Nintendo DS用
『気持ちよさ連鎖パズル トリオンキューブ』
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筆者プレイ内容 : ストーリーモード 2周クリア(計90面)
制作 : バンダイナムコゲームズ
執筆日 : 2009年 07月10日
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■第1章 『基本システム』
『気持ちよさ連鎖パズル トリオンキューブ』は、
落ち物パズルゲームです。
上から落下してくるパーツをフィールド内に積んでいき、
一定の条件を満たすとパーツが消滅。
消せないままフィールド上端まで
パーツで積み上がってしまうとゲームオーバー。
という、これ以上は無いほど
落ち物パズル然とした落ち物パズルです。
当ゲームのパーツは、
ブロック3個が
さまざまな並び(L字型・棒状など)になっている物。
そして、それらを消すには、
『配置した時点で、縦横に3×3、
計9個にブロックが並んでいればOK』
という簡単極まりないものです。
この時、ピッタリきれいに
「3×3」になっている必要はありません。
『テトリス』が、「横一列に隙間なくブロックが並んだ所」
だけを消滅させるように、このゲームも、
「3×3 になった所」だけを消滅させます。
それでは、
『連鎖』はどうするのでしょう?
「気持ちよさ連鎖パズル」と銘打つぐらいですから、
連鎖が主体になっていることは容易に予想できます。
連鎖の仕方は簡単です。
上記の「3×3」を作ると、
そのブロックの見た目が変わりブルブル震えだします。
この震えがドンドン大きくなり、最後にボッカンと壊れます。
このボッカンに至るまでの時間が、連鎖タイムです。
連鎖タイムが切れるまでに次の「3×3」を作れば、連鎖成功。
ブルブル時間が初期化されます。
そうやって、次々と「3×3」を作り続ければよいわけです。
連鎖中の「3×3」は、
離れている場所の物でももちろんOKですし、
なんと
『現在ブルブル震えているブロック』までもが対象になります。
つまり例えば、
棒状パーツ(1×3)を
立てた状態で3つ横に並べれて「3×3」にし、
最初のブルブルを発動。
次の棒状パーツを、
立てた状態で「3×3」の左右いずれかに隣接させるか、
横に寝かせてピッタリ上に乗せれば、
それだけで連鎖として認められるわけです。
ちょっと珍しい連鎖ケースとして、ブロックの破壊が終わって、
上のほうに残ったブロックが自由落下して下に積み上がる…
そのときに「3×3」ができれば、
ここからも連鎖が継続します。
(もっとも、ほとんど画面いっぱいを使っての連鎖が可能なほど低難度なゲームなので、
こうした二次連鎖はむしろ、ブロックが思い通りに並べられず隙間だらけになってしまった時に、
偶発的に発生する程度です。 狙って出すテクニックでは無いと見ます。)
「なんか、ずいぶん簡単に思えるけど?」
と思ったあなた。 その通りです。
当ゲームは、ちょっとでもこの手のゲームに慣れたプレイヤーなら、
バカバカしいほどあっけなく連鎖が継続するのです。
ゲーム難易度もその辺りを想定してか、
連鎖できるプレイヤーを主体にバランスを取っているようです。
(それでもかなりヌルくしてあるようですが)
さて、そんな、誰でも手軽に
連鎖連鎖の展開が楽しめる『トリオンキューブ』は、
はたして
ゲームとしては面白いのか?
そのあたりは
第3章以降で見ていくとして、
次は、
それ以外のシステムについて説明しましょう。
■第2章 『その他システム』
続いて、連鎖以外の要素についても触れておきましょう。
まずは、対戦時などに頭上から降ってくる
『ゴミ』について。
これは単発の黒いブロックで、いわゆる
お邪魔ブロックです。
これが配置済みのブロックの間にはさまると、
最初の「3×3」を作るのにちょっと手間取る事があります。
が、一度でも「3×3」を作ってしまえば、
そこに隣接している黒ブロックは
全て「普通のブロック」に戻ってしまうので、
ほとんどジャマになりません。
あくまで、
最初の「3×3」を作るのに困る程度の存在です。
次に、
『故障』について。
当ゲームのブロック破壊には、実は
「ブロックを壊して、自分の宇宙船の推進エネルギーにする」
という目的があります。
故障が発生すると、「3×3」を作った後のブルブル…
つまり
連鎖タイムがグッと減ってしまうのです。
したがって、
大きな連鎖が作りにくくなってしまう。
「故障」は、
ストーリーモードの特定ステージで発生します。
ステージごとの難易度に変化をつけるための要素、
ぐらいに考えておけば間違いありません。
あとオマケとして、プレイに応じて入手するお金を使い、
『ワク』と『デルモノ』を購入できます。
『ワク』とは、言わばスキンで、
ゲーム背景とブロックグラフィックが変化します。
『デルモノ』は、
ブロックを破壊したときに飛び散る視覚エフェクト。
「星」を選べば、破壊音がキラキラしたものになり、
破壊と同時に星のキャラが付近に飛び散ります。
これらは購入後、ステージ開始時に、
好きな組み合わせでプレイする事が可能です。
画面コンフィグですね。
最後にちょっと変わった要素として、
『異常に遅いパーツの落下速度』があります。
『テトリス』などの一般的なの落ち物パズルの場合、
ゲームが進み、難易度が上がるにしたがって、
パーツの落ちてくるスピードがツツツーッと速くなっていきますが…
このゲームは、ステージが進んでも、とにかく落下速度が遅い。
1段落下するのに、2〜3秒の猶予があります。
(ゲームフィールドが、従来の落ちゲーに比べて極端に狭いからでしょう)
「配置に失敗する」という行為は、
当ゲームにおいては、ほぼ100%、
ユーザー自身のケアレスミスと考えて間違いありません。
その意味では、
納得のプレイが約束されています。
■第3章 『良し』
ゲームから感じる「心地良さ」にはさまざまな物がありますが、
こと
『手ざわり』に関して言えば、
老舗ナムコは五指に数えられるはずです。
当作も、「キーレスポンスの良さ」や
「パーツの動作」は言うに及ばず…
『カラフルでありながら、コントラストをやや下げて
柔らかさを演出したグラフィック』
『脱力系キャラ』
『ちょっとコミカルな、柔らかい優しい音楽』
などを駆使し、(おそらく)メインターゲットである
『日々の社会的ストレスにちょっと疲れぎみのサラリーマン』に対して、
ドギツい印象を与えないための配慮が随所に見られます。
この辺りのテクニックに関しては、
本当に
学ぶところが多いメーカーだと思います。 ナムコさんは。
先述しましたが、
「3×3」を作るだけでイイという簡単極まりないルールなので、
恐ろしいほど連鎖がつながります。
連鎖のあるゲームには、必ず
『効率の良い仕込み』
(仕込みとは、連鎖しやすい並びを準備する事です)
というものがありますが…
僕がこのゲームで見つけた「仕込み」は、
『フィールドの左右と床に、
2列のブロックの並びで囲んでおく』
というものです。
カタカナの
コを、
時計回りに90度倒したような感じです。
こうしておけば、次のパーツをほぼどこに置いても
「3×3」がスタートできます。
なお、上記の並びからスタートさせた連鎖の場合、
連鎖中は、左右や床から少しずつ真ん中に近づけていくように
パーツを隣接させていくと、失敗が少ないようです。
フィールド内のパーツの無い空間を、
Uの字を少しずつ小さくしていくようする感じ、
と言えば伝わるでしょうか?
■第4章 『悪し』
先ほど、「カタカナのコを、時計回りに90度倒したような感じに
ブロック配置しておけば
連鎖しやすい」と言いましたが…
より正確に言うと、
ちょっと上手くなると
連鎖が終わりません。
もっと正確に言うと、
フィールド内にブロックを置ける場所が
無くなるまで、連鎖が終わってくれないのです。
連鎖に失敗するのではなく、
『パーツを置く場所が無い』から連鎖終了とは…
前代未聞の落ち物パズルと言えます。
ゲーム中のお金で、
『ワク』(スキン)と
『デルモノ』(エフェクト)が
購入できる、と書きましたが…
これは
ワナです。 買ってはいけません。
このゲーム、基本的なスキン以外を使うと、
そのド派手なグラフィックのせいで、
画面がとてつもなく見づらくなるのです。
『デルモノ』にしても、ブロックを破壊した付近に
ワラワラと
ケバい色のキャラが走り回るので、
一瞬、付近のブロックの並びを見失ってしまう可能性が高いのです。
といっても、これらを買うぐらいしか
お金の使い道もないので、買うのは構いません。
でも、
使ってはいけません。
「ゲームが簡単すぎてミスできないから、
高い金を払って、わざと自分を苦しめてみよう」
といったマゾ嗜好の方にのみお勧めします。
今まで色々な落ち物パズルを遊んできましたが、
こんなに
プレイ中の眠気が大敵だったゲームは珍しいです。
その理由は、ゲーム全体からただよう
単調感。
連鎖がほとんど終わらない、という事は、毎回毎回、
フィールドのほぼ全体まで連鎖をすることを意味します。
連鎖が終われば、
当然フィールドは、ほぼスッカラカンになります。
そこにまた連鎖の仕込をして、
フィールドが空になるまで連鎖を続ける…
つまり、
「仕込み」⇒「カラッポ」
の展開が延々と繰り返されるだけで、
『中間』がほとんど無いのです。
たしかに、ステージごとに、
『敵に追いつけ』『ボスを倒せ』などの目的はありますが、
それらを効率良く実行するための手段が、結局は『連鎖』のみ。
連鎖のみを求めるゲーム内容で、
その連鎖が「誰でも手軽にあっけなく」実行できるとあっては、
壁らしい壁、苦労らしい苦労も発生せず…
気持ちがいいというより、
猿の知能テストのような低すぎる難度に頭がボンヤリして、
肩のあたりがドンドン重くダルくなってきます。
ぬるいおフロに長時間つかった後の、
あの言いようのない疲労感に似ています。
『一元的なゲーム目的』
『誰にでもできる簡単すぎる難易度』
これはゲームと呼べるのでしょうか?
少なくとも自分は、プレイ中に何度も
「何やってるんだろう、俺…」という
脱力にも似た不思議な感覚を何度も味わいつづけて、
プレイ後しばらく気持ちが悪くなってしまいました。
「毒のある人柄」という比喩ではなく、
本当に
『毒を持った昆虫』のように、
登場キャラが感じられます。
一見すると、2頭身ちょっとで線も少ない
癒しキャラのように見えるのですが…
黒くてガッチリした、それでいて先端がスッととがった線が、
むやみに硬質なイメージをかもしだし…
目の開閉以外は全く変化しない、仮面のような顔面…
なのに、その固まった表情は、涙で潤んだ上目づかいで、
なにやら不気味なコビを感じる…
総合すると、
『一見弱々しそうな外見をしているが、それはフェイクで、
うっかり近づくととがった手足で毒を注入し、集団で相手を捕食する』…
そんな、
体温を感じないキャラクタなのです。
一見人当たりがいいけど、腹の中には
ドロドロとたまったストレスをいつも暴発寸前まで溜め込んでいて、
キッカケ1つで殺人でもやっちゃいそうなキレた若者…
みたいな感じでしょうか?
これはもちろん、人それぞれの好みもあるのでしょうが、
見れば見るほどジンワリと怖いキャラクタだと思いました。
(悪いキャラだとは思いません。
ただ、ゲーム内容や雰囲気に合致しておらず、
それぞれの良さを相殺しているように感じられました)
このゲームは、
『テトリス』に代表される
落ちゲーの中にあって、
際立ったフィールドをしています。
つまり、
縦の範囲が狭い、ほとんど正方形のフィールドです。
そのため、単純に、画面内に落下パーツが見えてから
最下段まで落下するまでの距離も、
他の落ちゲーと比較して短くなります。
その難度を補ってバランスを取っているのが
先述の
『極端に遅い落下速度』。
これによって当ゲームは、
本来
高難度なはずのフィールドサイズでも
初心者が対応できるようになっています。
が、「エンドレスモード」2周目終盤になると、
落下速度が極端に上昇…
フィールドの
縦のせまさがアダになって、
ほとんど太刀打ちできなくなってしまいます。
決して、そろえて消せないほどのスピードではないですが、
連鎖を作らなければ事実上100%のゲームオーバーが確定
してしまうこのゲームにおいては
無意味です。
難度上昇に文句はありませんが、上昇させるなら
当ゲームのシステムに沿った部分で上昇してほしかった。
「新しい落ちモノ」を名乗りながら、
『落下速度上昇』という従来の落ちモノの難度上昇手段を、
従来とは異なる『縦がせまいフィールド』を持つ当ゲームの
最後の難度上昇に使ってくるとは…
それは違うだろ? と、
疑問に感じずにはおれません。
■第5章 『最後に』
ゲームというものに何らかの
「やりがい」を求めている人なら、
この商品には手を出さないことをお勧めします。
初めのうちこそレスポンスの心地良さに好印象を抱いても、
しばらくプレイすれば、自分の中にジワジワ蓄積してくる
正体不明の疲労感にグッタリしてしまう事でしょう。
低難度なので、初心者にお勧め!
というわけでもありません。
誰でもできるゲームいうものは、逆にいえば、
別に自分がやらなくてもいいゲームです。
「低難度」という聞こえのいい売り文句につられて
手軽に達成できる商品に手を出すより、初心者だからこそ、
『テトリス』のような奥深い本物から体験すべき
と声を大にして言いたいです。
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