プレイステーション用

『ザ ネクストテトリス』




 筆者プレイ内容 : 約5時間

 販売 : BPS

 執筆日 : 2009年 10月09日






■第1章 『次なるテトリス(予定)』


『ザ ネクストテトリス』は、
落ちものパズルゲームの祖にして最大級のゲーム性を有する
大傑作『テトリス』次世代を担うつもりで
作られたのでしょうね、この名前からして。


説明書には、
「新たなるゲーム性に、あなたの頭脳はぐるぐる渦巻き、
ぶるぶる震えることでしょう!」
と、
英語直訳げなアオリが書かれています。



まず、オリジナルと当ゲームの違いをご説明しましょう。




『マルチミノの存在』


テトリスで落下してくる7種類のパーツ群は、
正式にはテトラミノと呼ばれます。

『マルチミノ』とは、形はテトラミノですが、
それを形成するブロックの色が複数です。

で、どこかに着地させると、
色の違う部分がそれぞれ独立して自由落下を開始。

つまり、色ごとにちぎれて落下していくのです。


ここまで読んで、
『あれ? それって「テトリスフラッシュ」と同じシステムなんじゃ?』
と気づいた方もいらっしゃるかと思います。

たしかに似ています。
が、当ゲームは「フラッシュ」と異なり、
ちぎれたブロックはそのまま真下に落下するのみ

分離後にさらに左右に移動させるといった、
積極的なコントロールはできなくなっています。




『同色のブロックは合体する』


同じ色のブロックは、接地後に合体します。

つまり、白いパーツ(横2・縦2)の隣に、
同じく白パーツを置いてやると、
「横4・縦2」の白パーツになるわけです。


「それがどうしたの?」と思われるでしょうが、
実はこれ、後述の
『ライン消滅のたびに、分離判定がされる』とあわせて考えると、
ものすごく重要な意味を持ってくるシステム
なのです。


ちなみに、同色のブロックを25個以上つなげると、
(パーツではなく、ブロックの個数です)
それらが一気に消滅するという逆転技があります。




『ライン消滅のたびに、分離判定がされる』


横一列に隙間なくブロックを詰めると、
その列が消滅、上に乗っていたブロックが落下する…

という流れは、テトリスの定番ですが、
当ゲームはちょっと異なっています。

単に、「消えた列の数だけ」落下するのではなく、
同じ色どうしで隣接したものを1つの塊として、
文字通り『足場を失った塊として個々に落下』するのです。

横ラインが消えたときに塊の一部も消滅して、
より小さな塊に変わったものは、
細い隙間にストーンと落ちていって
予想外の連鎖を生んでくれることもあります。


ただ、あくまで塊単位として分離判定がされるため、
『Joy Joy Kid』(SNK)のようにブロック単位まで完全分離して
一気に画面下部の隙間を埋めてくれるわけではありません。


ここで、先述の『同色のブロックの合体』というシステムが、
新たな意味を持ってきます。

つまり、合体させたブロック群が横長だと、
ちょっとやそっとのライン消去では、
それらが下に落ちていくほど小さくなってくれない…


フィールドのフタになってしまう危険があるのです。


オリジナルのテトリスで
「横に平たく置いていく」クセがついてしまっている人は、
頭を切り替えないと、苦戦を強いられる可能性があります。

正直、僕も苦戦しました(苦笑)




『判定の順序』


オリジナルは、パーツの着地後に、
『横一列ラインの、消滅判定』を行い、
消滅したラインの上に乗っているブロックたちを、
消滅した段数分、下に詰める…
という流れでゲームが進みました。

つまり、判定は1つだけです。


一方、当ゲームは、以下の順序で3つの判定を行ないます。

『同じ色のブロックの合体判定』

『横一列ラインの、消滅判定』

『パーツがちぎれる場合、分離パーツの着地判定』



最後の「分離パーツの着地」によって、
下のほうで新たに「横一列ライン」がそろう(連鎖する)と、
上記の3つの判定を頭からくり返します


ちなみに、この3つの判定順序
後の批評に関わってきますので、頭の片隅に憶えておいて下さいね。







■ 第2章『良し悪し』






『変化球テトリス』


元祖『テトリス』のシステムを踏襲しながら、微妙に変化球。

「テトリス」のテクニックが流用できつつも、
当ゲームならではの戦い方も求められ、
その異質感が気になってついつい遊びこんでしまいます。


「合体するポリミノ」、「分離を前提としたパーツ配置」など、
単なるテトリス上級者の思考だけでは太刀打ちできない、
新しい工夫を要求するシステム
にも、興味を持たされます。


亜流の1つとして、
独自の輝きを持っているゲームだと思います。




『やけに踏んばってくれる落下パーツ』


2009年現在では、ザ・テトリス・カンパニー
(『テトリス』の版権を管理する米国の会社)
が設定したガイドラインによって、
着地後にもけっこうな時間
左右に動き回れるようになった落下パーツですが…

当ゲームの出た1999年としては、
この踏ん張り時間の長さは異例であったと想像します。


というか、落下中に回転ボタンを押したときも、
一瞬空中停止を思わせるほど落下が鈍化するので、
ピンチになったらとにかく回せ!という感じです(笑)

ストイックさには欠けますが、
最後の一瞬まで可能性にしがみつく
勝利に貪欲な人間には向いたシステムだと思います。




『BGMに難あり』


個人の好き嫌いもあると思いますが、このゲームのBGMは、
短いフレーズがかなりの回数くり返されるだけのものが多く、
聞き疲れします。


瞬間瞬間を判断していくゲームなので、
心のリラックスを生むBGMのほうが合っていると思うのですが…


ちょっと洗脳ゲームぽい(笑)




『下キーを押すとうるさい』


プレイしていると、どこからか聞こえてくる、
パーツを着地させたような「コッ」という
短い効果音が気になっていました。

別にパーツは着地などしていないし、
そもそもパーツは、まだ空中にいるのです。


不思議でしょうがなかったのですが、
何度も遊んで、ようやく音の原因に気がつきました。

下キーを押した瞬間に、必ずこの音が鳴るのです。


タイミング的に中途半端なことから、
「下キーを押したら一気に落ちる所まで落ちる」という
従来のシステムのテトリスから移植したときに
『はずし忘れた仕様』なのでは?
 と勘ぐったりもします。

いずれにしろ、耳ざわりです。




『巨大ポリミノの消滅』


同じ色のブロックをつなげていき、
25個以上隣接させるとそれらが一気に消える

というシステムは前述のとおりですが…

正直、なんのための要素なのか首をひねります。

「1発逆転」の意味を持たせたかったのかもしれませんが、
高く積み上がったところに25個分もの空白
ドカンとできてしまっては、たいてい状況は以前より悪化します


実験的に入れたとしか思えない、
今1つ、他のシステムとの整合性を感じないアイディアです。




『判定順序が生み出すミス』


先ほど、当ゲームのブロック消滅判定は、

『同じ色のブロックの合体判定』

『横一列ラインの、消滅判定』

『パーツがちぎれる場合、分離パーツの着地判定』


で行なわれると言いましたが…

プレイしていて、
この判定順序を瞬間的に判断するのって
難しいんですよね。

パーツをちぎって下のほうに落とすつもりが、
そばにあった同色ブロックと合体してしまって、
余計なフタをしてしまうハメになったりとか…



たしかに、ゲームとして長い目で見れば、
この順序の判定が一番まとまりが良いようにも感じます。

が、それが理論的に良いシステムでも、
プレイヤーに直感的に響かないシステムはなかなか受け入れられない

という事実を、作り手は忘れるべきではないのではないでしょうか?

システムに関するプレイヤーの「なぜ?」に対し、
現実世界をからめた直感的な理解を提供できる作り手は、
優秀な作り手だと思います。


例えば、1方向にゆっくり進む敵がいたとします。

この敵に「ウサギ」と「亀」、
いずれのグラフィックを適用すれば、
よりプレイヤーの直感的な納得を得やすいか…

は、言うまでもありませんね。


このゲームの判定は、くり返しますが「良いほう」だと思います。

ただ、プレイヤーの納得を引き出せる装飾や説明の無さが、
その良さを埋没させてしまっているという点で、
良くない例になってしまっているのが残念です。





『連鎖後の混乱』


連鎖による大量範囲の破壊は気持ちいいですが、
そのたびにガラリと並びが変わってしまう事も多く、
いちいち状況を確認しなおすことで、それまでの
「自分の中に生まれていたリズム」が壊れてしまうのが残念です


想定していたならまだしも、
偶発的に発生した連鎖だと、混乱も倍増


大きな並び変化が起こったときは、
『3combo!!』などと表示しつつ、
次のパーツの落下が始まるまでに少し間を持たせるなどして、
現状をプレイヤーが再確認できる時間を与えるべき
でしょう。




『とにかく見づらいブロック』


軽視されがちですが、
落ちゲーのような瞬間的な判断が要求されるゲームにおいて、
『パーツの見た目がプレイヤーに与える、瞬間的な情報認識の高さ』は、
ものすごく重要なファクターです。

『テトリス』のようなゲームなら、
『ブロックの大きさを均一に見せる』
ことが、最重要ではないかと思っています。


ここまで読んで、
「はぁ? ブロックのドットサイズは、どのパーツでも一緒じゃんw?
なに言っちゃってんだかwww」
などと、
小さなWをいっぱい付けているようでは、
良いゲームを作ることは決してできません。


まず人間の目は、
赤い色ほど手前に大きく、青い色ほど奥に小さく見える
という錯覚を起こすものです。

また、明度(明るさ)や彩度(色のあざやかさ)によっても、
距離感が変化してくる。



それらをきちんと考慮して基本ブロックが作られているか?
といった視点に立ったとき、多くの落ちゲーにおいて、
こんな簡単な基本すら守れていないる事
に気づき、
驚かれるのではないでしょうか?


皆さんが単純に「おもしろくない」「クソゲー」などと
判断を下している物の中にも、こうした小さな違い1つで
ゲーム全体の印象が変わってしまっているものが多数含まれている…

という事を憶えておくと、またゲームを見る目
変わってくるのではないかと思います。

特にゲーム制作に携わっている方には、
肝に銘じておいてほしい部分です。



さて、長い前置きをしてしまいましたが、
当ゲームではその辺はどうなのか…?


ご想像の通り「ダメ」でした。

表面の中央が膨らんだ形状と、やや光源の強い配色のせいで、
表面にロコツな明暗ができてしまい、
瞬間的なブロック個数のカウントをまちがうなどの
ケアレスミスを誘いやすくなっています。


しかも、パーツによって『表面の形状が違ったり』するので、
もうメチャクチャです。

色使いも全体的にケバケバしく、
見ていて、とにかく疲れるゲーム画面です。



とどめに、これが最悪なのですが、
パーツの着地時に、付近のブロックが
衝撃でユワンユワンと動きやがるのです!



単純に1つ1つのブロックが個別に揺れるならまだしも、
長方形なら長方形、T字型ならT字型と、
『隣接したブロックと結合した塊』単位で揺れる。

しかも、変に傾いたりして揺れるので、
見づらいを通りこして、制作者の悪意すら感じます。

遊んでいて、車酔いのような感じになり、
何度吐き気をもよおしたことか…


『あなたの頭脳はぐるぐる渦巻き、ぶるぶる震えることでしょう!』
とはこの事だったのか…

かんべんしてくれ(泣)







■ 第3章『総評』


まとめると、『テトリス』を基本としながらも
所々に変わったアイディアが盛り込まれている点はおもしろい

が、遊び勝手においての配慮がとにかく欠けている
という感じでしょうか?


ローカライズ(翻訳)が全然されていない点にも、
手抜き感を強く感じます。


とにかく『テトリス』好き、かつ、
海外ゲームの大ざっぱさを許容できるという人以外には、
ちょっとオススメできないゲームですね。



ちなみに、このゲームの資料をネットで探しているときに、
ものすごく綿密に分析されている良サイトさまがありましたので、
以下に無断でリンクさせていただきました。

きょねんむし
『ねくてと』から、関連コンテンツに入れます)

『ザ ネクストテトリス』に関しては、
このサイトさまでさえあればノープロブレム!という感じです。







■ 第4章『200回のご挨拶』


ところで、今回のこの批評…

実は『うへーい』で10年近く書きためてきたゲーム批評の、
記念すべき200番目の批評になります。



「うへーい」開設当時は、
100個近いゲーム批評を持っていらっしゃるサイトさまを見ては、
「すげーなー」 「どうやればこんなに批評が書けるんだ?」
と羨望のまなざしで見ていたものですが…

気づけば、自分が200の大台に。


継続は力なりというか、
年月の経過というものは恐ろしいというか、
とにかく感慨です。




これからも、「うへーい」のゲーム批評をご贔屓ください。

将来、300番目に至ったとき…
僕はいくつになって、どんな事をしているのだろう?


希望と不安を抱きつつ、
これからも歩き続けたいと思います。






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