Nintendo DS用

『直感ヒトフデ』




 筆者プレイ内容 : 約30時間

 制作 : ミッチェル

 執筆日 : 2010年 10月16日









■第1章 『一筆書きのパズルゲーム』



『直感ヒトフデ』は、アクションパズルです。


長方形のフィールドに、
白と黒の2色のパーツがいっぱいに並んでおり、
これらをタッチペンでスライドすることで、
その軌跡上にあるパーツの白黒が反転

横一列に「同じ色」がそろえば、消滅します。



『テトリス』並に簡単に文章で伝えられるゲームルールは、
この作品の強みの1つですね。



一見すると、昔からありがちな「一筆書きパズル」ですが…

実は、『パーツを囲んでいるフィールドの外周にも、
筆を走らせることができる』
ようになっています。

そのため、これまでの一筆書きゲームよりも
「解法のパターン」に幅があり、
序盤の難易度の敷居がずいぶん低くなっています。

一方で、『外周も考慮した』幅広い消しのパターンが生まれるため、
単純な一筆書きの知識だけで挑むと、
中盤以降に思わぬ苦戦を強いられる場面も(笑)


敷居は低く、最終的な難度は高い。

プレイヤーの幅を広げるこのアイディアは、
見事だと思います。



なお当作品は、(対戦を除いて)2つのゲームモードを持っています。

今回は、その2つについて、基本システム考察と、良し悪し、
加えて改良案などを考えていきたいと思います。







■第2章 『チャレンジモード』



パッと見に、『テトリス』ライクなゲームモードです。


画面上部から、
白黒パーツが入り混じった群れが降ってきます。

フィールド最上段までパーツが積みあがると、ゲームオーバー
(ただし、下画面の最上段ではなく、上画面も含めた2画面分の最上段)

ゲームが進むほど、
次のパーツが降ってくるまでの時間が短くなります。



なお、降ってくるパーツ群は、
「テトリス」のようなデコボコ形状ではなく
完全な「列」になっています。

しかも序盤は、工夫すれば(おそらく)必ず
一筆で全列消去が可能なもの
ばかり。

序盤だけに関していえば、
後述の『チェックメイト』モードのステージがランダムで降ってきて、
それにスピーディに対応するだけのモード

という乱暴な形容も可能かもしれません。


ただ正直なところ、後述の理由もあって、
もう1つ面白さを感じないモードです

無理に「落ちゲー」的な構成にしてしまったことで、
本来の(一筆ゲーム的な)ジックリ考える楽しさ
薄まってしまっているように思えるのです。






『面白い画面構成』


ゲームフィールドは上下合わせて2画面分なのに、
プレイヤーが対処できる範囲は下画面だけという、
(タッチペンなので当然ではありますが)
一風変わった画面構成が取られています。


フィールドが縦に狭いと、
アッという間にピンチになってしまうので、
ある程度の「高さの幅」を持たせたい

しかし、単純に縦に長くすると、
「一筆」の距離が長くなってしまいがちで、
プレイヤーが操作が疲れてしまう


かといって、縦に幅を持たせたまま下画面のみに収めようとすると、
相対的にパーツのサイズが小さくなりすぎて、
プレイヤーの誤操作を招きやすい



『フィールドは2画面にして、操作はその下半分のみに限定する』
というこの画面構成は、そんな相反する要素を、
できる範囲で解決しようとした工夫の表れ
ではないでしょうか?





『両立されない2つの要素』


いきなり厳しいことを書きますが、
このチャレンジモードは、「後付け感」の強いゲームモードです。


序盤は、パターン化された
「明らかに一筆で対処できるパーツ群」が延々出てくるだけの展開

この状態は、最初の「エリアピース」
(エリアの終わりに出てくるピンク色のパーツで、
最下段に着地させると画面内の全パーツを消去してくれる)

を消滅させて「エリア2(?)」に入ると終わりますが…

今度はパーツ群が「1列ずつの出現」になってしまうため、
スピーディに消そうとすると、細かい隙間を1つ1つ
タッチして埋めていくチマチマした作業になりがち


逆に、パーツが溜まるまで待って一気に消すという手もありますが、
それは同時にゲームオーバーの危険が増すことを意味しますし、
待ったからといって必ずしも
「一気に消せる並び」が来るとは限らないようです。

『テトリス』などの落ちゲーに見られる、
「確実に高得点するための意図的な待ち状態」とは違っていて、
プレイしていて納得いかない気持ちがぬぐえません





『改良案』


強いて、この「テトリス」的な外見を
残したままの改良案を考えてみたのですが…

いっそのこと、非リアルタイム
『どこまで耐えられるか競うゲーム』
にしてみてはどうでしょう?

具体的には、以下のような感じです。



@ まず、数列のパーツ群が落下してきて着地します。

A プレイヤーは、そのパーツ群に一筆を入れて、消そうとします。
もちろん、全て消せる場合もあれば、消せない場合もあります。

B パーツの反転・消去判定が終わったら、 @に戻ります。




このように、
『プレイヤーが一筆を入れる』
『ランダムパーツ群が降ってくる』

を、人間とコンピュータで1ターンごとに交互に行うわけです。


当然、一筆を有効利用できるプレイヤーなら、
サクサクと効率よく消去して、簡単には死なないでしょう。

逆に、うまい一筆を入れられないプレイヤーは、
消し損ねの列がどんどん溜まって、
やがてゲームオーバーになってしまいます



救済措置として、列を消していくことでメーターが溜まり、
どうしようもなくなったときに「好きな列だけ消せたり」、
「パーツ群の落下が数ターン止まったり」
に利用できると
良いのではないでしょうか?







■第3章 『チェックメイト』



こちらは完全な非リアルタイムのパズルで、
『一筆(1ターン)で、フィールド内の全パーツの消去を達成する』
のが目的です。


第1章で書いたとおり
『外周が、ルートとして使用できる』ため、
従来の一筆書きでは解きようのない不思議な問題に、
最初は面食らうユーザーもいるのではないでしょうか?(笑)


バリエーション・問題数ともになかなかのもので、
最初にユーザーがクリックしがちな左上
『チャレンジモード』を配置しつつも、
実質はこちらがメインゲームでは?と見ています。





『前回のルートが表示される』


この手の、答えがすぐには分からなくても
トライ&エラーを通じて
正解に近づいていくことが可能なゲームにおいて…

『前回の自分が、どういう手順で失敗したか?』
を知ることは非常に大切です。



そのため当作品では、
前回のプレイヤーのタッチペンの軌跡が、
上画面に表示されるようになっています。



これは実に有用な情報で、
「前回はこうやって消したら、右に2パーツ「白」が残ったんだよなー」
などと考えながら、その失敗を今回修正しようとする…
といったプレイが可能になっています。


シンプルながらも実に親切なアイディアだと、
感心させられます。





『ステージ選択のときの、小さな不満』


ステージを選択するとき、
「ステージナンバー自体をクリックすることでステージスタート」
できないのが気になります。


いちいち、少し離れたところにある
「開始」ボタンを押すのは、億劫です。





『前回ルート表示に、さらに追加を…』


これは、フィールドいっぱいにパーツが広がるようなステージでは
表示上、難しいと思われる改良案ですが…

「前回の軌跡」だけでなく、
『その結果、どういう状態になったか?』
も表示してもらえる
と、非常に助かります。

先述のように、
「右に白が残ったよな」とは憶えていても、
「いくつ残ったんだっけ? 残ったのは右端だっけ、
1つ隙間があったんだっけ?」
と迷うことがあるためです。


ここで迷わないためには、
プレイヤー自身がゲームオーバーの瞬間のフィールド状況
キッチリ記憶しておかなければならず…

記憶が苦手なタイプのプレイヤー(僕とかw)にとって、
余分な労力が発生してしまう箇所だと思うのです。





『成功ルートを記録する』


紆余曲折を経てステージクリアできたとき、
その成功ルートが記録されるようになることを、
強く希望します。


人によってクリア方法が異なる自由ぶりが、
『直感ヒトフデ』の魅力の1つ。

「君は、そうやって解いたのか〜。
でも、俺はこうやって解いたぜ?」
といった感じで、
友人同士で見せ合う楽しみも生まれるのではないでしょうか?





『通過の重複を認める』


現状のシステムでは認めていない『通過の重複』を、
認めるシステムにしてしまってはどうでしょう?

つまり、一度通った場所も、2回以上通過できるシステムです。


この場合、「奇数回」通過したマスのパーツは白黒が反転し、
「複数回」通過したマスでは反転は起こらないことになります。

これにより、ステージのバリエーションを、
さらに増やすことができる
と思います。


…ただ正直なところ、
「外周通過OK」を認めている当ゲームのシステムで、
さらに「通過の重複」まで認めてしまうと、
自由度が高すぎて、問題のバリエーションが増えすぎ…

結果、難度がドカンと上昇してしまいそうな気もするので、
あまり現実的ではないですね(笑)


ただ、ゲーム全体を通じた基本システムとしてではなく、
上級者向けの『重複通過を認める、専用の高難度問題集』などであれば、
オマケ的な意味で面白いのではないでしょうか?







■第4章 『総評』



細かくすばやい移動を必要とするシステムがDSのタッチペンと相性が良く、
レスポンスも良好、基本的なシステムにも魅力があり、
過度な装飾を廃した外観や、涼しげな音楽も個人的に好評価
なのですが…


もう1つ基本システムを活かしきれていない「チャレンジモード」など、
全体的なボリューム不足に難を感じます

定価が、平均的なDSソフトより1000円安いですが、
それを差し引いても食い足りません。


批評内で提案した『ターン性パズル』か、
いっその事、現行システムを基盤にした
『まったく別の遊び方を提案したゲームモード』

を追加すれば、商品としての幅も増すのではないかと思います。




ところで…

自分、この『直感ヒトフデ』が、ハードの順番からして
『通勤ヒトフデ』(ゲームボーイアドバンス用)
続編だとばかり思っていたのですが…

この批評を書くために調べてみたところ、
実は だと知って、驚いているところです。

しまったー。
だとすると、今回の批評で挙げた難点は、
「通勤〜」で改良されている可能性がありますね。


言われてみれば、自分も、
ネット上の「通勤〜」の説明サイトなどを回ってみたときに、
ゲーム内容が「直感〜」よりもが充実している感じがして、
変だな?と思っていたのです。

「どうして後発のDS版は、機能が削られているんだろう??」
などと首を傾げていました(苦笑)


近々、お店に探しに行ってみようと思います、『通勤ヒトフデ』






[戻る]