プレイステーション2用

『アルゴスの戦士』


販売: テクモ

プレイ時間 : イージークリア

購入価格: 710円

執筆日: 2008年 10月19日





■第1章 『リンクの戦士』


『アルゴスの戦士』は、3Dアクションゲームです。

同社の往年の同名看板アクションゲームのリメイク…
というより完全な新作で、広いフィールドを走り回って、
チェーンのついた円盤状の武器「ディスカーマー」を振り回し、
敵を倒しつつ謎を解いていきます。

大ざっぱな言い方をしてしまえば、
全体的に難易度がゆるい『ゼルダの伝説』(任天堂)という感じでしょうか?







■第2章 『システム』


それではまず、当ゲームのシステムを大ざっぱにご紹介しましょう。



ディスカーマー

主人公の使う武器「ディスカーマー」は、一見すると円盤状の盾ですが、
長いチェーンと連動しているため、鎖鎌のような使い方が可能です。

最初は、前方に直線的な遠距離攻撃のできる
『冥』
のディスカーマーしか持っていませんが、
先に進むにしたがって、付近を360度カバーする『天』
前方近距離に素早い連続攻撃が可能な『海』の、
計3種を使い分けることになります。

敵を倒すことで手に入る宝玉をある程度ため、
それと引き換えに各々の性能をアップさせる事も可能です。

また、成長アイテムによって、
特殊連続攻撃(ヴァリアントブロウ)を会得したりもします。



スナップ攻撃

ディスカーマーに引っかけた敵を、
自分を中心にブンブン振り回すことも可能です。

近くにいる敵に一気にダメージを与えられますが、
近距離を360度カバーしてくれる『天』のディスカーマーが手に入ると、
面倒なので使わなくなってしまいます(笑)

振り回している敵を放して、その方向に投げつける事もできます。



追加アクション

ディスカーマーを使って、一気に高い場所に昇ったり
ターゲットに引っかけてターザンのように振り子移動したりできます。

スライディングして低く狭い穴を通り抜けたりもします。

この手のアクションによくある、
「新しい移動手段で、ほら、行ける場所が広がったよ〜ん」
というヤツです。

ディスカーマーを使ってのアクションは、
「ターゲット」と呼ばれる小さな球状の物に対して行われます。

頭上の赤いターゲットをディスカーマーで叩けば頭上に登り、
空中の黄色いターゲットを叩けばそこを中心にブランコ状態になる、
という感じです。

現在の向きでディスカーマーを放った場合に
ヒットするターゲットがキラキラ光ってくれるので、
とても分かりやすいです。



使い魔

シューティングのボンバー攻撃のようなもので、
ゲージがたまっていれば使用可能。

付近の敵に大ダメージを与えたり、一定時間動きを封じたりします。







■第3章 『良いところ』




手ざわりの良さ

類似のアクションゲームとして、
『デビル・メイ・クライ』(カプコン)
『真・三国無双』(コーエー)などがありますが、
当ゲームはそれらの中でも筆頭の心地良い手ざわりを持っています。

入力になめらかに反応する主人公、
大ざっぱな入力でもサクサク進行できる自動壁避けなどの内部補正など、
同系列のゲーム群の中でもトップクラスの反応の心地良さには
感嘆する他ありません。



フィールドの美しさ

古代の夕闇のコロッセオに始まり、
美しい空の下の水に恵まれた石造りの町
深い山岳地帯

果ては、幻想的な空中都市生物じみた異空間など、
それぞれのテーマで統一された深く美しい風景が描写されるさまは、
そこを歩いているだけで1つの商品的価値を実感するほどです。



音楽の心地良さ

荘厳でありながら聞き疲れない、耳になじむ心地良い曲が多いです。

長時間のプレイもあまり苦になりません。



低めの難易度

自分が中盤からイージーモードでプレイした事もあるのでしょうが、
全体的な難易度が同系列のゲームの中でもかなり低く、
敵の出現も少ないです。

そのため、上記の手ざわり・風景・音楽を存分に楽しみながらの、
ハイキングのようなのんびりプレイが可能(笑)

強力なディスカーマーを振り回しながら、
すみずみまで歩き回ってやろう! という気分にさせられます。



いろいろ壊せる

フィールドに大量に配置されている、石造りの柱や像・建物などは、
ディスカーマーでバッカンバッカン破壊できます。

叩いたときに表面にホコリが立つものは、まず確実に破壊が可能で、
目につくさまざまな物を手当たりしだいに壊していくのは快感です。

というか、壊して成長アイテムを溜めないと後半がたいへんですので、
敵の撃退よりも自分の町を破壊しまくる形になりますが…

スタッフも、自分の町を無意味に破壊しまくる主人公は
さすがにマズいと気づいたのか、途中で入手する書簡だか何だかに
『敵モンスターの中には、彫像の中などに入り込んで、
それを鎧のようにして襲ってくるものもいるので、
石造りのアレやコレは、ためらわずドッカンドッカン破壊したらんかい』

的な記述をして、主人公の破壊活動を正当化しているほどです(笑)







■第4章 『悪いところ』




劣悪なカメラアングル

第3章で紹介した、このゲームのさまざまな良さが、
カメラアングルの悪さ1つでほとんど粉砕
されてしまっているのは、本当に惜しいことです。

『バイオハザード』(カプコン)以降、3Dフィールドを区画で分け、
それぞれの場面に適したカメラアングルを設定して
プレイヤーの遊び勝手を向上しようというシステムが一般化しました。

当ゲームもそのシステムを採用しているのですが、
遊び勝手よりも風景の見せ方に比重を置きすぎたのでしょうか?
アクションゲームとして、凄まじいまでの理不尽な場面が続出します。


敵と主人公がカメラから遠すぎてどこに攻撃してイイか分からない
なんてのは初歩の初歩ですし、これぐらいならディスカーマーを
めちゃくちゃに振り回せば何とかなるので可愛いレベルです。

問題は、カメラ視点の切り替わる区画の近くで戦闘している場合。

プレイヤーが敵を目視できないまま、
ダメージを受けつづけるのです。


これは、「カメラ視点」は区画ごとに管理しているのに、
「動いている敵」はフィールド全体で管理している

といった差異に起因する遊び勝手の悪さのようで…

カメラアングルは現在の区画しか映せないのに、
その区画外から敵の攻撃を受けるという理不尽さによるようです。

(具体例を1つ挙げると、画面内には敵が1体も映っていないのに、
どこからかビームが飛んできて主人公がダメージを受けます。
で、主人公がTVの画面… つまり、プレイヤーに向かって
ディスカーマーを投げつけていると、ビームを撃っていたザコを倒せました。

こういう『プレイヤーが見えない敵を、主人公が倒している』場面を
何度も見せられると、主人公との一体感がそがれてシラけます。)



また、広いフィールド上では比較的ロングになりがちな視点のせいで、
段差の程度が分かりづらい場面が多いです。

10センチほどの小さな段差に気がつかないせいで
主人公をジャンプさせるまでその先に進めなかったり、
ジャンプ先が複数ある場合にどれに飛べばイイか分からず
(当然、飛んだ先が高ければ失敗しやすく、低ければ成功しやすくなる)
空しいトライ&エラーを繰り返したり…


その最たるは、ラスト近くの『空中都市』で、
どこに飛ぶべきか、どの程度離れているのかもアヤフヤなまま、
少ない足場を長時間渡り歩かねばならない展開は拷問そのもの。

ジャンプを失敗しては、近くの岩場からやり直し。
しかも何が悪かったのかが、視点のせいでなかなか分からない…


クライマックスに向けて一気に盛り上がりたい場所なのに、
ここで一気にゲーム展開が間延びし、
「なんだかな…」感がドロドロと湧いてきます…



不快な画面切り替え時

画面が切り替われば、当然「カメラアングル」も変化します。

が、この時、カメラアングルが一気に
180度近く変わってしまう場面には困ったものです。

いや、他のゲームでも同様の場面はあります。
その対処策として、皆さんもご存知の
『プレイヤーが方向レバーを傾けたままなら、
アングルが変わった後も、変わる前の方向に進みつづけるシステム』

が当ゲームにもあるわけなのですが…

どうも、入力方向の変化に対する反応が他ゲームより過敏なようで、
方向レバーを傾けたままであっても、ちょびっとその向きを変えるだけで、
再入力と見なされて主人公の向きが変化してしまうのです。


つまり、方向レバーを前方に倒して目の前の扉をくぐり…
その時に少しでもレバーの傾きをズラしてしまうと、
主人公はクルリと振り返って、今入ってきた扉に逆戻り!

元いた区画に戻ってきた直後に、
またレバーの微妙な傾き変化を感知してUターン…
と、そんな事を3〜4回もくり返す、ギャグのような事態に陥ってしまうのです。


プログラムは詳しくないのですが、例えばレバー角度が
左右あわせて15度以内の変化であれば無視して方向転換させない、
といった補正を加える事はできなかったのでしょうか?

いや、多分できるのでしょう。 それが他ゲームと当ゲームとの
手ざわりの差となって現れているのでしょうから…

こうした部分への気配りも、欲しかったところです。



工夫の無いストーリー

アクションゲームですから、その目的程度のストーリーが
付いていればそれはそれで良いのかも知れませんが…

ほとんど全ての要素がどこかで見たことがあるというか、
使い古されて似通ったものばかり…

なので、所々で挿入されるイベントシーンも、
見聞きしていて実に眠かったです。



さびしいザコ戦闘

ザコの出現数は決まっており、倒したら二度と現れないので、
どんどん静かになっていくフィールドを見るのは達成感はあります。

が、フィールドに対するザコの数が絶対的に少なく
忘れた頃に現れては、あっけなく全滅させて先へ進む…
の繰り返しなので、印象が希薄です。

種類も、「ダンゴ虫」「空中をワープしつつビームを撃つやつ」
「とんがった小人のような生き物」
の3つぐらいでしょうか?

先に進むにしたがって、そいつらが硬くなったり色が変わるだけで、
大した違いもありません
深く考えずに『天』のディスカーマーを振り回していれば全滅してくれます


思い返してみると、
倒したザコの総数より、
破壊した建造物のほうが多かった

ように感じるのですが、気のせいでしょうか?(笑)



いろいろ壊せるとはいえ…

壊せるものは、彫像や、道ばたの岩、建物のヒサシなど…

超巨大な建物本体を大量にドガガ〜〜ン!と壊すわけではないので、
何か道ばたの掃除をさせられているような気持ちになる事もしばしば…

いや、たしかに色々な物を壊せるのは気持ちいいんだけどね。







■第5章 『まとめ』


手ざわり・風景・音楽による、すばらしく心地良い世界

それを、ありきたりな物語と、
自分を確認するのが困難なカメラアングルで、
不快で眠たい空間におとしめた。

このゲームは、一言でいえばそんな商品です。



材料はどれも高品質ですが、それをゲームとして構成したときに、
遊んで楽しいものにまとめあげる力量が構成者に足りなかったのでは?
と思います。


キッチリとした良いゲームを求めている人にはお奨めしませんが、
「『デビル・メイ・クライ』のようなゲームが好きなんだけど、
もっと気軽な難易度で遊びたいな」
と思っており、
パズル的思考も好きな方には、けっこう肌に合うかもしれません。

ワゴンセールなどで投売りされているケースも多いので、
安ければ試してみても良いのでは?






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