ゲームボーイアドバンス用

『ゼルダの伝説
ふしぎのぼうし』



プレイ内容 … クリア1回。 「しあわせのかけら」残り2つ

販売 : 任天堂

執筆日 : 2009年 04月03日





■第1章 『カプコン』


『ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし』は、
任天堂の看板タイトル「ゼルダ」シリーズのGBA版の1つです。

今回は、主人公リンクがいつもかぶっている
緑色の帽子の誕生秘話のような話です(笑)



驚かされるのが、任天堂の看板作品にも関わらず、
OPでカプコン社のロゴが同時に表示される点。

開発カプコン販売任天堂という事でしょうか?

大手ゲーム会社の壁も、気づけばこんなに低くなっていたのですね。
(もちろん過去にもこういうケースは度々ありましたが、
ここまでババーンとロゴを表示するケースは珍しいと思います)



任天堂が築いてきたタイトルを、
カプコンスタッフがどのように解釈して形にしたか…
それだけでも大きく興味を惹かれます。

それでは、体験してみましょう。 カプコン版「ゼルダの伝説」を。

(ちなみに実は、このゲームをクリアしたのは2009年1月末のこと…
この批評を書くまでに、忙しくて2ヶ月ほど期間が開いてしまっています。)
一応当時の批評メモを見ながら書きましたが、細部に勘違いがあるかもしれません。
お気づきであれば、ご一報いただけると幸いです。)








■第2章 『システム考察』


それではまず、従来の「ゼルダ」シリーズでは見られなかった
新システムについて検証してみましょう。



『自分の身長の変化』


今回のリンクは魔法の力によって、
ゲーム序盤から自分の体の大きさを
『人間サイズとピッコル(小人)サイズに切り替える』
ことが可能になっています。

これによって、
「人間サイズではとても入ることの出来ない小さな穴に、
ピッコルになって侵入」
できたり、
「ピッコルサイズでは到底越えられない段差を、
人間サイズで楽々またいで進めたり」
します。


つまり、自分の身長によって移動可能範囲に差異が出る

それを考慮することで、入れないと思われていた場所に、
遠回りでも進入する事ができる。

そうした、パズル性を持ったフィールドを
攻略していく楽しさを持つ作品なのです。



もちろん今までのシリーズでも、
「水かき が無いと川をわたれない」などの移動制限は存在しました。

が、移動系アイテムさえ入手してしまえばOKの従来の移動制限とは異なり、
「身長変化」には『エントランス』と呼ばれる
特定のゲートを通過する必要があるため、
その位置も考慮した思考が要求されるのです。


つまり、「ここでは小さくならなければならない」事が分かっていても、
付近に置かれている(あるいは隠されている)エントランスを
通過しない事にはどうしようもない。

また、近くにエントランスがあっても、
それが必ずしも「今、自分が行きたい場所」に
関わるエントランスとは限らない場合があります。

一見無関係のように見える遠くのエントランスを通じて、
遠回りに目的地を目指す場合もある、というわけです。

(こうしたマップ構成の巧みさはゼルダシリーズのお家芸ですが、
カプコン開発陣はその辺りをキチンと理解していると考えられます。)



「見えているのに行けない」ポイントを先にユーザーに見せておいて、
後々へのモチベーションを維持しやすいのも、このシステムの利点です。

それはもちろん、
『そういう巧みな構成をマップに持たせている』
開発陣の手腕あってこそ、ですが。




『しあわせのかけら』


イベントによって誰かから…
あるいは、道中の草木を剣でなぎ払っていると
ランダムで、かけら が手に入ります。

元は1枚のコインのようなものが真ん中から割れた半月状の破片で、
4種類ほどの色と、さまざまな境界があります。

これを持った状態で、町の人と隣接していくと、
ホワホワ〜と頭上に雲のような「吹き出し」が出てくる者がいます。

これは、「私もカケラの半分を持っていますよ」という意思表示。
その人の持っている破片と自分の破片が、色・形ともピッタリ符合すれば、
コインのエネルギーは空の彼方に飛んでいき、
ゲームフィールドのどこかに変化をもたらします。



その結果は、『通路のジャマをしている大岩を破壊する』といった、
ゲーム進行上、絶対に無視できないベントだったり…

草原の中にポツンと宝箱が現れて、
そこに行って箱を開けてみると大量のルピーが手に入る
といったオマケ的なものだったりと様々です。


自分が相手の望むカケラを持っていない場合は、
無視して先に進むことも当然できます。




『連射できまくりな剣』


かつてこれほど、剣を連射振りできるゼルダがあったでしょうか?

『スト2』の弱攻撃のようにズガガガガと連射できる剣は、
攻撃範囲こそ広くはないものの、大変に心強いです。 

しかも、一撃を与えてフッ飛んでいる途中の敵に、
さらに連続ヒットする…

つまり、『敵には、フッ飛び中の無敵時間が無い』のです。


その乱暴なまでに主人公に有利なシステムは、
従来のゼルダが別ゲームに思えるほど、
主人公リンクを攻撃的な青年にしてしまっています(笑)

さすがはアクションゲームの雄、カプコン。
爽快感に対する追究が1枚も2枚も上手です。







■第3章 『細かい良し悪し』


続いて、プレイしていて気がついた良し悪しについて…



『アイテム・ルピーがザクザク』


道中で草刈りなどをしていれば、
ルピー・弾薬・体力回復があふれるほど出てきます。

おかげで、従来のような、
体力切れ・弾薬切れを恐れてのビクビクプレイではなく、
消費系アイテムを使うと思しきさまざまな謎について
「積極的に試そう」という気分にさせてくれます。


強いて難点を言えば、ルピーや弾薬が余ってウンザリしたり、
「カケラ合わせで大量のルピーが埋まっている場所を教えてもらったが、
ルピーがMAX状態なので後回しにせざるを得ず、
その場所を憶えておくのがちょっと面倒」な点などですが…

言うまでもなくこれは、贅沢な悩み
従来の同シリーズからは、到底考えられない事態です(笑)

ゲームのスピーディな進行という意味では、
間違いなく「前進」を生んだバランス調整
だと思います。




『音楽が秀逸』


フィールドのほとんどの場所のBGMが、
第1作のフィールドBGMのアレンジバージョン…
という、にくい作曲がなされています。

特に、ゲーム後半の「雲海フィールド」のBGMは、
疾走感と勇壮さを持ち合わせた名曲です。

ゲーム全体からすると利用頻度が少ない場所なのが本当に悔やまれます。


あと、「ピッコルの村」のBGMが心地良いです。

当作の作曲者は
『高野充彦(たかの みつひこ)さん』
だそうです。 メモメモ。




『カケラ合わせがやや面倒』


「何か得があるのでは?」
「実は、重要なイベントを飛ばしてしまったりしていないだろうか?」
と考えると、とにかく気になるのがカケラの存在…

当作は、従来のものと比べてもかなりNPCの数が多く、
それがさまざまな土地に分散しているので、
まったく新しいカケラが手に入ったときに、それらの人々全てに対して
イベントが発生するかどうかを確認(隣接する)するのがかなり大変
です。

カケラ合わせは必ずしも1キャラ1回ではない
(複数回受け付けてくれる人がいる)ので、油断ができません。


カケラ合わせは1キャラ1回として、
すでに終わった者の一覧が確認できるようになっていると、
もう少しスムーズにいったのでは?と思っています。




『ニテン堂』


フィギュア店「ニテン堂」で、
フィギュアを買うときの一連の操作が手間です。

というか、1回1回のメッセージ量が多い気がする。
そのせいで、足が遠のきがち… 貝殻は余りがち…(苦笑)







■第4章 『さいごに』


従来のシリーズの(きも)をシッカリと研究して作られており、
その上でコレクション性を高める
プラスアルファのアイディアも光る、見事な作り。

ボリュームも十分です。


カプコンという他社だからこそ、
ユーザーと作り手としての視点をバランス良く持ち合わせて
作り上げる事ができた秀作
… と言えるのではないでしょうか?

任天堂ゼルダのみをプレイしているユーザーにも、
ぜひとも体験してほしい心地良さでした。






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