プレイステーション用

『せがれいじり』


販売: ENIX

プレイ時間 : クリア1回

購入価格: 640円

執筆日: 2008年 10月30日





■第1章 『SWITCH 再び』


『せがれいじり』は、強いていえばアクションアドベンチャーゲームです。

かなり特殊なシステムなので、以下に大ざっぱな流れをまとめてみましょう。



ゲームを始めてみると、周囲を(簡素なグラフィック)
で囲まれたフィールドが広がっており、基本的に横視点のそこを
ジャンプアクション風に移動していきます。


フィールドの所々には『オキモノ』と呼ばれるオブジェクト(簡素なグラフィック)
があり、そばで○ボタンを押すと『さくぶん』スタート。

相手が提示する3段階(1段階ごとに、1〜3の選択肢アリ)の言葉を
自在に組み合わせて文章(「〜な、〜を、〜する」みたいな)を作ると、
それに応じたギャグムービーが流れます。


で、選択した内容によっては、
『新たなオキモノ』が別のところに出現するので、
そこでも「さくぶん」したり、新たなオキモノが生まれたりする…
の繰り返しになります。
(たまに、「さくぶん」できない、1発ギャグ的なオブジェクトも出現します)


「さくぶん」できる回数は各々のオブジェクトごとに3回程度なので、
そのままでは全てのギャグムービーを見ることはできません。

なので、自宅にいるママ(キリンの首)から『ママクエ』(クイズ)を受け取り、
それを解くために行動する事になります。
ママクエを1つ解くたびに、現在フィールド上に出現している
全てのオキモノについて「さくぶん」できる回数がプラス1されます。


新しいオブジェクトを出現させて、
それらに初めて触れるたびに、ママの首が伸びます。
一定まで延びるたびに、主人公の行動可能範囲が広まったり、
マップが手に入ったりします。
RPGのレベルアップのようなものです。




要は、色々なパターンの「さくぶん」(言葉の組み合わせ)を試して、
イモヅル式に出現オブジェクトを追って行き、
最終目的である主人公の一目ぼれの相手
住む場所に通じるトビラを開くだけのソフトです。



さまざまなルートを試しつつ、その過程でギャグムービーを
見せら 見ることができる、という意味で、メガCDで発売され、
後にプレステ2に移植された『SWITCH(スイッチ)』
というゲームを思い出した方も多いのではないでしょうか?

アレよりも、文章選択の分手間がかかりますが…
ゲーム概要は実によく似ています。







■第2章 『良いところ』




『ギャグムービーの圧倒的な量』

3段階に提示される言葉が1〜3通りずつあるという事は、
つまり、最大 3×3×3 = 27通り
のムービーが用意されているという事です。

もちろん全てがそういうわけではありませんが、
オキモノは総数40で、それぞれに平均15の選択肢が
あると考えても、総ムービー数は600!!
異常な量ですね。

制作者の努力には、頭が下がります。



『同じムービーを二度見なくていい』

正確には、間違って見てしまわないように、
3つの言葉を選択した後に、すでに見ているかどうかによって
ムービースタート直前画面が変化します。

「あ、これ以前見たヤツだわ」と気づいたら、
キャンセルボタンで一段階ずつバックが可能です。



『じょじょに賑やかになる画面』

オキモノのさまざまなムービーを見ていくにしたがって、
次第に付近の飾りオブジェクトの数が増えていきます。

つまり、どんどん画面がにぎやかになっていく。

簡素な飾りですが、達成感のようなものが増していく
演出として成功していると思います。



『手描き風アニメーション』

ギャグムービーには、
「テクスチュアがややリアルな、キモ可愛い系をねらったもの」と、
「同じくキモ可愛い系だが、紙芝居風に、プレイヤーがページをめくるもの」と、
「単色の手描き風アニメーション」の3つがあります。

手描きアニメは一見手抜きに見えますが、
細かな動きが凝っていて心地良いです。

実はかなり手馴れた人が原画をしている、と見ているのですが…







■第3章 『悪いところ』





『ギャグムービー多すぎ』

最初は楽しみなムービーも、それを見るために
いちいち3段階の単語を選択させられる手間のせいで、
プレイが長引くにしたがってどんどん億劫になってきます。

1つのオキモノに対して、最大27通りの組み合わせという事は、
そのオキモノを発見した後に24回
「ママクエ」をクリアしないと全てを見れないわけで…

これでは、『手間が異様に増えた SWITCH』
としか言いようがありません。


というか、
「全体的なギャグの質の低さを、
数でゴマかしているのでは?」

というのが、正直な気持ちです。

「基本的に下ネタで、バリエーションの幅が狭いこと」以前に、
制作者自身がすでに、何が面白いのかの判断基準を見失って
暴走してしまっているかのような…

他人の見た夢の話を聞かされたときの、あの、
制御を失った深層心理の吐露を見せつけられ感覚と似ています。

「そんなこと言われても…」と思わずにはいられない、
背筋の寒くなるあの感覚…

そんなムービーに連発されると、
ちょっとした怪談ゲームを遊んでいるような
ジワリとした恐怖が湧いてきます。

差し迫った開発期間に制作サイドの平常心が崩れて、
なんでもかんでも「楽しく」思えてしまうハイ状態との戦いは、
ゲーム開発のありふれた1つの壁です。

先人の言葉に、『物作りは、自分を制御してナンボだ』
というものがありますが、
当ゲームが開発者の心の制御がなされた結果の商品か?
と聞かれれば、遊んだ限りではNOと言わざるを得ません。

(ちなみに自分は「ギャグ」というものに深い敬意を感じているので、それゆえに
当ゲームのギャグへの評価が厳しくなっている可能性が否めないことを付け加えておきます。)




『飾りがジャマ』

じょじょに増えることで達成感を感じさせてくれる飾りたちですが、
一方で、オキモノとの視覚的差異が少ないため、
どれがオキモノか分からなくなる場合があります。

もちろん接近すれば、オキモノの場合「名前」が表示されるのですが、
いちいち接近するのも面倒な話です。

最終的に、1つのオキモノごとに10個近い「飾り」が出現するようで、
良く言えばオモチャ箱、悪く言えばゴミタメのような大混乱状態に…

例えば「飾り」の明度をオキモノの半分にすることで、
相対的にオキモノを目立たせる…
などの配慮が制作サイドに欲しかったところです。



『寒いエンディング』

手っ取り早くユーザーをだまして感動させる物語のテクニックとして、
『最後に別れを用意する』という物があります。

簡単なのは、お世話になった人や友人を殺してしまう展開。
前者は「寿命」、後者は「主人公をかばって死亡」あたりが
ポピュラーでしょうか?

「やった〜、クリアしたぞ!」と心が高揚しているプレイヤーを、
唐突に別れの悲しみに引きずり落とせば、
その急激な落差にたいていは涙して
『いい物語だったよ!』錯覚してくれるので、
これを使わない手はないよね!(笑)


…で、このゲームの場合だと、先述のママが最後に
首が伸びすぎてしまったので主人公を置いて勝手に引っ越す
という『別れ』を用意しています。

悲しげな音楽や、地面に対してナナメになったカメラアングルなどで
主人公の哀れなあわてぶりをこれでもかと演出しています。

それ自体は、ベタですがまあまあ上手いと思います。


でも、最後のこんな所にだけヘンに力を入れているのを見せられると、
『終わり良ければ全て良し』みたいな
ユーザーをナメた開発者の技巧ぶりが
逆にどんどん鼻についてくる…



どうも、TVのバラエティとかバカやってる商品て、
最後にお涙頂戴な展開にして、「良いものを食べました」みたいな
錯覚をユーザーに植え付けようとする傾向が強いよね。


笑いなら、笑いに徹しろ!!

著名なギャグ漫画家などを見習え!!

と、苦言してやりたい所ですが、
ウチみたく小さなサイトでは発言力も無いので悔しい〜(笑)





総評としては、ゲームを本当に時間つぶしとして使用したい人で、
ギャグに対しても特にこだわりませ〜んみたいな人なら、
ワゴンセールしていれば試してみても良いのでは?という感じでしょうか?

責任はもちませんが。

ちなみに、プレステ2で続編も出ているようなので、
そちらで難点が解消されている事を祈るばかりです…
別に買うつもりは無いですが(笑)






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