プレイステーション用ソフト

『レイストーム』

販売…タイトー     購入価格 1280円



■第一章『パネルでポンSTG』

タイトーのSTGの批評に、なんで任天堂の名作パズルの名が? と、
いぶかしく思われる向きもありましょうが、とりあえず読み進めれば
おのずとご理解いただけるかとー。 ほほほほほほほほ。


ご存知のとおり『レイ・ストーム』は、
秀作STG『レイ・フォース』の続編であります。

通常ショット以外に、遠方の敵を照準でロックオンして一撃粉砕する
「ロックオンレーザー」を持ち、この武器をいかに使いこなして
敵に先制攻撃を加えられるかが攻略のカギとなります。

往年の名作『ゼビウス』のシステムを、「時間的な戦略性」「爽快感」
2点において発展させた、非常に珍しくシッカリした作りのSTGでした。



…さて、その続編として登場した当ゲームなのですが、正直、
出た当時にゲーセンでプレイした印象はあまり良くありませんでした。

もちろんゲームとしては悪くないのですが、所詮は前作の延長上…
ハッキリ言って視点がクォータービュー(斜め上視点)に
なっただけの『レイ・フォース』
としか思えませんでした。

しかも、ポリゴン処理になったことで、自機のショットや
レーザー・敵キャラ・爆発が前作以上に入り乱れて見づらく、

自機を見失って死ぬ状況が多発。

2〜3回プレイしたあたりで頭にきてやめてしまい、
以後触れることはありませんでした。

数年後、プレステ版が中古ショップで1300円程度で売られているのを見るまで、
その存在すら忘れていたほどです。

STGだし、これだけ安いなら買ってやってもイイだろう、と軽く考えて購入。
「プレステオリジナルモード」も付いているらしいから少しは楽しめるかな、
と期待もせずに帰宅しました。 実はとんでもない拾い物をしたとも知らずに。


…さて、家に帰って早速1プレイ。

「アーケードを忠実に移植したモード」を、前作から引き続き登場している
自機「グレイT」で遊びました。 が、やはり大して面白くありません。

そこでガラリと気分を変えて、「プレステオリジナルモード」
新型機「グレイU」で遊んでみることにしました。

最初は大して変化を感じなかったのですが…

ん? あれれ? 何だろう、
何かがさっきまでとは違うような…

メリハリがあると言うか…

このゲームが「面白く」なってきている自分に気付いたのです。
なぜ? 何がプレイ印象を変えたのでしょうか?

それを次の章でご説明いたしましょう。



■第二章『続編にあらず』

…私は最初、『レイ・ストーム』
『レイ・フォース』の続編と位置付けて評価していました。

しかし、遊びこめば遊びこむほど、こう結論付けざるを得ないのです。

「『レイ・ストーム』は『レイ・フォース』の続編にあらず」と。

前作の機体「グレイT」は、あくまで前作のファンおよび初心者への
配慮
に過ぎず、当ゲームの本当の意味でのバランス調整は、
「グレイU」を対象に設定されているようなのです。


…そもそも、当作品では「ロックオンレーザー」の役割自体が前作とは異なっています。

前作では、「通常ショットが届かない遠方にいる敵に対して先制攻撃を仕掛けて、
後々の展開を有利にする」
ことを目的としており、接近してきた敵や、
特定の敵以外には、「ロックオンレーザー」での攻撃が出来なくなっていました。

ところが今作『レイ・ストーム』では、何と「全ての敵」を「距離を問わずに」
レーザーの攻撃対象にすることができ、
前作とは別の意味
「ロックオンレーザーが戦略の要」
となるゲーム構成になっているのです。


…ここまでくれば、いくつかの難点を持ちつつも
高いレーザー性能を誇る「グレイU」が遊びやすいという事実もうなずけます。

加えて種明かしをしてしまうと、一見ほとんど変化が見当たらない
「アーケードモード」と「プレステオリジナルモード」の違いは、
ズバリ『敵の出現配置』にあったのです。

原作以上に大量のロックオンを狙える場面が多くなっており、
「高得点」・「爽快感」・「レーザーの高い攻撃性能」を求めれば、
自然とプレイ内容は「グレイU」を中心としたものに移行していきます。

いかに扱いやすい「グレイT」でも、レーザーの攻撃性能が
「帯に短しタスキに長し」では、プレイ内容が中途半端になりがちだからです。


こうして、「アーケード」で「グレイT」を使って底々だった
『レイ・ストーム』の印象は、「プレステモード」を「グレイU」
遊ぶことによって大きく変化。

今では、良質なSTGを語る際には外すことが出来ないほどに、
『レイ・ストーム』というゲームに惚れ込んでしまいました。

また、「敵配置によるパランス調整の大切さ」
「最低、全ての自キャラでオールクリアまで行ってから、作品の評価をするべき」という、
当然でありながら忘れがちな本質を再認識させてもらい、
ホント色々とお世話になった思い出深いゲームなのであります。



■第三章『お詫びと言っては何ですが』

…最初の印象が悪かった分、謝罪の意味もこめて、
当ゲームの良い点をいくつか上げてみようと思います。
なお、評価は「グレイU」を使用した場合のもので統一してあります。


…まず、このゲーム、『3D空間の使い方』がうまいです。

単純に「敵が遠くに見えている」のではなく、見え始めてから
自機に接近・攻撃しかけてくるまでの時間、すなわち「距離」
よく考えて敵が配置されているわけです。

「見えている」ということは逆にいえば「レーザーのロックオン対象に
なってしまう」
わけですが、敵が遠くにいるため、迂闊にレーザーを撃つと
敵を倒した後レーザーが戻ってくるまで自機の攻撃が手薄になります。

わざと敵が接近してくるまで攻撃を控える、などの「距離を考慮した戦い」は、
このゲームの醍醐味の1つです。


…また、1体の敵に対して、自機が持てる全てのレーザーを一度に撃ちこむと、
通常より高いダメージを与えることができます。

ロックオンを分散させるか集中させるかによって戦い方の選択肢が増えるという、
一見地味ですがとても良く考えられたアイデアです。


…そして最大の魅力は、「グレイU」のロックオンの後付けによる
「高得点の取りやすさ」「豪快な連続破壊の快感」であります。

前作では、どれだけ大量の敵にレーザーを放とうとも、
その破壊音は同時(1回だけ)でありました。

しかし、今回の「グレイU」の武器は『ライトニングレーザー』。

敵を同時に破壊しない分、敵の破壊音が次々と響き渡り、
大量の敵を破壊しているんだという充実感がヒシヒシと伝わります。

何より「ロックオンの後付け」のおかげで、
高得点をねらえる場所や戦法にも幅ができたのは大きいことです。

戦いが一本調子にならず、自分なりの作戦を組み立てる楽しみも増え、
失敗しても後からフォローを入れられる「後付け」。

綿密な下準備よりも、瞬間的な判断力に比重を置いた
このシステムは、実は「落ち物パズルゲーム」にその源流を見ることができます。

冒頭にも書いた、「後付け」という秀逸なアイデアを持つゲーム。
それが任天堂の『パネルでポン』なのです。
最初に私が『レイストーム』を「パネルでポンSTG」
称した理由がお分かりいただけたかと思います。

「分かんねぇよ」とか「途中が長すぎて忘れたよ」とか
おっしゃる良い子は、ふりだしに戻る。



■第四章『とは言え…』

…やはりと言うかまたかと言うか、この秀作にもあるのですよ難点が。 バッチリ。

まず「自機のヘンテコな動き」。

このゲーム、例えば自機を「右」に動かしていって、レバーから手を離すと、
自機の1機分ほど「左」に戻ってしまうのはどうしてでしょう?

戻ったところに弾が飛んできて死んだときは愕然としたものです。

回避方法は『エアバスター』(カネコ)の宇宙面同様、
「自機の動きを止めなければOK」なのですが、
なにか釈然としないものがあります。


…次に、「敵や敵弾が見にくくなるゲーム画面」。

いえ、爆発だけによるものなら昨今のSTGのほとんどに当てはまるため、
このゲームだけがヤリダマに挙げられるのは不公平と言えるのですが…

なんと当ゲームでは
「自機の通常ショットのせいで画面が見づらくなる」
というヒドい仕様。

「グレイT」の幅広ショットに隠されて、前方低空から上昇してきた
敵や敵弾に気付かずにやられてしまったときの、あの絶望感は忘れがたいです。

「グレイU」は前方1点集中の青いレーザーショットなので
「グレイT」に比べれば見やすいのですが、たまに
「青いレーザー」(←あんまりでは?)
を撃ってくる敵がおりまして。

ステージ5の中盤で出てくる「丸いヤツ」、ステージ6の「キノコげなヤツ」
などと相対するときは、それ相当の覚悟が必要です。

最初は、こちらのレーザーをはね返す敵なのかと思ったほどです。



…そして極めつけは「のんびりとしたOP」。 概要を説明しますと…


地球に向かってレーザー攻撃をしている巨大戦艦。

地球のほうから飛んできた赤い戦闘機(グレイT)。 …と青い戦闘機(グレイU)。

巨大戦艦の上を、のーんびりとうろつく2機の戦闘機。

青い人型メカが1台だけひょっこり現れ、2機の戦闘機に向けて
のーんびりとした速度の弾を10発ほどばらまく。
戦闘機、きりもみ飛行でのーんびりと避ける。

人型メカ、さっさと帰る。

2機の戦闘機、またしばらく戦艦の上をのーんびりと飛行。

突如、戦闘機が無数のレーザーを敵艦に向けて乱射。 画面ホワイトアウト。

タイトル画面



…こーんな感じです。 何も知らない人が途中から見たら、
「のんびりと演習していた新人パイロットが、うっかりレーザーを誤射してしまい、
味方艦隊を全滅させてしまいました。
 ごめんねー、てへ。」
という感じの、「のどかな(そうか?)OP」だと思うことでしょう。

スピード感・メリハリとも、前作に完敗です。
もう少し何とかならなかったのでしょうか?


…でもまあ、ゲーム内容自体はイイので許せる範囲でしょう。

世の中には「OPのクオリティだけ
業界屈指、というメーカーだっていたわけですから。

ゲーム内容も別の意味で「業界屈指」でしたけど。



…話がズレましたけど、総合的にはお薦めです、『レイ・ストーム』。

最初のカベさえ越えられれば、バラ色のロックオン人生が始まるでありましょう。
いざ宇宙へ。 孤高なるライトニングボルトを目指して。



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