プレイステーション2用

『シルフィード
ザ・ロストプラネット』



販売: カプコン

プレイ時間 : オールクリア5回

購入価格: 1480円

執筆日: 2007年 06月13日





■第1章 『彗星のごとく』


『シルフィード ザ・ロストプラネット』は、
後方からのナナメ見下ろし視点の縦スクロールシューティングです。


『シルフィード』シリーズの歴史は長く、
パソコン版(1986年)メガCD版(1993年)・そしてこのPS2版(2000年)と、
7年周期でゲーム市場に姿を現す彗星のような作品です。


この批評を書いている2007年にも戻ってくるのかな…?
と思って調べてみたら、すみません、
2006年X−BOX360版が出ていたそうです。 知らなかったよ。

というか、周期ちぢまってんじゃん。 国立天文台に報告せねば(何を)



ちなみにこのゲーム、
「製造・販売」がカプコンで、「企画・開発」がゲームアーツ

なのに本編作ってるのは… だったりするので大混乱です。







■第2章 『システム』


実は僕、『シルフィード』シリーズはほとんど遊んだこと無かったのです。
当時はX1ユーザーであり、スーファミユーザーだったので…

というわけで、「前作との比較」は抜きにして、
単純にこの作品を独立で批評してみようと思います。

まずは、当ゲーム特有のシステムを説明しましょう。




『メガ・レート』

敵を倒したとき、その敵に近ければ近いほど、
基本点数に倍率が上乗せされるシステム。

最大16倍までアップします。

昨今では結構ありふれたシステムになっちゃったけど、
創始者は誰なんだろう?




『ウェポンセレクト』

自機の武器を自由に変更できるゲームとして、
この『シルフィード』シリーズは1つの代名詞といえるでしょう。

他には『スカーレット7』とか… (知らんよ)


自機の左右に、1つずつ武器が装着できます。
左右とも同じ武器、というセレクトもOK。

各ステージのスタート時と、
ステージ途中に友軍機が現れたときにも、セレクトが可能です。

性能は以下で説明しますが、
前方系ショット扇系ショット1つずつの組み合わせが、
ベタながら安定した強さを誇るように思えます。(最終ステージ除く)


バルカン  前方へ高速連射。 パワーは低いが、素直で使い勝手は1番。
 ただし、左右からの敵に弱い。

Vバルカン  ナナメ左右のV字方向に、パワーの弱いショットを撃つ。
 左右から近づく敵に有利だが、前方がガラ空きになる。

オプティクス・
レーザー
 貫通力とパワーのあるレーザーを前方に撃ち出す。
 ショットエネルギーが1ヶ所にかたまるため、連射性は劣る

ナパームボム  ナナメ左右と後方に、遅いショットを射出。
 爆発中も攻撃判定が持続し、パワーも高い。
 周りから近づくザコや、動きが遅く耐久力の高い敵に威力を発揮する。

 が、爆煙がそれほど広くないのでキチンと狙って撃つ必要があり、
 慣れが要求される

セブンタイプ
ビーム
 自機の左右の動きに合わせて、そちらに傾くように貫通力のある
 ショット
を放つ。 パワーもなかなか。

 ただ、瞬間的に左右の敵に反応して撃てないもどかしさがある。
 前方ショットと組み合わせて前方向に火力を集中したり、前方が
 空きぎみになるのを覚悟でワイドショットと組み合わせるという手も…

ファルシオン・
ワイパー
 ショットボタンを押しっぱなしにすると、エネルギーがのように
 一定距離まで延び、自機を前後に動かすことでそれを「前 ⇔ 横」
 角度切り替えできる。
 エネルギー部分は、すべて攻撃力を持っている。

 ナナメにできないため異様に使い勝手が悪いわりに、ズバ抜けて
 攻撃力が高いわけでもないので、持て余す

スターボウ  前方に、やや左右にランダムでブレるようにショットを連射する。
 ちとバクチ性が高い武器。
 攻撃力はそこそこだが、連射力が高いので、敵に接近して撃つと
 短時間で高いダメージを与えられることも…

プラズマ
ボール
 大きなエネルギーボールを微妙にナナメ前に撃ち出す。
 弾速が遅いので運まかせなところがあるが、敵を貫通し、かつ
 触れている間中ダメージを与えるので、動きの遅い敵に接近して
 連射すると驚くほど大ダメージを与えられる場合がある。

サンダー
アロー
 ショットボタンを押しつづけると8つの小さなエネルギーボールが
 左右に広がり、離すと高速レーザーとなって前方に射出される。
 特筆すべきは攻撃力の高さと、バツグンの貫通力

 最終ステージは、これを両サイドに装備して挑むこと。
 でないと、最終ボスの前に出てくる戦艦(『グロアール』だっけ?)
 との対戦で死ぬほど苦戦することに…









■第3章 『良し悪し』


それでは、良し悪しの列挙を…



『見事すぎるムービー』

いや、初めて当ゲームのムービーを見たときは本当に驚きました。

宇宙空間の広がりがつまっているというか、
カメラに写る範囲の物体は、遠ーーくの点のようにしか
見えない物に至るまで、ちゃんと動いているのです。

このおかげで、画面にものすごい奥行きが生まれて、
物語の壮大さを視覚から脳髄に叩き込まれるイムパクトがあります。


彩度やコントラストの高い、力強くカラフルな画面。
きちんと再現されている環境光。
アングルや対比によって演出される、物体の巨大感。

色味に乏しい場面でも、うまく工夫して
要所要所に様々な色彩を盛り込む
などなど…

実に学ぶ点の多いムービーだと思います。




『矢継ぎ早やに変わる背景』

ゲームをしていると気づきにくいですが、
背景がコレデモカというほど多彩に変化します。

単にオブジェクトが変わるだけではなく、
高度を変え、スクロールスピードを変えて、
巧みにプレイヤーの心理をコントロールしているようです。

それでいて、明度が抑えられているので、
プレイのジャマになる事が少ない。(たまにジャマになる)


ついつい背景の変化に見とれて、
ザコの攻撃をボコボコ食らっている自分に気づいたりも…




『フォントがちょっと…』

ハードなストーリーなのに、
日本語フォントがかわいすぎてチグハグなのが惜しい…




『エフェクト過多』

敵がレーザー系の武器を使うと付近に淡い光がともなうので、
レーザー自体に接触しないまでも、
一瞬自機や付近のザコを見失って遊びづらいです。




『シューティングとしての魅力が薄い』

重厚で緻密な背景に押されてか、
画面に対するキャラのサイズが災いしてか…
その手前で動いているキャラクタたちが
何ともチマチマして迫力に欠ける気がします。

それがそのまま、シューティングとしての
見た目の爽快感の薄さに直結してしまっている…


自機の動きも敵に対して遅く、イライラするのはもちろん、
「メガ・レート」を狙うために近づくのにも勇気がいります。


ザコの出現が『ダライアス』(タイトー)よろしく編隊系が多く、
しかも左右対称がほとんどなので、悪い意味でアドリブが利きすぎる。
出現位置さえ憶えてしまえば倒すための工夫もいらず、緊張感がありません。

敵が出てこない場面が同系列のゲームに比べて多く、
せっかく盛り上がってきた心が冷めてしまうことも…


また、昨今のシューティングに比べて自機性能が低い分、
画面内のザコの出現数も抑えぎみで、
これもチマチマ感に拍車をかけているように思えます。

敵が色んな方向から迫ってくるのに、
対する自機のショットが前方中心のため、避け中心の展開になりがちなのも
爽快感に乏しい要因ではないでしょうか?




『敵弾のイジワルさ』

俯瞰視点というものは、それだけで、プレイヤーに
ある程度の瞬間的な認識の難しさを背負わせるシステムです。

それを軽減させるためか、『レイストーム』(タイトー)などでは、
敵が遠い位置から直線ショットを撃つことで、
ある程度プレイヤーが弾道を予測できるよう配慮されているようです。

ところが当ゲームでは、近距離から、そこそこ速い敵弾が
場合によっては波紋状に広がりながら(ある程度の隙間はあるが)
射出されたりするのでたまりません。

弾道を読んでいるうちに
敵弾が目の前まで来てしまうのですから手遅れです。

ダメージ制のゲームなので、こういった箇所で
わざと難度を上げているのかもしれませんね。




『ムービーと本編のギャップ』

ムービーでは、敵の巨大さと、細胞的な不気味さ
前面に押し出されています。

が、本編に出てくる敵は
パッと見に昆虫的だったりメカだったりして、
ムービーと本編が頭の中で相乗効果を生んでくれず、
ブツ切りな印象を受けます。




『つらいムービーの内容』

本編ではボンボン勝ち進んでいるような雰囲気なのに、
ステージ間のムービーでは、無力な地球人が
一方的な負け戦を重ねる
場面が続きます。

細胞的で巨大な赤黒い敵が、オドロオドロしい音楽に乗って
地球に進攻していく様は、見ていて非常にになります。

せめて、負け戦の中にも「小さな逆転の予感」
盛り込むべきだったのではないでしょうか?

それが無かったためか、最終ステージで敵の中心核もろとも
全勢力をあっけなく消し飛ばしたのを見せられたとき、
「じゃあ、最初からこの武器使っとけよ…」
という気分になってしまいました。




『プレイ時間長すぎ』

ボス戦・ムービーを抜きにした本編だけでも、
全6ステージ・約40分は長すぎです。

とても気軽に遊ぶ気になれない…






まとめとしては…

装飾部分にものすごい映像美を持ったがために、
2Dシューティングの視点をちょっと変えただけのような
本編のチマチマ感が余計に際立ってしまったように思えます。

敵の耐久力を下げ、出現数を増やし、敵弾を減らして、
自機のショット性能を上げることで、
大味ながらも豪快なシューティングにしたとしたら…

あるいは、ムービーに近いベクトルの本編になったかもしれません。



いえ、歴史に「たら・れば」は禁句ですが…






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