監督 りんたろう


『メトロポリス』


2001年 日本           執筆日:2004年 9月10日





■第一章 『ケムリ眉毛』


「手塚治虫」原作のマンガを、
『製作期間5年 総作画枚数15万枚 総製作費10億円』
という巨大物量でアニメ化した作品。

それが『メトロポリス』です。



2時間のアニメで作画15万枚て、アナタ。
毎秒平均20数枚ですぜ。

人間の目で明確に識別できる限界を超えてしまっておりますが、
そこは作り手のこだわりというか、
本当に『物づくり』というヤツは追究し出したら果てが無いよな…
とか、色々と他人事ではないものを感じます。



あと、このアニメのキャラデザは
「とんがり帽子のメモル」で有名な 名倉 靖博 さんが手がけており、
ヒロイン『ティマ』がヤバいくらい儚い雰囲気に描かれていたり、
登場人物のほとんどが「パッチリまつげ」「ケムリのような髪や眉毛」
を装備しており、ファンとしてはたまりません!



で、肝心の映画の中身なのですが、
視聴する少し前に会った友人のKJI氏
『うーん、アレはちょっと…』と言葉を濁したのが印象的でした。

アニメーションマニアにして名倉フリークであるKJI氏をして、
この感想を持たせた理由は何なのか?

とりあえず視聴してみましょう。






■第二章 『良し悪し』


では、視聴して感じた良し悪しを列挙してみましょう。



『ハンパでない滑らかさな動き』


「枚数をかけてるんだから当然じゃん」と言ってしまえばそれまでですが、
この滑らかさと細かさは、もうそれだけで一見の価値十分にアリです。

「うまい」「すばらしい」などのありふれた賞賛を通り越して、
『これ描いた人、過労で死んだんじゃ…?』
とすら思わせる圧倒的パワーがあります。




『声優の問題』


主人公ケンイチの声の「小林圭さん」は、
ジャズメンで声優ではないそうです。

そう言われると、あの棒読みのような演技も納得できますが、
やはり、素人に主人公を担当させるのは無理がありますよ監督ー。
…もしや、スポンサーからのゴリ押しですか?




『広いが浅い』


「人間が創造した神」
「ロボットと共存することへの潜在的恐怖」
「金メッキ社会の下にある、ZONE世界」
「道具に職を追われた人々」
「踊らされたクーデター」
「親の愛への執着」
「神に捨てられた人間」
などなど、
掘り込めば相当に重厚なファクターをいくつも持ちながら、
終わってみれば『まぁ、こんなものかなー』という
淡々とした感想しか浮かばないのは…

結局どれについても掘り込んでいないからではないでしょうか?

「2時間」という枠に詰め込む内容ではなかったのかも。
(ただ、この内容が「原作どおり」なのだとしたら、
スタッフを責めるのは筋ちがいなのだが…
僕は原作読んだこと無いのです。)





『音響が…』


大勢の人が行き来しているのにほとんどザワつきが無かったり、
重厚な見せ場で比較的演奏者の少ないジャズを奏でたり…

それも1つの表現方法かとは思うが、
『監督が観客に見せたかった内容』
として本当に適切な表現だったのだろうか?

こればかりは監督本人に聞いてみないと分からない事なだけど…






■第三章 『総評』


総評としては、
『細部まで描きこまれた「アニメーション・CG技術」を堪能する』
ためのアニメ映画で、他の要素には期待せずに観るのが正解かも?

間違いなく一見の価値はあるが。




ちなみに、この映画を見る前に、KJI氏の家で
『りんたろう監督による「メトロポリス」の絵コンテ』を見せてもらい、
その描きこみの凄まじさに驚愕しました。

同時に、『もしかして、りん監督は、
現場では孤独な人なのかも知れん』
と思いました。

理由について語るのはココでは控えますが、
恐らく、りんたろう氏は管理者よりも1クリエイターでいるほうが
幸せだろうし、多分本人もそれを望んでいるのではないかと。

すごく実直で不器用な人に思えます。



僕はそういう人、好きですが。

批評以外の内容でしめてしまい申し訳ない〜。




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