プレイステーション2用

『エバーブルー』


販売: カプコン

プレイ時間 : オールクリア1回

購入価格: 480円

執筆日: 2007年 07月14日





■第1章 『海のトレジャーハンター』


『エバーブルー』は、海中宝捜しゲームです。


トレジャーハンターである主人公がにダイビングし、
エアー(酸素)の続くかぎり水中を探索して、お宝をかき集め、
それを売った資金を元にさらなる冒険に挑みます。

と、書くと、ものすごく自由度が高くて
ワクワクする展開を期待してしまいますが、
実はちょっと問題があってゲーム的には今イチです。

それは後ほど説明するとして、ちょっと珍しいゲームなので、
システム解説から入ろうと思います。




『主人公』

海中にダイブしてお宝を探す青年です。

ダイビング時間に応じて経験値(ユーザーには見えない)が入り、
『HPの上限』がアップします。

エアボンベダイブスーツを購入していくことで、
より長い時間、より深い海に潜れるようになります。

また、宝物を収納するサックを大きくすれば、
より多くの宝物を持ち帰りやすくなります。




『エアー』

ボンベの酸素残量で、切れればもちろんゲームオーバーです。

海中から「浮上」して町に戻れば回復します。




『HP』

体力で、無くなるとゲームオーバー。

重たい宝物をゲットした瞬間や、
深海など苛酷な環境を泳いでいる間中、低下していきます。

これが無くなるまでに海面に「浮上」すれば、
ゲットしたお宝を持って無事に町に帰還できます。

重い宝物ほど急激にHPが減りますが、
取った瞬間即死するほどの重量の宝は、
自動的に取得対象から外されるので安心です。

サックの限界を超える重量の宝物を持っていると、
普段よりはるかに早くHPが減るので危険です。
自信が無ければ、中身の一部を捨てたほうが賢明です。

町の宿屋で回復します。




『宝物の探し方』(海中)

ソナーを使用します。

主人公の前方に音波が撃ち出され、
少しずつ広がりつつ弱まりつつ飛んでいきます。
そして、その範囲内に「何か」があった場合は、反射音が返ってきます。

返ってくるまでの時間から、
「何か」までの距離が大ざっぱに分かります。

したがって、反射音があった方角に少し進み、
またソナーを撃って距離と方向を確認しつつ、
見えない宝物に近づいていく
ことになります…

ソナーを撃つとすぐに反射音が返ってくるほど接近したところで
○ボタンを押せば、そばに落ちている宝物をゲットできるわけです。

宝捜しは基本的にこの繰り返しです。


ちょっと面白いのが、発射するソナーに属性が付加できる点。

例えば「メタル」の属性を着ければ、
金属関係(コイン・鉄材など)に対してしか反応しなくなります。

着けられる属性には上限があるので、
今自分が探している宝物の属性を優先して
装着する必要と、工夫の楽しさ
があります。




『浮上』

沈没船(後述)などの密閉空間で無いかぎり、
いつでも、どんな深さからでも浮上できます

行ける所まで行く、帰りは気にしなくていい…
という思い切ったシステムなので、
気軽にガンガン、未知の場所へと足を運ぶ気になります。




『沈没船』

この世界には3つの沈没船があり、
中には沈没時のお宝がそのままになっています。
ゲーム中は、この3つの沈没船の内部の探索がメインになります。

2・3番目の船は巨大で、内部が階層で分かれており、
数ヶ所にある階段通路などを使って行き来します。


注意点は、「浮上」ができないこと
特定ポイントから船外に出る必要があるのです。

つまり、沈没船の探索時は、
「帰り」のことも考慮しつつ探索するという緊張感ある展開
になるわけですね。

一応船内マップも持っていますが、記されているのは
船の外壁と、出入り口、あとは階層間を移動できるポイントだけで、
船内の区切りは一切記入されません

今まで自分が通ってきたルートに沿って光点が動くので、
そこから逆算する必要があります。


ちなみに脱出口は、内部を探索していくことで
新たに発見される場合があります。

次回以降は、そこも入口として使えるので、
少しずつショートカットが可能になっていきます。




『宝物の探し方』(船内)

ソナーを使う場面もありますが、ほとんど形ばかり。
基本的に目視で宝物をゲットしていきます。

取れる宝物は、主人公が近づくと
キラキラしたカーソルがつくのですぐ分かります。




『マップエレメント』

ソナーに使用するアイテムで、
沈没船の中に置かれている特殊な宝箱だけに反応します。

もっとも、装着している間は、
その沈没船のマップ上に宝箱がポイント表示されるので、
ソナーを撃って探す必要はありません。

これを装着していないと、
その宝箱は見えず、取ることもできません

マップエレメントは、まれに店で販売されていたり、
町の人の依頼を達成したお礼として譲渡されたりします。




『宝物の取捨』

以前に一度取得して正体の分かっている物は、2回目以降、
発見した直後の取捨選択の場面でデータが表示されます。

特別欲しいもの(売り値がズバ抜けているとか)でなければ、
捨ててしまってもOKです。

大して価値の無い重いものをグズグズ持っていると、
いざ貴重品を発見したときに、HPが低いせいで
泣く泣く次回に延期という憂き目を見ることも…

基本的に「正体不明」のものを優先して持ち帰るのが賢明でしょう。




『鑑定・開錠』

持ち帰った宝のうち正体不明のものは、
そのままでは売買したり譲渡できません。
そのため、鑑定屋にわたして、有料で鑑定してもらいます。

が、基本的に「鑑定料 < 売り値」の上に、
一度正体の分かったものは以降鑑定の必要が無いので、心配無用です。

また、カギのかかった宝箱の開錠も依頼できます。
箱の中には宝石などが複数収納されている場合もあります。




『信頼のコイン』

町の人々の依頼に応えると、その人から
友情の証としてコインが贈られる場合があります。

これも、コレクションの1つです。




『称号』

イベントをこなすことで、
主人公には様々な称号が追加されます。

これも、コレクションの1つと言えるでしょう。




『数々のコレクション』

ストーリーが進むにしたがって、町の住人から
『世界中の酒が飲みたい』 『美術館を開きたい』
などの要望を受けるようになります。

これは要は、ゲットする宝物のそれぞれの種類(酒・美術品など)に関して、
ユーザーがコンプリートを目指す指標として用意されているイベントです。

ボーダーとなるコンプリートに達すれば、
「称号」などの副産物がプレイヤーに還元されます。




『写真』

海中の好きな場所で撮影した写真を、
最大20枚までアルバムできます。




『合成』

2つの宝物を組み合わせることで、
体力回復アイテムが性能アップしたり、
原石を研磨して宝石を作り出すことができます。

後者はもちろん、高値で売ることができます。




『オークション』

ルールは通常のオークションと同じで、
他人が出品している物に、参加者内で最も高値をつければ
購入の権利を獲得できるというものです。

ゲーム後半では、まれに、店では販売していない
高性能な装備品が出品される場合も…







■第2章 『良かった点』




『中だるみがほとんど無い』

町の人からの以来や、カテゴリ別のコレクション、
船内探索など、常に中小の目的が存在するので、
ほとんど中だるみ無くゲームが進行します


この配置のうまさは、さすが
製作に手馴れたアリカ社だけのことはあります。




『信頼のコイン』

ともすれば使い捨てになりがちな人物間イベントを、
「信頼のコイン」として形に残すことで何度も反芻できるのは、
実に巧みなアイディアだと思います。




『能力アップで行動範囲拡大』

単に潜水時間の延長だけにとどまらず、
体力が上がって重い物体を持てるようになる事で、
以前は物体にふさがれて行けなかった
「その向こう」に進めるようにもなっていきます。

そうなってから、改めて最初のころに探索した沈没船に戻ってみると、
その船内にちゃんと『以前は行けなかったけど今は行ける、隠し的な通路』
が用意されているあたり、作りの巧みさを感じさせます。







■第3章 『問題点』




『ちと見た目が地味』

最初は、その見た目や、マウスが合いそうな町の場面から、
てっきり海外PCゲームの移植だと思っていたのですが…
どうもアリカ社オリジナルのようです。

描き込まれているが、ゲームが進んでも変化の少ない町の風景…
水色の霞のかかったようなモッサリとした水中
(おそらく、これこそがリアルな水中の姿なのだろうが)など、
目にダイレクトに訴えかける快感が少ないように思えます。

水中では、光量だけでなく透明度にも地域ごとの変化があると、
さらに幅が出たのではないでしょうか?




『マップ上の自分の表示』

マップ上では自分は「三角矢印」で表示されますが、
近づくにつれて目的地が「自分」に隠されてしまい、少々不便でした。




『複数マップの難』

探索場所が増えるにしたがいマップも増えていきますが、
それらの並びがゲーム中で一貫しているせいで、
後に入手したマップほど、いちいち下のほうまで
カーソルを進めてから開く必要があり
、イライラしました。

今いる場所のマップを最上段に持ってきたり、
最後に見たマップのカーソル位置を記憶しておく…
といった工夫が欲しかったです。




『やや気になるアイテム欄』

イベントアイテムや「神話コイン」のように、
売らずに取っておくことが前提のアイテムも、
他のアイテムと一緒くたにアイテム欄に
表示されるので、チト煩わしいです。

貴重品として別扱いにできるよう、
主人公のアイテム欄を2つ以上用意してほしかったです。




『装備変更』

売値を見れば「高い物ほど高性能」なのは分かりますが、
装備変更時に「現状から変化する値」が表示されないのはちょっと…

そういった表示は、この手のゲームの
最低限の気使いではないでしょうか?




『手抜き? 宿屋イベント』

宿屋に泊まったときに進行するイベントが数回ありますが、
眠ったときの真っ暗な画面のまま、唐突にセリフだけの
やり取りが始まるので、最初はバグかと思いました

わざと言葉だけにして、想像で補うイベント演出…
という好意的な解釈もできる一方で、
単に宿屋でのイベントに対する特別なルーチン処理の
製作をさぼっただけでは?
 と邪推したりも…




『存在価値が薄まっていくソナー』

最初の頃こそ、地道な探索でストーリーが進むなど、
当作品ならではの個性が光っていたソナーですが…

お金に余裕ができ、沈没船探索がメインになってくると、
とたんに無用の長物に成り下がってしまいます。

先述の「マップエレメント」はマップ上でも目視できますし、
セコセコとソナーで宝物を探すよりも、
沈没船から家具などを引き上げたほうが
はるかに収入効率が高いので、これは当然と言えるでしょう。

ソナーの意義が薄まれば、『エバーブルー』としての個性も薄まり
特別このゲームで遊ぶ意味も無くなるので、
かなり致命的ではないでしょうか?




『急に難度の上がる海賊船』

 事実上最後の探索船になるので仕方ない部分もありますが、
それまでに比べて急に難度が上がるというか、
面倒くささが増すというか


「暗黒海域なので、毎回海賊船まで泳いで行かなければならない」

「船自体の深度が結構あるので、第2階層あたりまで
降りるだけでジワジワと体力が減っていく」

「巨大なタルが邪魔で、それを効率良く
取り除いてルートを探す、トライ&エラーの面倒くささ」

「大して天井が高くないのに、キッチリ2重構造で分かりにくい」


などなど…


そもそも、探索する沈没船が3つしかない
(しかも最初の1つはチュートリアル的存在で小さい)ボリュームの小ささが、
難易度の階段の1段1段を大きくしてしまっているのでは?







■第4章 『まとめ』


自分は「コレクション的宝捜しゲーム」が好きなので
期待していたのですが… このゲームのメイン目的は
『酸素の残量におびえつつ、密閉空間を進んでいく恐怖』
のようなので、ちょっと肩透かしでした。

随所に手馴れた作りを感じさせる一方で、
ソナー・写真・オークションなど、
とりあえず企画アイディアを詰め込むだけ詰め込んだはいいが、
練りこむ前にタイムオーバーになったのでは?

と感じさせる箇所も多く、ちょっと散漫な印象です。




ちなみに、このゲームの本当の魅力は、
実は『ホラーゲームとして楽しむ』こと
ではないか?と、思っています。


深度が50、100と進むにしたがい、
どんよりと黒くなっていく海水…

沈没船に入って、遠くまで届かない頼りないライトで周りを見回すと、
ジットリと赤黒いサビにおおわれた壁に自分が囲まれている心細さ…

かつての豪華客船の部屋には、当時のまま凝固して、
ゆっくりと腐っていくかのようにベッドやイス・机があり、
その様は「部屋の死体」を思わせる…

ベッドの上に置きっぱなしの、カッと目を見開いて薄笑いする人形は、
今、ユラリ… と、こちらを向かなかったか…?

ビクビクしつつ、真っ暗なエンジンルームを、
足元をライトで照らしつつ進んでいたとき、そのライトの黄色い丸の中に
「こちらを向いて立っている人間の足」が見えたときの恐怖といったら…
(正体は鎧でしたが)

何より恐ろしかったのは、沈没後、何十年も
カギがかかったまま密閉されていた部屋をようやく開いたとき…
そんなことは絶対あるはずないのに、中でユラユラと動き回る大きな魚が!!
ギャーーーッッ!
(これは密室判定をせずに魚オブジェクトを動かしているアリカが悪い)



夜中に1人で遊んでいて、本気で怖かったです。

意外な拾い物でした。(笑)




ゲームとしては、コレクション物としてはまあまあ楽しく、
探索モノとしてはやや物足りない。
丁寧ではあるが、ちょっと「売り」がボヤけた作品でした。

すでに出ている「2」では、
ここらへんを改良しているのだろうか?


ちなみに今年の8月、3作目(?)にあたる
『フォーエバーブルー』任天堂から発売になるとか。
ただ、「宝捜し」はサブの目的になるようですが…






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