監督: 中田 秀夫


『仄暗い水の底から』


2002年 日本          執筆日:2005年 8月30日




【最初にお詫び】

この批評は、筆者が以前にこの作品を見た当時(2005年5月ごろ)の
批評用メモを元に内容を思い出しつつ書いたものです。
そのため部分的に勘違いした批評が混じるかもしれません。
もし、そういった点にお気づきの方がいらっしゃいましたら、ご指摘いただけると幸いです。

夜露死苦〜





■第一章 『ダディ視点』


『仄暗い水の底から』は、ホラーです。


これを勧めてくれたKJIさん曰く
『ロ○リコンなら見とかなきゃ』だそうです。

おお俺はロ○リコンじゃ無えぇ。(今は



でもたしかに出てくる女の子はかわいいですね。
白パンティラ(ロリ語)とか気合入れて撮られてるし。


お母さん(黒木瞳さん)もかわいいです。

母子でペッドの上で「きゃ〜」とか戯れる愛らしいシーンもあって、
思わず心が『パパ視点』になった私であることよ。



さすがKJIさんは(いろんな意味で)イイ作品をお持ちでいらっしゃる。



物語の内容は、
『離婚調停中の母子が、住み始めたマンション内で
少しずつ異常な事態にまきこまれて、やがて…

といった感じです。


設定としては決して悪くないし、
全体の出来もイイほうだと思いますが、
僕は見てて辛かったー。

理由は次章以降で。






■第二章『さたなきあ』


ではまず、当作品から感じた良い点について。



『少しずつ狂っていく環境』

主人公は「離婚した30代前後の女性」なのですが、
このお母さんが色々な『リアリティある問題』に直面します。

『娘の養育権をめぐる、夫との確執』
『家庭裁判所などでの夫の嫌がらせ』
『マンションの上階からの少量の水漏れと、それによって広がる天井のシミ』
『頼りにならない、公務員気質のマンション管理人』
『子供への接し方がどこかイビツな、娘の保育所所員』
などなど…

現実世界で社会人や親をリアルタイムでやっている人間にとっては、
大小の違いはあれど直面する可能性が高い問題ばかりで、
感情移入度は並ではありません。


実はこれらの問題の中に『主人公の最期に関わる問題』が混ぜてあります。


生活における様々な問題にジワジワ責められる主人公が、
うっかり優先順位を下げがちな問題が、実は致命だったのです。


終わってみれば、『あの時すでに始まっていたのに、どうして手を
打たなかったんだろう』
という後悔すらにじむストーリーの流れは、
知る人ぞ知るホラー小説家『さたなきあ』さんの作風に通じるものがあり、
個人的に大変好感が持てます。




『川井憲次さんの音楽』

ファンです。




『ラストシーン』

(以下、ネタバレ注意)

エレベータという逃げ場の無い空間で、主人公にギクシャクと近寄ってくる
『灰色のドロのように溶けた顔面の少女』
というシーンは、僕が今まで見た怪奇モノの中でも屈指の恐怖度でありました、
ヒ〜〜〜〜〜〜〜〜!






■第三章 『四面楚歌』


逆に、引っかかった点としては…



『各種問題にリアリティがありすぎ』

心に余裕の持てる時代だったら、もう少し「客観視」できる内容だと思います。

が、不景気の昨今、
『心がイビツな人間』 『自己中心だけでしか動けない人間』といった、
ストレスのせいで即物的思考しかはたらかないほどに脳が弱った人間
相手を強いられる現代社会においては、この作品の主人公の立場は辛すぎて、
フィクションとして楽しめません。




『四面楚歌』

上記に関連して、主人公の周りにまったく味方のいない環境が、
この物語を「辛く」しています。

後半に至って、やっとある程度主人公の立場に理解を示す
「法律事務所関係の男」が出てくるので、わずかな救いがありますが…


この環境のせいで、主人公にジワリジワリと近づく「幽霊」の存在すら、
脳が弱って他人に迷惑ばかりかける「周辺のダメ人間の1人」のように思え、
『もう、いいかげんにしたれや!』と思ったほど。


見てて、怖いというより、腹立たしくてイライラしました。




『川井憲次さんの音楽』

悲壮感ただよう音楽がうますぎるので、
怖いというより主人公がかわいそうすぎ。






■第四章 『まとめ』


全体としては、ゆっくりと主人公を追い詰めていく環境づくりが丁寧で、
最後にドカンと恐怖を見せつけるサービス精神(?)など、
なかなかに良いデキの作品だと思います。


ただ、大人が見ると結末まで見るには過程が辛すぎるし、
子供が見ると過程の意味が分からずダレてしまうような気がします。

主人公の抱える苦難を2割ほど軽くし、
逆に、主人公の生活の安定を2割ほど増せば、
もっと見やすくなるのでは?
 と思います。


とりあえず僕個人としては、
『今後も応援したい作り手の1人』に出会えた気がしました。






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