監督「チャールズ=ラッセル」

『MASK(マスク)』

1994年 アメリカ



■第一章『テックス=エイブリー』

…て、誰よ? とか思われる向きもありましょうが、
20年ほど昔にテレビで放映された
アメリカのアニメ『トムとジェリー』(3話30分構成)の
2話目の「トムやジェリーが出ないほうのアニメ」を作った方です。


コミカルかつ大胆なアニメーションで、
実際には不可能な事態をすんなりと表現してみたり
(例:「尻の筋肉」だけで歩く)、
キャラクタを変身させてみたりと、
(例:美人を見つけて、顔だけ狼になって遠吠え)
「アニメーションならではの表現」の開拓者とも言うべき偉大な人物です。

( て、POP氏の受け売りですけど )


より詳しくお知りになりたい方は、
私の友人である「POP OFF」氏にお尋ねになって下さい。

ウチからリンクも貼られておりますゆえ。



…で、何でエイブリー氏の話から入ったかと申しますと、
この『MASK』という作品には、
作品中のCGによるコミカルな動きを中心として、
氏へのオマージュが非常に強く感じられる作りになっているからです。

主人公の部屋にはエイブリー氏の作品のポスターが貼られていますし、
超人「マスク」の動きはエイブリー氏の作品そのものです。

氏のファンは、それだけでも楽しめてしまう映画ですね。



  ■第二章『ストーリー』

…では、ストーリーにそって内容を説明しましょう。
当然「ネタバレ」も含みますので、
まだ『MASK』を見てない方で内容を知りたくない人は、
これ以降はお読みにならないことをお勧めします。


…で、最初にお詫びしておきたいのですが、
内容については結構うろ憶えな部分があります。

と言うのも、この批評を書きかけた頃から急に
仕事が忙しくなりまして、今こうして書きまとめている時点で、
なんと鑑賞後「3ヶ月」も経ってしまっているのです。

ですので、細部の間違いについては御了承を。 では始めましょう。



…まず、主人公ですが「ごく普通の青年」です。
しかも、何をやっても上手くいかなさそうな、
典型的「野比のび太」タイプ。

女性社員にはバカにされ、上司の信頼は皆無、
恋人もなく、家族は飼い犬1匹で、めだった趣味も特技も無いのですが、
なぜかツラは色男です。

根本的な矛盾を感じますが、作り物の世界ですから
大目に見ようと思います。



…ある夜、川底から浮かんできた
古代の魔力を秘めた『マスク』を偶然に入手した彼は、
それと知らずにマスクを被ったことで
超人的能力を身に付けるのです。

その能力とは、
テックス=エイブリーのアニメの登場人物のように、
あらゆる致命的な事態においても結果的に無傷ですむ

というものです。


…ハンマーでぶん殴られても顔がゆがむけど無傷ですし、
車に轢かれてもカーペットのようにヒラヒラになるだけでOK、
爆弾を飲み込んでも爆発時にお腹がふくれてゲップ1つで元通りという、
火の鳥もビックリの再生力が備わったのです。

…あと性格も大胆になるという都合のいいオマケ付き。
こんな力を持ったのに根が「うだつの上がらない青年」のままだと、
話を作るほうもツラかったのでしょう。



…これほどの能力を一介の、しかも
世間に対して思い通りにならない苦々しい気持ちを抱えた一青年
が手に入れてしまったのです。 考えてみれば怖い話ですね。


超人「マスク」となった彼は、
一体どんな社会騒乱をしでかすつもりなのでしょう?

脱兎の如く駆け出した彼が最初にとった行動は…

銀行を襲ったギャングを
さらに襲って大金を巻き上げる
というものでした。

これって、間にギャングを挟んではいますが
立派な銀行強盗ですね。


…で、その金で高級な(そして長い)乗用車を買って、
高級バーに乗り込み、店内で見つけた可愛い歌姫に
口笛吹いたり発情したりの大暴れ。


「大暴れ」とか言いながら、
やってることがことごとく「庶民的」なんですけど。

世界すら取れる力を得たというのに、
なにが彼を遠回りさせるのでしょう?

その姿はあたかも、
北斗神拳を体得しながら、そのパンチ力で
アスファルトを削岩して日雇いの道路工事に汗を流す

かのようにチグハグです。


…でも、なんやかんやで可愛い歌姫
(元々は銀行を襲ったギャングの愛人だった)
ハートバッチリキャッチ(死語)。


社会のダニから『金』と『女』を巻き上げる。

野郎の願望、ここに極まれりですね。



■第三章『試練、そして勝利』

…物語前半でこれほどの圧倒的パワーを手に入れてしまった主人公、
後半の話をどう展開させればよいのでしょう?

誰も「マスク」に太刀打ちできないので、
話の広げようが無いではありませんか。
「マスク」は1枚しか無いんだし。


…とか思ってたら主人公、「マスク」をあっさり
ギャングに奪われてしまいました。

しかも、まんまと罪をなすりつけられて
牢屋に投獄されてしまうという転落人生。


…マスクが無ければ所詮は「野比のび太」。
何も手立てがありません。

とか思ってたら飼い犬が来てくれて、まんまと牢屋の中に呼び込んで、
まんまとカギを盗み出して、まんまと脱獄に成功しました。

本当に自由で大らかな国ですね、アメリカ。



まんまとギャングどものパーティに潜入しましたが、
「野比のび太」には、なす術(すべ)がありません。

でも、ここでまたもや飼い犬が大活躍。
見事、マスクの奪回に成功します。


再び超人「マスク」へと変貌した主人公、
ギャングどもにこれでもかと言わんばかりにヤキを入れます。

しかもギャングがしかけた爆弾による大爆発
間一髪で食い止める大活躍で、街はフィーバー状態。


主人公、脱獄の罪もうやむや大ハッピーエンドです。



…最後に主人公、橋の上から川面にむかって
「マスク」を投げ捨てます。

もう自分には「マスク」の力は必要ないといった所でしょうか。

でも、ちゃっかり歌姫とはデキちゃったようなので、
たしかにこれ以上高望みをしてはいけませんよね、
「のび太」のくせに。


…その後、彼と歌姫が去っていくのを見送った彼の友人は、
橋から川に向かってダイビング。

流されていく「マスク」を追いかけて死に物狂いで泳ぎつづける
浅ましい姿を見せつけてジ・エンドです。

思うに、あの友人の行動は、
視聴者の心の代弁だったのかも知れませんね。

だって、ねぇ。 あの状況だったら、
俺だって飛び込みますもん。



…と、色々申しましたが、娯楽映画として見れば一級品ではないかと。
すごくスピーディかつリズミカルに、最後までブッ飛ばしてくれましたから。

ぜひ、皆様もお試しをー。



この批評を書いてから3年ほど経った「2005年1月」に、レックさんとおっしゃる方から、
「結末の説明に抜けがありますよ」との、ご指摘を受けました。

最後の最後で『川面を流れていくマスクを、主人公の飼い犬がゲット』してエンドとの事です。
たしかに言われてみると、そんな結末だったような気がする… のですが、
当時録画していたビデオテープがすでに手元に無いため、確認のしようが無い状態です。
すびばせん。 とほほ…

それにしても、何となく… いや、確実に、『次回作につなげるための伏線だよ〜ん』
という監督の思惑が見え隠れする結末に、色々と複雑な思いがよぎりますね。
「MASK」て続編あったのかな?

と思ってネット検索してみてビックリ。 なんと今年2005年の2月に、
10年の時を越えて『MASK』の続編が米国で封切りになるとのこと!

こうしてみると、レックさんは映画好きで、『MASK』の続編の情報を入手して
ネットで「MASK」関連の情報を探している過程でウチに立ち寄られたのかも知れん…
と、ちょと推理を楽しんだり。

人の出会いには、必ず何らかの原因があるものなのですね。

良い作品であることを祈ります。 『MASK2』





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