込まないように…』
との開発の配慮なのでしょうが、それなら現在の洞窟を突破しないと
次のレベルの洞窟に入山できないようにしてしまったほうが
手っ取り早いのではないでしょうか?
実際、プレイしてみると、そんな感じの難度設定になっている気がしますし。

練りこみの浅さを感じます。




『装備・コーディネイト』

当ゲームで掘り出した宝物は、イコール『装備品』として
主人公のパラメータ上昇の役に立ってくれます。

ここで面白いのが、それぞれは大した能力を持たない宝物も、
複数を組み合わせて装備するとボーナスとして
「さらにパラメータが上昇」する場合がある
という事です。
例えば「サンタグッズ」で全身をかためてみるとか。

これらは『コーディネイト』と呼ばれ、数10種類のバリエーションがあり、
宝物収集の1つの楽しみになっています。


ただ、252種類の宝物 があるという事は、
同時に『252種類の装備品』があるという事。
その中から特定パラメータを最も高く上昇させるものを探し出すのは
至難の技というか、普通ーに無理です。

筆者の場合は、表計算ソフトで一覧表を作り、
特定パラメータごとにソートをかけることで対処したけど、
ライトユーザーはどうすればイイのでしょう??




『合成・進化・コピー』

当作品でも、「収集ゲーム」の定番の1つである
『合成』が可能となっています。

いや、むしろ宝物の出現率を考慮すると、この『合成』が
ゲーム全体の半分をまかなっているといっても過言ではありません。

新しいアイテムが手に入るたびに「研究所」でリストを確認し、
『合成』・『進化』によって別の宝物を創造、
その宝物が初登場のものならさらにそれを『合成』・『進化』させて…
と、『宝物リスト』を埋めるための作業は延々と続けられていきます。

残念なのは、リスト画面が小さいため
画面を繰っていくだけでも労力がいる事
リストを閉じるとカーソル位置が初期位置に戻ってしまうため
リストの後半にあるアイテムの選択が非常に面倒な事、などなど。

また、膨大な宝物数のせいで、どの宝物とどの宝物を組み合わせれば
「未知の宝物」に出会えるのかが把握しきれない点。

筆者は表計算ソフトでこれらを把握してしのぎましたが、
それが無ければ投げていたかもしれない…


あと、とってつけたような『コピー』という機能。(専用のアイテムが必要です)
レアそうなアイテムで、これをキチンと実行せずに
「合成」・「進化」の材料に使ってしまうと、
後になって二度と入手できずに大泣きするハメになります。

でも、そんな事、ゲーム後半にならないと分かるはずが無いし… ヒドイなぁ。




『落盤』

地面を掘っていくと、周りをグルリと掘り抜いた
「離れ島」のような部分ができることがあります。
こうなると、足場を失った部分が落下し、その範囲の広さによって
主人公の酸素が大幅に減少してしまう。 これが『落盤』です。

自由に掘り進みすぎた結果のペナルティのような要素ですね。

一応、落盤させた範囲は衝撃で「土」がある程度ダメージを受け、
普段よりも楽に掘ることができる
ようになっています。
ただし、落盤のダメージによって「土」が破壊されることは無いので、
どんなに落盤させても最後は自分で掘る必要がありますが。

緊張感の持続という点ではまちがいなく成功しているようですが、それは、
落盤イコール『主人公がほぼ即死』であるからに過ぎません。

しかも、主人公が成長して「1発で土が掘れる」ようになると、
もう落盤は完全な足かせでしかなくなります。
(落盤で土をやわらかくしても意味が無いから)

ただでさえ広すぎるフィールドのせいで、
落盤するかどうかを確認するのは手間で、
酸素残量を心配した結果の落盤で死亡したときの腹立たしさは、
単調な内容を無理して遊んでいるせいもあってか、かなりのもの。







■第三章『まとめ』


総合的に見ると、個別のアイディアは結構イイが
「まだまだ練り込み不足」という感じで、
開発中のものを無理に販売したような印象をうけました。

また、『膨大なデータにはソート機能を付ける』、
『よく使うコマンドをリストの上のほうに持ってきて、ユーザーの入力の手間を軽減する』、
『その宝物を装備する事による、現在のパラメータとの差異の明示』

などの、本来付いてしかるべき初歩的な気配りがなされておらず、
作り手の開発経験の浅さが垣間見えます。



『洞窟の背景の一部が、この洞窟をクリアするのに必要な宝物の
壁画になっている』
など、キラリと光る演出もあるのですが…

個人的には、こういうシンプルにシステムだけで勝負してくる
ようなゲームにはエールを送りたいんだけどなぁ…




万人向けではないですが、
「とにかく難しい操作がしたくなくて、まったりとゲームを進めたい人」で、
「データ管理がわりと好きで、表計算ソフトをお持ちの人」は、
お試しになってみても良いかと?

もっとも、出回っている数が少ないので、
入手自体が激しく困難とは思われますが…






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