プレイステーション2用

『塊魂』




 筆者プレイ内容 :
  ステージ5まで。 約10時間プレイ。


 制作 : ナムコ

 執筆日 : 2009年 07月04日






■第1章 『アサルト魂』


『塊魂』は、アクションパズルゲームです。

かなり不思議なゲームなので、
まずは簡単なシステム紹介から入ろうと思います。



まず主人公ですが、5センチほどの小さな宇宙人です。

その彼が、物体をくっつける能力を持った
不思議なボールを押して転がします


このボールの動かし方がちょっと変わっていて、
同社の『サイバースレッド』(古いですか?)
『ASSAULT』(古すぎですか?)と同じです。

要は戦車です。

PS2の2本のアナログスティックが、
それぞれ左右のキャタピラに対応している感じで…

両方を前に倒せば前進、後ろに倒せば後退です。
また、右スティックを前、左スティックを後にすれば、
急速に左へと旋回したりもします。

戦車ではないので、両方を同時に右に倒せば、
そのまま右移動… といったことも可能です。

(戦車ではなく、人間の足に例えたほうが
シックリ来るかもしれませんね。)




ボールには、触れた物体が引っつきます。

が、あまり大きな物は付着させる事ができません
(目算で、現在のボールの4分の1より大きいぐらいの物)


この、付着させる行為を、『巻き込む』と言います。
また、ボールに色んなものが付着したそれをと称します。

小物をどんどん巻き込んでいくと、
塊自体が大きくなって(レベルアップして)、
今までは巻き込めなかった「もう少し大きな物」も
巻き込めるようになります


「もう少し大きな物」も含めた色々なものを巻き込んで、
さらに塊のレベルアップを目指す。

指定時間内に、指定された大きさまで
塊を大きくできれば、そのステージはクリアです。




つまりこれは、国産RPGでありがちな
『今の自分の力で倒せる敵を探して戦う』
『レベルアップしたら、さらに強い敵を探して、また戦う』

という成長の快感を、簡単な操作でパパッと楽しめるゲームなのです。

部屋の中に散らかったゴミを、
表面に接着能力のあるコロコロローラーに付着させて掃除し、
きれいになった部屋を見て悦にひたる…
という、あの快感を楽しめるゲームとも言えます。



ノルマを達成した塊は、「星」として夜空に浮かべ、
好きなときに眺めることができます。







■第2章 『良し』


ご存知の方も多いと思いますが、
僕はこうした野心的なアイディアのゲームが大好きです。


ところが実際に遊んでみると、どうも
想像していたほど手軽でスピーディなゲーム展開が味わえない
何か、遊べば遊ぶほど不快感が増すような気がするのです。

というわけで、その辺りの理由も考えつつ、
以下でこのゲームの良し悪しを見ていきましょう。



ただ最初に断っておきたいのが、僕がこのゲームを
ステージ5までしか遊んでいないという点です。
(全10ステージだそうです)

だから、トコトンまで遊びこめば、
また違った評価になるのかもしれません。

が、これを購入してから4年…
その間、チョコチョコ遊んでは飽きてイヤになって投げる…
をくり返しつつ、総計で10時間ほどは遊んでおり、
一応の批評は出せる程度は付きあったという自覚があります。

それが今回の批評に踏み切った理由です。

『こうすれば、楽しめるよ』という
遊び方のコツをご存知の方は、ぜひご連絡ください。





『シンプルさ』


マップ内で、目的に応じて適格に主人公を移動させる…

という行為だけ(ジャンプなども無い)でゲームが成り立っているので、
アッという間にルールを理解し、アッという間に遊べます。




『障害物すら巻き込む』


じょじょに大きな物を巻き込めると前述しましたが、
そのシステムを応用した面白い仕掛けがマップに施されています。

最初の頃に巻き込めない大きな物は、
いわば障害物として機能するわけですが、
主人公の運んでいる塊が巨大になっていく後半は、
当然、それらも巻き込めるようになるわけです。


…つまり、ある程度まで塊を大きくすると、
障害物すら(巻き込むことで)排除して、
その向こうに広がるマップに進む事ができる…

という、一ひねりある構成になっているのです。

この辺りは、マップ作成者のアイディアと手腕の勝利ですね。




『サイズのインフレーション』


このゲームでは、主人公がボールに物体を巻き込むほど、
より大きな物体を巻き込めるようになる

と前述しましたが、それが何を意味するのか?


最初は消しゴムやサイコロしか巻き込めなかったものが、
コップやクツ、スイカやサッカーボール、
テレビやダンボール箱と、じょじょに巨大化していき、
後半になると何メートルもある塊がゴロンゴロンと街中を転がりまわる

そんなスゴイ事態に発展していくのです。


近くを歩いている人間が塊を見て驚く、
といった演出も見られ、このゲームのかもし出す
『現実を浸食する虚構の面白み』が伝わってきます。




異常 独特な雰囲気』


毎回、ゲームスタート時(OPデモという意味ではなく)に流れるボーカル主題歌や、
常軌を逸したデザインのキャラは、独特の空間を演出しています。

ただ、キャラのデザインに関しては、主人公はまだしも、
横倒しにした万華鏡に西洋風の濃ゆいオヤジ面が張りついた『王様』や、
デモで出てくる輪郭の四角い地球人など、
見ているだけで背筋にイヤな汗がにじんでくる怖さも持っています。

一方、好きな人にはこれがたまらないのでしょうね。







■第3章 『悪し』




『パターンゲーム』


仕方の無いことかもしれませんが…

結局はフィールドのどの辺りに何があるかを丸憶えして、
それらをチクチク順番どおりに拾っていくだけの作業になりがち…

ステージが進んでも根本的な遊びの幅に変化は無く
どうしても単調さを感じずにはいられません。




『サラリーマンのように』


RPGなら、物凄い強敵でも、
工夫次第で勝利する事もある

そして、弱い敵からは決して入手できない
大量の経験値がドカンと入り、一気にレベルアップ!

といった、
『ショートカットの工夫の楽しさ』
『挑戦への意欲を受け止めてくれる対象』

があります。


が、このゲームは、あくまで
自分の巻き込めるものだけをチクチク集めるだけの日々

それほど頭を使わなくていい反面、
挑戦や工夫への意欲をぶつけられるものも無い。


安定はしているが、
何か遊んでいて眠たくなります




『3Dゲームとしての弱点テンコモリ』


このゲームの面白さを大きく損なっているのは、
結局この部分だと思います。


まず主人公の押している塊ですが、
これに物を巻き込まなければゲームは進みませんよね?
ですが、なぜかそれがあまりスムーズに行かないのです。

理由は簡単。

主人公が押しているということは、
『塊は常に主人公の前にいる』


つまり、一番重要な『主人公の進行方向』が、
塊の影になって見えづらくなっているのです。

もちろん、カメラ視点が主人公の頭上後方にあるので、
対象が離れているときは問題ありません。

が、イザ巻き込もうと接近していくと、
とたんに塊の影に対象が隠れてしまい、
目測で巻き込まなければならなくなってしまうのです。



しかも、たとえ塊が大きくなっても、
それに比例して地上の物体が巻き込みやすく
なっているわけではないように思えます。

多分、『塊が地面に接している狭い範囲』だけで
巻き込みの可否を判定しているか…
『中心のボールからの距離』を見て巻き込んでいるのだが、
その距離が短いのではないでしょうか?

(後者は、ボールがレベルアップして巻き込み範囲が広がっても、
その分「本体の体積」も増えているので、
結局ほとんど利便性が上がらないのです)



そんなわけで、常に対象が遠くにある時点から
塊のライン取りに気を付けねばならず、
ちょっとズレれば巻き込み失敗で泣く泣くバック…


という息苦しいプレイを要求されてしまいます。



不愉快の最たるは、壁際

『真・三国無双』(コーエー)などでは、
主人公と、ディスプレイの前のプレイヤー(あなた)の間に
壁などのオブジェクトが入ってきた場合、それを半透明にすることで、
プレイヤーが主人公を見失ったり混乱したりしないよう配慮されています。


では、当ゲームではどういう処置がされているのかというと…

壁の向こうの「この位置に主人公がいるよ〜」という位置に、
壁の手前『塊』の文字がドーンと表示される。 それだけです。

壁が半透明になる、などの対処はありません。

主人公のいる位置は、
常にほぼ画面の真ん中に決まっているのですから、
あまり意味のある対処とはいえません。


というか、『付近の物や障害物の確認』もできずに、
どうやってこの場を突破しろというのでしょう?



壁の向こうでドスンバタンと何かに衝突しているは聞こえるのですが、
画面に表示されているのは『塊』の文字だけで、事態が把握できない

結局、さっきまで見えていた画面の記憶を元に、
「たしか右にイスがあったような… それに引っかかってるのかな?」
などと推測して脱出するしかありません。

残りタイムもムダに消費し、
腹立たしい事この上ありません


もちろん、自分の向きを必死に変えることで
カメラ視点を少しでもマシにして、
脱出の足しにすることはできますが…

そこまで制作者にコビて遊んでいる自分に気がつくと、
心の中の何かがスー… と冷めていくのを感じます。




『不愉快なゲームオーバー画面』


このゲームは元々、父親である「宇宙の王」が
酔っ払って星々を破壊
してしまい、
それを修復するために主人公である「王子」が
地球で「物集め」に励む物語です。

なのにゲームオーバーになると、この王様が偉そうに、
メッセージ画面10ステップ分ぐらい使って
王子にイヤミを言う
のです。

背景では大雨が降り、轟く雷鳴。

なんでここまで言われなきゃならんのか?
王様がヘボだからわざわざ俺が出張ったんだろ?
と、理不尽に対する不快感がムクムクと湧いてきます。


そもそもミッションを失敗したのは、前述の
『壁の向こうが見えない』などの視点的な問題
による不快なタイム浪費のせいが大きいのです。

実力以外のところで失敗して(させられて)
ゲームオーバーだけに、怒りすら湧いてくる場面です。







■第4章 『最後に』


『雪球のように、少しずつ大きく育てる喜び』
『画面内を掃除するような達成感。』
『サイズインフレによる驚きの展開』


などの良さを持つ一方で、

『自分の周りのオブジェクトの確認すら満足にできない』
という初歩的な不快感を残したままの当ゲーム。

なんともチグハグで、色んな意味で
「実験」で止まってしまっているソフトという感があります。



続編が色々と出ているゲームなので、
2作目以降ではその辺りをキチンと対処しているのでしょうか?

安く売っていれば試してみてもいいですが、
当作を見ていると二の足を踏んでしまいます…


いつか、480円ぐらいで売っているのを見かけたら、
試してもいいかな?と思っています。






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