プレイステーション用
『XI [sai]』
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筆者プレイ内容 : 約15時間
販売 : SCE
執筆日 : 2009年 10月16日
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■第1章 『トライアル』
『XI [sai]』は、
アクションパズルゲームです。
サイコロを使ったパズルゲームで、
『トライアル』 『バトル(対戦)』
『ウォーズ(複数対戦)』 『パズル』
の4つのモードを持ちます。
それぞれについて深く掘り下げてシステム考察すると
時間がかかりそうなので、今回は事実上の
メインゲーム、
『トライアル』についてのみ批評したいと思います。
■第2章 『基本システム(サイコロ)』
「XI」は、
横7・縦7のフィールド上に、
時間と共に次々出現してくるサイコロたちを、
並べて消していくゲーム。
フィールドがサイコロで全て埋まると、ゲームオーバーです。
サイコロの消し方は、
『同じ目(上の面のものです)のサイコロを、
目と同じか、それ以上の数だけ、隣接させる』です。
つまり例えば、
「4」のサイコロをT字型に4つ並べても消滅しますし、
「2」なら隣接させただけで即、消滅です。
もちろん
「2」を、一度に3つ4つ並べてもOKです。
並べたものは、
すぐには消滅が完了せず、
地面の下にズブズブ〜と沈んでいきます。
実はこの時が
『連鎖』のチャンスタイム。
沈んでいる途中のサイコロに、
別のサイコロを「同じ目」で隣接させれば、連鎖成功。
2連鎖なら、通常点数の2倍。
3連鎖なら3倍が入ります。
得点は、『目の数 × 関わったサイコロ数 × 連鎖』なので、
例えば「2」のサイコロ2つが沈んでいくときに、
効率良く3つ目、4つ目を隣接させて連鎖を起こすと…
最初の得点(2の目 × 2個 × 1連鎖= 4点)、
2連鎖目の得点(2の目 × 3個 × 2連鎖= 12点)、
3連鎖目の得点(2の目 × 4個 × 3連鎖= 24点)…
と、連鎖によってグングン得点が上がることがお分かりかと思います。
ここで気になるのが
「1」の目。
どうやって消すのでしょう?
1個だけではもちろん消えず、
複数並べても消滅してくれません。
実は「1」は特別で、
『別のサイコロに連鎖させる事でしか消滅させられない』のです。
といっても、1つ1つの『1』を
セッセと連鎖させる必要はありません。
どれか1つの「1」が連鎖成功したとたんに、
『画面中の1が消滅してくれる』からです。
(これを「ハッピーワン」と呼びます)
つまり、このゲームは、
『同じ目のものを規定数以上隣接させてつつ、
フィールド内に溜まってくる「1」を
適度に処理していく工夫が要求されるゲーム』
なのです。
■第3章 『基本システム(アクイちゃん)』
『スライド系のパズル』に自信のある人なら、
ここまでの説明を聞いて、
「おいおい、ずいぶん簡単なゲームじゃん?」
と思ったのではないでしょうか?
いえいえ。
『XI』は、ただのスライドゲームではないのです。
どうしてフィールドに出現するのが
サイコロなのか、お考えください。
そうです。 実はこのゲーム、
サイコロをスライド(位置だけ変える)させるゲームではなく、
『転がして移動させるゲーム』なのです。
ゲーム内では、プレイヤーの操作する主人公
『アクイちゃん』が、サイコロの上に乗っています。
アクイちゃんの移動は、イコール、サイコロの移動。
1歩ごとに90度ずつ、足元のサイコロが回転して、
『上になっている出目が変化』するわけです。
前方に
2歩進めば、
「先ほどまで下になっていたもの」が出目になりますし、
4歩進めば1周して
最初の出目に戻ります。
もちろん
横移動を混ぜれば、
単なる前進後退では4面しか切り替えられなかった出目ではなく、
6つ全てが自在に出せるようになります。
しかしサイコロは、
一方からは「最大3面」までしか見えないもの。
「裏側に何があるかなんて分からないよ」と
腹が立つ方もいらっしゃると思います。
が、実はサイコロというものは、
『表と裏を足したとき7になる』ように
面配置されているものなのです。
つまり、
「1」の裏は必ず「6」です。
同様に、
「2」の裏は「5」、「3」の裏は「4」です。
手前の3面が分かれば、回転させなくても
「その裏」が推理できるわけです。
さらに当ゲームでは、
画面左上に常に
『自分が今乗っているサイコロの、手前の3面』が
表示されるようになっています。
そのため、乗っているサイコロの一部が付近のサイコロに隠されていても、
「どの方向に動けば、どの目が出るか」だけは
常に分かるようになっているのです。
■第4章 『基本システム(高さの概念)』
ここまでの説明を読んだ方で、
ゲーム画面を想像しながら読んでいた人は、
1つの疑問が浮かんだのではないでしょうか?
『アクイちゃんは、サイコロの上に乗っている』
『並べたサイコロは、沈んで消える』
では、
上に乗っているアクイちゃんは
サイコロ消滅後はどうなってしまうのか?
マズいんじゃないか?
まさにおっしゃる通りです。
沈んでいくサイコロの上でボンヤリしていると、サイコロだけ消えて、
フィールドの床にポツンと取り残されてしまうアクイちゃん。
こうなると、
『ゲーム「倉庫番」のように、
サイコロを押すことしかできなくなってしまう』のです。
上に乗っているときのような自在なサイコロ移動が不可能なのはもちろん、
文字通り
「押すだけ」しかできない
(転がらない)ので、
位置はともかく、
出目が変化してくれないのです。
アッという間にピンチに陥ります。
脱出方法は、
『床から出現してくる新しいサイコロに乗っかること』。
エレベータのように、上へと運んでもらえます。
ただし、出現後ある程度時間が経って、
本体の半分以上がすでに床の上に出てしまっているサイコロは、
高すぎるため登ることができません。
新しいサイコロを見つけたら、
とにかくすばやく乗っかる必要があります。
ちなみに、
消滅して沈んでいくサイコロの上でボヤボヤせず、
すぐに隣接している他のサイコロへと移動すれば、
床に下りることなくゲームを続行できます。
もちろん、
自分の乗っている消滅していくサイコロのそばに、
乗り移れるサイコロが無ければ、
あきらめて床に下りるしかありません。
■第5章 『良し悪し』
全体的に、
シックで落ち着きのある雰囲気に、
美しくまとめられています。
BGM・グラフィックの質感・効果音などに見られる、
細やかな「統一」の気配りには驚かされます。
さらには、シックすぎることで
ややもすれば歳より臭くなりそうなゲーム画面に、
コミカルな「アクイちゃん」を登場させる事で、
適度な「ゆるさ」までも付加している。
SCEのゲームに見られる、こうしたデザインの卓越ぶりには、
心底感服せざるを得ません。
サイコロの出目の性質を利用したゲームシステだけでなく、
「パズルモード」では
特殊な動きをするサイコロを登場させて、
さらなる
パズル的工夫をユーザーに要求しています。
「サイコロ」+「倉庫番」 という感じです。
新しいパズルとして、十分な価値を持っているモードです。
さらには、このルールを基盤とした
複数対戦モードまで付いており、
サイコロを題材としたゲームの中で、これだけの幅広い遊びを
提供しているという意味では、
最高峰と言えないでしょうか?
サイコロの一群が沈み始めると、当然「連鎖」を狙って、
付近のサイコロを隣接させに行きます。
ところが、
運んでいるサイコロが、
連鎖可能な場所に辿りつく前に「周りの別のサイコロ」と並んで
勝手に別の消滅が始まってしまう事が結構あり、イライラさせられます。
移動するたびにサイコロの目が変わってしまうという、
基本システムが生んだイライラといえます。
6面の目を思い通りに出すという行為は、
最初こそ戸惑いますが、
慣れると意外とスンナリできるようになるものです。
デモでも、自分の望む目を出しやすくする
テクニックを教えてもらえます。
それでもなぜか、やっぱりゲームをしていると
「思い通りの目」を出すのは難しい…
なぜだろう? なぜだろう?
と、ずっと不思議だったのですが、
ある時、あっけなく
その謎が解けました。
それは、実戦では、デモの時と違って、
『サイコロの移動ルートが、必ずしもクリアではない』
せいなのです。
いくら、望む目の出し方を知っていても、
それをそのまま成功させるには、
望む移動経路に障害となる他のサイコロが皆無であることが大前提。
でも、そんな恵まれたサイ配置などあるはずはなく、
たいていは途中にジャマになるサイコロがあるので、
そこを避けて進まざるを得ない。
結果、途中でズレた分は、
目的の場所の近くで再調整するしかない。
デモが教えてくれた
『望む目を維持したまま、長い距離を移動するテクニック』は、
単位時間あたりのサイコロの出現数の少ない
序盤にしか使えない、
ごくごく基本的なものでしか無かったのです。
『テトリス』の落下中パーツは、
下キーを押すと一時的に落下速度が上がります。
なぜでしょう?
「待つ」という時間が、プレイヤーによっては疲労になるため、
個々の判断でショートカットできるよう
『プレイスピードの操作の自由』をユーザーに提供しているのです。
当ゲームではさしずめ、
特定ボタン押しっぱなしで
『新規のサイコロの出現スピードが上がる』
といったところでしょうか?
あれば本当に便利だと思います。
出現スピードアップ機能。
…ありませんが。
これには驚きました。
出現パーツの待ち時間のショートカットは、
この手のエンドレスタイプのアクションパズルの
最低限の心配りではなかったのでしょうか?
他の部分の手ざわりが丁寧に作られているので、
「なんの意図も無しに」ショートカット機能を
付けなかったわけでは無い、とも思うのですが…
僕にはついに、当ゲームの
『ショートカットをつけない理由』が分かりませんでした。
だから、すごく遊びづらかった。
次のサイコロが出てくるまでが、眠くてしょうがなかった。
もし、『出現スピードアップが無い理由』に
お気づきの方がありましたら、
ぜひお教えいただきたいと思います。
先述のとおり、
沈むサイコロに乗ったままだと
床に降ろされてしまい、
別の新しいサイコロを足場に登りなおさないと
能力が制限されてしまう主人公。
これは本当に、
必要なシステムなのでしょうか?
このシステムのせいで、
離れ小島ぎみになっている所では
破壊をスタートさせるのに躊躇するのはもちろん、
ちょっとでも行き場を失うと、そこで連鎖が止まってしまう…
せっかくノってきた心が、シュンとしてしまいます。
アクイちゃんの足はそれほど速くないので、
新しく出現してくるサイコロを発見しても、
4マス以上ぐらい離れていると、
そこに辿りつく頃には登るのが不可能になってしまう…
なんとも理不尽なペナルティで、イライラさせられます。
例えば、
もっと手軽にサイコロの昇り降りが
できたとしたら、どうでしょう?
(例えば、Rボタンを押しっぱなしでサイコロ上を移動すると、
サイコロを転がさずに歩いていき、サイコロが無い場所まで来てさらに進もうとすると、床に下りる。
登りたいときは逆に、Rボタン押しっぱなしでサイコロに向かって歩く。 など)
サイコロの上にいるときの能力と、
床にいるときの能力。
場面に応じて有利なほうの能力を判断して切り替える
といった楽しみが増えるのではないでしょうか?
■第6章 『結局…』
『思い通りの目を出すには、ある程度のスペースが必要』なのに、
『他のサイコロが進路上にあれば、
それを避けるルートを取らざるを得ない』
…という2つの
相反する要素のせいで、結局は、
『1つの消滅が始まったら、とにかく付近のサイコロが隣接させる』
『途中で別のサイコロとウッカリ並んでしまわないことを祈りながら…』
という、なんとも
即物的なプレイスタイルに
陥りがちになってしまうゲームだと思います。
たしかに慣れれば、なかなかゲームオーバーにはなりません。
ですがそれは、
目先の消滅ばかりを追いかける、
即物的で深みの無い快楽の連続でしかなく、
長時間興味を維持できるものではありません。
同様にエンドレス的な展開を持つ
『テトリス』が、
なぜ
即物的な展開にならなかったか?というと…
『フィールドのブロック配置を、ゲームオーバーギリギリまで、
ほぼ自分の思い通りにできるという、
長期的で納得のいく蓄積要素が常にある点』
があったからだと思います。
「それなら、XIだってそうじゃん」と思われたあなた…
本当にそうでしょうか?
「6」の目を5つまで並べておいて、
「あとでもう1つ「6」を並べようw」と思っていたら、
周りに勝手に新規サイコロが出現して、
涙目になってそれらをどかした…
という経験に憶えはありませんか?
これを『テトリス』に置き換えると、
フィールド上にランダムに
「自分が動かしている落下パーツ」以外のパーツが
自然出現するのと同じこと。
ランダム出現のパーツ位置など予想できるはずがありませんから、
出現したパーツの場所によっては、せっかくの消滅の種が
ご破算になってしまうことも十分ありえます。
そこに本当に
納得は存在するのでしょうか?
僕は、NOだと思います。
■第7章 『10年』
当ゲームを購入したのは、
1999年の11月。
気づけば、
10年の年月が経ってしまいました。
以前から何度も批評しようと思っていたゲームですが、
なぜか自分は深く楽しめず
(理由は今まで話したとおりです)、
かといって、すぐゲームオーバーになるのかというと
そういうわけでもなく、結構長々と遊べることは遊べるのです。
ただ、
レベル10あたりで眠気におそわれ、
レベル20か30あたりで疲れてしまって自発的にギブアップ
という流れにばかりなってしまう…
そのたびに棚にしまいこんで、
1年ほどするとまた思い出してプレイ…
でもやっぱり楽しくなくて、棚へ…
という流れをくり返してきたのが、この10年です。
先日、自サイトの掲示板に
「XIをプレイされたことはありますか?」
という話題を書き込んでくれた方があり、
『テトリス』に絡めてその返事を書いていたのですが…
その時ふと、
『テトリスがなぜ面白いかを考え直すことで、
「XI」をプレイしているときの眠気の原因を
浮き彫りにできるのではないか?』と気づきました。
表立って書いていませんが、今回は、
『テトリス』と
『XI』のゲーム的流れの差異から
相対的に導き出たアレコレを
批評の基盤に置いています。
もちろん、同じ
「エンドレス系のアクションパズル」
という事も、比較対照として選択した理由の1つです。
最後に正直なところ、僕は
『トライアルモード』自体に、
何か
後付け的なものを感じています。
メインに持ってくるにしては、
即物的というか作業的すぎて、底が浅いのではないか?
という違和感が強いのです。
あくまで推測ですが、
実態はこうなのではないでしょうか?
『トライアルモード系のルールは、
最初は存在しなかった』
つまり、
初期の企画段階では
『パズルモード』だけだったように思うのです。
でも、それだと、1商品として魅力に乏しいと感じたか、
企画会議で指摘されたかして、
『テトリス』のような、
『誰でも延々と遊んで練習できるトライアルモード』を考案。
そして、このソフトの
一般的な掴みとするために、
メインモードと錯覚してもらえるよう、
選択モードの先頭に配置したのでは…?
…などと、考えたりもするのです。
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