監督「ティム=バートン」

『マーズ・アタック!』

1996年 アメリカ



■第一章『来訪者』

…大挙して押し寄せた火星人と、地球人を描いた物語です。

この作品で描かれるところの火星人は、「目ん玉」と「歯」と
「脳みそ」がデカくてむき出しの方々
であります。

『火星人』=丸いガラスのヘルメット(アンテナ付)をかぶったタコ
という先入観を持っていた自分が恥ずかしいです。

この場を借りて火星の皆さんに謝罪したいと思います。


…さて、その物語なのですが、まず地球人たちは、言語も文化も異なる
であろう火星人と意思の疎通を図るために「翻訳機」をこしらえます。 
それはイイんですが、製作に1日ていどしかかかってません。

早すぎません?
恐るべし、地球の科学力。

で、火星人の会話を翻訳してみると
『我々は平和の使者である』という嬉しい内容。

アメリカに着陸した火星人の代表を「地球式」の礼儀で出迎え、
平和のシンボル「鳩」を空に放ったところ、なぜか火星人仰天。
いきなり周りの人々に銃を乱射して、出迎え会場は大パニック。

どうも「鳥」という生き物を恐れているようなのです。
多くの死傷者を出し、火星人への核攻撃の必要性を主張する軍部と
あくまで平和交渉を主張するアメリカ大統領が対立。

地球はどうなってしまうのか?
…と、ここらへんまでは結構まともな話だったんですけどねぇ。



■第二章『翻訳機で分裂』

…アメリカ大統領、宇宙空間で待機している火星人のUFOに
無線電波で、平和的交渉を呼びかけます。

なるほど、この火星と地球のいさかいの溝を埋めていく過程を描くことで、
異文化と接し、それを理解していくことの困難さと素晴らしさ
表現するつもりなんだな。 こんな難しい題材で映画を作るなんて、
この監督はスゴいなぁ、と期待して見ていたのですが…

その電文を読み取った火星人、
なんと「ケケケケ」とバカ笑いしたのです。

これは一体どういうことでしょう?
生態系も文化も価値観も異なるはずの火星人が「バカ笑い」

火星人、またも大挙して地球に降り立ち地球人の大量虐殺を開始しました。
どうも地球が開発した「翻訳機」、ちゃんと働いていないようです。
火星人たちが『逃げないで。 私たちは友達です』(翻訳機使用)とか
言いながら 地球人を虐殺してる あたりからも間違いないようです。

…と言うことは、地球の代表は
『火星の皆さん、我々地球人と皆さんは同じ太陽系の兄弟です』
と言ってるのに、火星人には

『デーブーデーブー百貫デーブー、
お前の母ちゃん腸ねん転、
お前の父ちゃんジステンバー』


とか聞こえていたかも知れませんね。

 そら怒りますがな。

やっぱり急場しのぎで作ったものはダメですねぇ。
それともアメ製だからか?  ←問題発言



■第三章『地球、完膚なきまでに敗北』

…火星人の圧倒的戦力によって、地球はあらゆる場所で壊滅的な
ダメージを受けます。彼らの銃で撃たれると地球人はアッという間に
骨だけ(なぜかカラフルな蛍光色付き)にされてしまいます。

ここらへんの映像はスムーズで、けっこう気持ち悪いです。

他にも、巨大な鉄球を転がしてモアイ象を倒して
大喜び
したり、地球人のエッチシーンを覗き見して
ヘルメットのガラスが曇るほど息を荒して大興奮したり…

て、あの、すみません、話の途中ですけど念を押させて下さい。
この行為は 「場末のチンピラ」 でも 「浮浪者」 でもなく
『火星人』によって行われたものです。


…で、彼らは大胆にも「地球の女性」に変装して
米国ホワイトハウスに潜入を試みるのです。

変装といっても、前述のとおり彼らの「巨大な脳みそ」は
人間の頭2個分はあります。

案の定、出てきた女性の姿は
「頭でっかちで無表情でガクガクとぎこちない
フラダンスのような動きを見せつつガムを食う女」

という、もう変装がどうとか言う以前に、町で出会ったら
後頭部めがけて金属バットをフルスイング確定の外見でありました。

なのに、ホワイトハウス専属の男性記者は彼女に興味を示し、
嬉々としてハウス内に招き入れ自慢げに建物を案内するのでした。

なんで気付きませんか?

記者に対するヤキモキした思いは、「ドリフの志村が
観客のほうを向いているときは後ろに現れ、ハッと志村が
振り向くと消えてしまう幽霊」
に似たものがあります。

『志村ー、後ろ後ろ』 とか言いたくなるあの感じに。

結局、正体をあらわした火星人によってホワイトハウス内で大虐殺。
さすがはホワイトハウス、 見事なセキュリティですね。



■第四章『俺の歌を聞け』

…ところが、ほとんど無敵の火星人軍団に思わぬ弱点が発見されたのです。

なんとそれは「歌」

20世紀前半に流行したような、いわゆるアメ国の
「なつメロ」みたいな曲なんですが。
このレコードを聴いていたお年寄りの部屋に乗り込んだ火星人たちが、
突如、もがき苦しんだ末、脳みそを破裂させて死んでしまったのです。

「全ての物質は各々特定の振動数値に共鳴した場合、その結合を解かれ崩壊する」
というわけですね。 成程々々。

でもねぇアナタ、「歌」ですよ「歌」。
詰まるところは人間の「声」じゃないですか。
なんで火星人は、最初のほうで地球人たちに出迎えられ
歓迎の言葉を受けていたときに爆裂しなかったんでしょうねぇ?

…まあ、そこは大らかな気質のアメリカらしく、微塵の疑問も持たずに
戦車にスピーカーを取り付けて「なつメロ」垂れ流し。

爆裂する火星人。 墜落するUFO。

宇宙空間で待機していたUFO艦隊にも電波を通じて
「なつメロ」を届けるという丁寧な殲滅作戦によって、
驚くほど呆気なく火星人たちは全滅してしまいました。

いいんでしょうか、こんなに手軽に1つの文明が滅んでしまって。

とは言え、こうして地球は絶滅の危機を脱し、
平穏な日々は取り戻されたのでした。



■第五章『総括』

…私の知り合いは結構「映画好き」が多くて、
「彼らともっと熱く深く語りたい」と考えて
少ーしずつ映画を見るようになったのが、
ほんの半年ほど前なのですが、おかげで最近は映画の
見方のようなものが掴めてきたように思えます。

そんな初心者な私ですが、これだけは言わせていただきます。
この『マーズアタック』クソです。

技術的なことがどうとか言っているわけではありません。
作品にとって一番大切な「何を見せ、何を伝えるか」
という点に全く統一感が無いあたりがダメなのです。

一応、刺激的な映像や伏線らしきものはあるので、最後までは見るでしょう。
でもそれは、「面白くてやめられない」のではなく、
「とりあえず見るのをやめるほどつまらないわけでもないから…」
といった非常にダラダラした観賞理由です。

見終わった後も、なんとなく煮え切らない陰鬱とした気分だけが残りました。
製作者の「愛」がありません「愛」が。

これが結論です。


…とか評価を書き終わってからネットで調べてみたら、この映画は
過去の色々な作品のパロディを網羅した作品なんだそうです。

んー、でも、それを考慮しても私は監督にこう問いたいです。
『作っていて本当に楽しかったんですか?』と。


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