監督 清水崇


『呪怨』


2002年 日本           執筆日:2004年 11月4日





■第一章 『ザッピング』


『呪怨』は、ホラーです。

町の一角にある平凡な一戸建てで起こった殺人事件を軸に、
そこからじわじわと感染拡大していく『呪いによる死』を、
6人の被害者(プラスアルファ)の視点から描いています。



正直、話としては単純なもので、
『問題の家に関わった者がネズミ算的に呪われ死んでいく』
というものです。

が、『ハデな音響に頼らない演出』
『じわじわと日常が狂い、忍び寄ってくる死の表現』
『6章仕立てにし、章ごとに軸となる被害者にスポットを当てることで、
それぞれの人物が直面した恐怖をユーザーに分かりやすくしている』

など、細やかで実直な工夫が、作品の印象を良くしています。



また、「霊感」などの安っぽい要素を混ぜずに、
『誰の目にも見える』かたちで恐怖を描いているのには
非常に好感が持てました。

トイレから出てきた黒女が、無言で廊下を移動していく姿が、
ちゃんとビデオに「録画」されているのには感動。

もっとも、霊を盲信しているデンジャラスに言わせれば、
『霊は「電気的」なものだからビデオにも録画されるのだ』とか言うだろうが…
大人になれよ。 本当の意味で。




さて、今回の批評は、まだ見ていない人のために
出来るだけネタバレが無いようボカして表現しますが、
まだ映画を見ていない人は見てから読んでくれると嬉しいです。

では始めましょう。







■第二章 『怖さのポイント』


この映画には、いくつかポイントとなる『恐怖要素』があります。



まずは『白い子供』

画面の端や物陰から、主人公をじーー… と見つめたり、
後ろを横切ったり、テーブルの下から無言で見上げていたりします。
実害があるわけではないですが、かなり遠慮したい相手です。

よーく画面を見ているとチラチラ映るので、
気付けば画面に釘付けになって探してる自分がいたりします。



次に『黒い大女』

自分的には最強に怖かったのがコレ。
2メートル弱ぐらいの髪をダラリと下げた大女なのですが、全身が真っ黒です。
目だけ付いてます。

黒い布で作った巨大テルテル坊主に、
古くて真っ黒の長髪カツラをかぶせた姿
を想像してください。
そいつが地面をゆっくり滑るように移動するのです。

外灯も無い田舎の夜道でこんなヤツに出会ったら、
実害の有る無しに関わらずショック死するかもしれん。



あと『這いずり女』

こいつは実害があって、地面をベタベタ這いずりながら
憐れな被害者を捕獲し、屋根裏に運んでいきます。

移動時にギリギリギリ… と、不快な音を発します。



最後に『電話』

昔からホラー物の身近な小道具として使われる電話の着信音が、
この映画ではけっこう頻繁に鳴ります。

考えてみると、どうして電話音て、あんな
『唐突に日常を切り裂く』ような音で鳴るのかなー?


…NT○Tが、ユーザー本位じゃ無いからか?







■第三章 『問題点を挙げるなら…』


かなり楽しめたんだけど、ちょと小さな問題も感じました。



まず、『ハッキリ見えてしまうとあまり怖くない点』

最後のほうになると、家にとり憑いている幽霊が全員見えるように
なるんだけど、いざ見えてしまうと『あぁ、こんなものかなー?』
という感じで急に白けてしまいました。
(画面が全体的に明るかったのも一因かも?)

実害が出るまでは怖かったんだけど、実際に人が死んだり
天井裏に引きずり込まれるといった状況が発生すると、
なんか冷めてしまって恐怖を感じなくなるんですよねー。

最後に出てきた「お父さん」の肌の色が血色良かったのも、
白け気分に拍車をかけたように思います。



あと、オバケ屋敷と同じで『1度きりの恐怖』を
味わうタイプの作品ではないか?
と思いました。

2度3度と見てしまうと、
どのタイミングで何が起こるのか分かっているので、
味わって見るのには適していないように思えます。

ただ、これは恐怖映画全般が持つ弱点なので、
仕方無いといえばそれまでだけど。
もちろん、1度目は間違いなく怖かったです




最後に…

主人公が夜中に、ベッドの周りを数10匹の黒猫に囲まれるという
恐怖体験をするんだけど、猫好きの僕はこのシーンで悲鳴をあげましたね。


うらやましくて。





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