Nintendo DS用

『ゼルダの伝説
  夢幻の砂時計』



販売: 任天堂

プレイ時間 : クリア1回

購入価格: 1980円

執筆日: 2008年 07月22日





■第1章 『今度はDSだ』


『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』は、
同社の看板タイトルである「ゼルダ」シリーズのDS版で、
パズル性の高いアクションRPGです。

ともに冒険の船旅行をしていたゼルダ姫が、
幽霊船の魔力に捕らわれて行方不明になってしまいます。
それを追い、姫を救出するのが今回の冒険の目的です。



あらゆる任天堂ハードで販売されている大看板タイトルなので、
従来の基本システムなどの説明は一切せず、
当作品特有と思われるシステムについてのみ批評してみようと思います。


ちなみに、筆者自身のゼルダ体験は…


  友人に借りたFCディスク版 『ゼルダの伝説』 (途中で挫折)
  ⇒ SFC版 『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』 (クリア)
  ⇒ GB版 『ゼルダの伝説 夢を見る島』 (クリア)
  ⇒ 64版 『ゼルダの伝説 時のオカリナ』 (買ったけど遊んでいない)
  ⇒ エミげふげふFCディスク版 『ゼルダの伝説』 (攻略サイトに頼ってクリア)




…そして今回の『〜夢幻の砂時計』です。

まともにゼルダの新作を遊ぶのは10年以上ぶりなので、正直ちょっと緊張しました(笑)







■第2章 『DS版の特徴』


それでは、DS版の特徴的システムと、その所感について述べてみましょう。
なお、文中の動作表記は、分かりやすさを考慮して
パソコンのマウス操作の言葉を使っています。



『タッチペンシステム』

DSだから当たり前とも言えますが、
シリーズ物でありながら従来の十字ボタンによる操作をスッパリ捨てる
大英断には、製作者の底力を見せつけられる思いです。

画面内の行きたい場所をタッチペンでドラッグすれば、
主人公リンクがそこに向かって走り出します。

当然、途中になどがいれば激突しますし、
があれば壁に向かって空しく足踏みするばかり…
ちゃんと途中を考慮してあげる必要があります。


このシステムで大きな恩恵を受けたのが攻撃です。

上下左右にキチンと位置取りして戦わなければならなかった従来と違い、
敵を直接クリックした途端に、リンクが雄叫びをあげて飛びかかり、ほとんど一撃…
固い相手でも2〜3撃で撃退するので、ほとんど苦労しません。

最強の回転斬りも、リンクを中心にタッチペンで
クルリと円を描くだけで出せてしまい、手軽かつ強力。

一応、「一定時間ごとに体に電撃をまとう」ことで
リンクにダメージを与える敵や、背中からしかダメージできない敵を設けて、
ユーザーがタイミングや向きを考慮しなければならないケースもありますが、
かつての難度を知っている者にとっては
『いいのか? これ』と心配になるほどの低難度

「タッチペン」オンリーという特異なシステムを考慮して難度を下げたのか、
アクションよりも謎解きに集中してほしかったのか、
作り手の真意は分かりませんが…

シリーズ屈指の低難度(アクションについて)という点だけは正しそうです。



『書きこめるマップ』

これをシステムとして大々的に推したのが『世界樹の迷宮』(アトラス)ですが、
もう少しライトな「メモ感覚」で使えるようにしたのが当作品です。

アイディア的には単純そのもので、
マップ画面上に「絵掲示板」の機能を持たせただけです。

別に文字をメモする必要はありません。
画面いっぱいにドラえもんを描こうが、まったくプレイヤーの自由。
指向性を持たない、思い切ったシステムです(笑)

もちろん、その「指向性の無い」ツールをいかにうまく使うかで
ゲーム難度が変化するわけですが、そこはシステムではなく、
製作者の構成や謎の上手さによるところ。

システムの評価とは異なるため、ここでは深くはふれず、
後ほど改めて考察しようと思います。



『時の砂』

これは、後述の「海王の神殿」探索に必要な必須アイテムです。

「夢幻の砂時計」に入れられたこのが落ちきってしまうと
神殿から強制的に追い出されてしまう
いわば、酸素ボンベの酸素のような存在です。

ボスクラスの敵を倒すと追加されますが、
まれに海底からサルベージして入手する事もあります。



『サルベージ』

海図に記された「宝物が沈んでいる場所」に船を停め、
巨大なアームを海底へと投下して、
壁や敵にぶつけないよう避けながら宝物を引き上げます。

ようは、アクションミニゲーム… といった所でしょうか?

メインは「船のパーツ」ですが、
まれに「時の砂」をゲットできるケースも…



『相棒ラインバック』

主人公と旅を共にする、中年男性ラインバック

主人公リンクが特殊な能力を持つとはいえ、
大の大人が少年の後ろについて回って、そのオコボレにあずかろうとする姿には、
ギャグを通り越して色々と思うところがあります(笑)

世の中にあふれる商品を見渡せば、旅のお供には
愛らしい少女あたりをお供につけるのが常套手段ですが、
もう1人のお供「シエラ」は妖精で、しかも少女的な心は持ちながらも
「光の塊に羽根が生えた生物」という姿…

思い切ったことをしたものです(笑)


もちろん彼のおかげで、他のゲームでは味わえない
やり取りが体験できることは確かですが、
これなら現実でいくらでも似た経験ができるよな… と考えてしまうのは、
僕が、そういう人間のあふれる会社人生活が長くなりつつあるからでしょうか?(笑)

彼の存在は、新たな「メガネくん」(by 竹熊健太郎)への
提案と呼べるかもしれません。



『船』

主人公の乗る船は当初、敵の攻撃に4回耐えられる耐久力を持っています。

が、海賊船を倒したり、宝の地図を見つけて読むことで、
海底に沈んだパーツを発見…
サルベージして自船に装着する事で、その耐久力を上げることが可能です。
パーツの中には、商店で販売しているものもあります。

また、船を目的地に進ませるために、
途中経路をタッチペンで直接マップに書き込む
という珍しい行為が要求されます。

目的地までは船は自動的に進んでいきますが、
その間の手持ちぶさたさを回避するためか、
障害物が現れることもあります。
が、ほとんどは難なく撃退できる難度です。

ちなみに、世界全体に6匹の黄金のカエルが存在し、
これを利用した移動ショートカットが、ゲーム中盤から使用できるようになります。







■第3章 『良いところ』


それではまず、当作品から感じた良さげな箇所を、思いつくままに…



『構成の上手さ』

プレイ中の間延びを極力無くすため、
常に小目的・中目的を置いている構成は本当に見事です。

最初の頃に感動したのが、
頼まれ事をこなしてあげた男性が小額のルピーしか渡さず、
「おいおい、これっぽっちかよ?」と思わせておいて、
『そのお礼で不満なら、マップの○○にある木に体当たりして
出てきたものを君に上げよう』
と言われるシーン。

これによってプレイヤーは、まず、
「マップにメモをとる」行為の重要さを体験できます。

かつ、「すぐに行ける場所ではない」ため、
先に進んだ時の楽しみを「お預け」されている状態が、逆に
「少しでも早く先に進めたい」というモチベーションの維持として機能します。

ちょっと姑息かな?(笑)と思わせる面もありますが、
プレイヤーの心理を熟知した作り手の物作りにふれられる意味で、
さすがは任天堂商品… と、唸らされます。



『海王の神殿』

夢幻の砂時計の砂が落ちきってしまうと
強制退去させられてしまうこの神殿は、
限られた酸素で海中を行動するダイバーのような緊迫感があります。

ゲームを進めていくと「時の砂」の所持量が増え、
結果的に、神殿内での行動範囲も広がっていきます。

ストーリー上、何度か足を運ぶ必要がありますが、先述の「時の砂」の増加と、
それまでに入手した武器・アイテムを駆使する事でショートカットが効くように
考えて構成されているため、実は最初のほうが高難度な迷宮かもしれません(笑)

自分の装備によって、迷宮の攻略がガラリと変化するわけです。

ダンジョンマップ構成の職人芸を見るような神殿ですが、
見た目の変化に乏しく階ごとの特徴が少ないなど、
「華」に欠ける点がちょっと惜しいかな…?



『メモをトコトン活かす構成』

単に謎のヒントをメモさせるだけではなく、
地図上に記したいくつかのポイントをで結ばせたり、
そのつないだ線を延長させたりして、マップ全体に隠された謎や、
秘密の宝箱の場所を大雑把に推理する構成になっています。

単純なシステムというものは、さまざまな「使い方」を提示する事で
いくらでも楽しみを広げられるのだ… という好例ですね。


1つ希望するとすれば、「線を書く」機能が欲しかった…

「2点を結んだ線を延長した先に…」と言われても、
そんなにキッチリとした直線は書けません(笑)

マップ自体が小さいので、小さなズレが、
実際のフィールドではけっこう大きくなってしまうので…



『後半の怒涛の展開』

最初のほうでプレイヤーの行動をトコトン制限しておき、
後半、それを取っ払うことで相対的な爽快感を与えるのは、
この手のゲームの構成テクニックの1つですが、
当作品のそれはかなり顕著です。

特に、最終最強アイテム『ハンマー』が手に入ると、
今までの自分の苦労はなんだったのだろう…?
と、虚無感が湧くほどのお手軽ゲームに早変わり(笑)

最終局面に向けて、ガスガスとゲームが進行します。







■第4章 『気になったところ』


続いて、気になった・困った点について…



『やはり船での移動は間延び感が…』

途中で、気軽に倒せて細々とお金が入るザコを用意したり、
船パーツを落とす海賊船を特定海域に徘徊させたり、
物売りやアイテムをくれる船も行き来するなど、
全体的に見れば多目的に楽しめる船の移動ですが…

遊べば遊ぶほど、どうしても間延び感を強く感じてしまいます。

ゲーム後半で、船の移動に飽きてしまい、移動中に軽く居眠りして
敵から大ダメージを受けた事すらありました(笑)

思うにこれは、時間あたりの見返りが陸地に比べて
グッと少ないからではないでしょうか?

ならば時間を縮めるために、例えばゲーム中盤ほどで、
船の進行スピードが1.5倍か2倍ぐらいになるパーツを入手できるように
しておけば、ゲームの印象はさらに上がったように思います。



『キャラの顔が怖い』

好き嫌いはあるでしょうが、線が太く単純化されたキャラクタ絵は、
芸術的(?)ではあっても愛らしさに乏しく、
あまり愛着を抱けませんでした。

特にリンクが回復薬を飲むシーンは圧巻で、
巨大な目をした手足がヒョロヒョロの少年が薬ビンを一気飲みして、
目を見開いて「ぐは!」と息をつく姿
は、
「子供が見たら泣くだろうな…」と余計な心配をしてしまいます。

もっとも、NHKの子供向けキャラクタにも
こういうバケモノじみた(こらこら)造型のものは多いので、
逆に子供に喜ばれるのでしょうか?

僕の幼少時は、あの手のキャラは個人的に大嫌いだったのですが…


特に困ったのが、助けるべき少女テトラ
ゼルダ姫が変身しているそうです)がサッパリ愛らしくない点。

謎に詰まったときなど、「あんなの助けてもなぁ…」
投げそうになる自分のモチベーションを維持するのは大変でした(脚色あり)



『タッチペンの宿命』

画面の右端にある仕掛けや敵を、
ウッカリ見逃したりする事がありました。

それは、僕が右利きで…
タッチペンを持つ右手で画面の一部が隠されてしまうからです。

これは、タッチペンという操作系が持つ宿命であり、
当作独自の難点ではないのですが、
大切な事なのであえて記載しておきます。



『海王の神殿、最初から高難度すぎでは?』

全年齢推奨ゲームとしては、最初から難度が高いように感じます。
特に、「海王の神殿」あたり…

というのも、僕は中古で購入したのですが、
前の持ち主「たくや」くんのデータが消えずに残っていたのです。
その内容は、一番最初に「海王の神殿」に挑むシーン。

たしかにこの場面は、初めて登場する「砂時計」による時間制限
「気絶はさせられても倒すことができない敵」で、一気に難度が上がります。
僕もかなり苦戦した憶えがあります。

深く考えられた構成の「海王の神殿」ですが、
それゆえにテストプレイヤーのプレイ頻度が高くなり慣れが生まれ、
それに合わせて難度調整した結果、製品版の難易度も
高くなってしまったのでは? と、推察したりもしています。


最初の持ち主「たくや」くんのプレイデータを見るたびに、
折角お小遣いを出して買ったのに、無念だったろうな…
と、切なくなってしまいます…







■第5章 『最後に』


10数年ぶりのゼルダは、かつてほど「初心者お断り」ではなく、
僕も2ヶ所ほど謎につまってネット上の攻略ページを頼った以外は
なんとかかんとか自力で突破する事ができました。
(つまったのは、「24513と書かれた5本レバー」「ワイヤーで火の玉をはね返して倒す双頭竜」

後半にほとんどの規制が外れてサクサク進む展開は心地良く、
特に水位が変化する巨大な島(『遺跡島』でしたっけ?)の辺りは、
サクサク感と、敵や壁をドッカンドッカン壊して進める爽快さで、
華もあり、とても楽しかった記憶があります。


一方で、「海王の神殿」以外のダンジョンが、やや薄味というか、
内部自体があまり大きくないせいもあってか手応えの弱さを感じました。

これは多分、DSの容量の限界でこれ以上大きくできなかったんだろうな…
と考えれば、「よくぞここまで詰め込めたものだ」
逆に感心すべき点なのかもしれません。


解くまでにちょっと時間がかかりましたが、
大半は「海上の移動」に費やした時間で、
そこがフに落ちないというか、もったいないなぁ… と思わせました。



アクションRPG好きの方にお勧めですが、
パズル性が高いあたりに好き嫌いが出ると思います。






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