監督: 増田 敏彦


ルパン三世
『霧のエリューシヴ』


2007年 日本

執筆日: 2007年 07月28日





■第1章 『夏恒例』


今年もやってまいりました、TVスペシャル『ルパン三世』


今回のルパンは「タイムパラドックス物」です、アチャー

この系統の話は、簡単に大河感が出せる反面、
話のツジツマ合わせが非常に面倒
(タイムマシンという存在自体、自由度が高すぎるし…)
たいてい『タイムマシンの操縦者のミス待ち』
『何らかの方法でタイムマシンから引きずりおろす』

応酬になってしまうのですが…

今回の話はそこらへんをどう処理しているのでしょう?


不安にかられましたが、取りあえず観てみました。







■第2章 『概要と、良し悪し』


それでは、部分的な概要について1つ1つ見ていきましょう。

良し悪しについても、同時に考えていこうと思います。



『魔毛狂介のたくらみ』

タイムマシンの操縦者である魔毛 狂介は、
ルパン三世の子孫である33世に彼女を奪われた悔しさから、
21世紀のルパンファミリーを500年前の世界に送り込んで、
そこで苦しませた挙句葬り去ろうと画策…

…したのはフェイクで、実は自分以外にもタイムマシンをあやつっている
「もう1人の謎の存在」がうとましく、
彼を消すためにルパンを利用したそうです。(ややこしー)


なぜ「宝の伝説」がそのまま「もう1人のタイムマシン操縦者の判明」
つながるのかよく分かりませんが、おかげで「伝説の謎」が解明されるまで、
魔毛はルパンを脅すことはできても、タイムマシンを使って一気に問題を
解決することができず、かろうじてギブアンドテイクな関係を維持できています。




『全体的な作画力の高さ』

昨今のルパンのTVスペシャルとしては珍しく、
「ちゃんと動いている作画」を見た気がします。

特に前半のボートチェイスの場面では、ちゃんと船による
海水を切る船体のユワンユワンした動きが再現されていたりと、
CGエフェクトに頼らないシッカリした迫力がありました。

カーチェイスのシーンでも、ちゃんと1台1台が別々に動いていて、
なんか昔のTVシリーズを見ているようなうれしさが…

こういう基本的なところをキチンとこなした画面は、
やはり心地良い迫力がありますね。


今回は、今までの中でも屈指の画力の高さではなかったでしょうか?

もちろん、今までがちょっとアレだった、とも言えますが…

ただ今回は、全体的に原作を大事にしているというか、
モンキーパンチぽい絵柄に力を注いでいる丁寧さを感じます。
魔毛狂介が「ギャハハ笑い」したり… (笑

あと、村人のフードげな衣装デザインや色使いのせいか、
「ジブリ」の雰囲気も…




『声の限界』

小林清志さん、井上真樹夫さんは、お年をめされても演技力はあります。

が、さすがに30代前後と思しきルパンファミリーを
演じるには限界ではないでしょうか?

所々、息切れしているような発音があってハラハラしました。


もっとも、ルパンに対する「栗田貫一」のように、
適材がすぐに見つかるわけでもないでしょう。
しかし、候補探しはするべきだと思います。

実力派の声優さんに、似た声で演技してもらうのを
真剣に考えるべき時期だと思います。


すでに探してらっしゃるのでしたら、すみません、僭越でした。




『声のヒドさ』

逆に、ルパンたちと行動を共にした
「タカヤ」(大久保 祥太郎くん)「おフミ」(関根 麻里さん)の演技は、
聞いてて本当にツラかった…

前者は子供なのでかろうじて脳内変換できても、
「おフミ」は10代後半?の女性なので、あの棒読みはちょっと…

関根勤の娘なんだ… ふーん。


もう、話題作りのための素人(声優に関して)の起用は、やめてほしいよ…

TV局の押し付けに泣かされるのは、作り手と、我々ユーザーばかり…




『タイムパラドックス』

作り手がかなり苦労しているというか、
やっぱり無理がありますね…

過去の先祖を殺した時点でその子孫が「リアルタイム」に消滅するとか、
特別そういう方面に造詣が無くても、
「あれれれ?」と思うシーンが出てしまいます。

「時間旅行能力」を持った(と魔毛に思わせた)ルパンが消えた後、
それを追って、各時代の自分を見に行く魔毛のシーンは、
さすがにちょっとイタかった…

先手を打って、自分のほうが、若かりし日のルパンを殺しに行く
とか、思いつかないのかな…


魔毛が時代を飛び回った経過時間は、
きっちりルパンたちのいる時代でも経過してるし…

(お分かりでしょうか? 例えば、1月1日から7月1日に移動して、
そこで1日経って7月2日になったからといって、
わざわざ戻る日を1月2日にズラす必要は無いのです。
直接、1月1日に戻ってしまえばイイ。 そのためのタイムマシンなのですから。)



対するルパンは、魔毛が出てきそうなタイミングに罠をはって逆転…
と、ちょっと工夫が見られるんだけど、ただの科学者魔毛が、
わざわざ大泥棒ルパンの目前に現れて「それをよこせ」などと
力勝負でやり合う姿は「バカか?こいつ…」としか思えない。

場所さえ分かってしまえば、ルパンの現れる前の時間に移動して、
先に入手すれば良いのです。

へんな所で律儀なんだから、魔毛ちゃん…




『タイムマシンの最期』

結果的にタイムマシンを手に入れてしまったルパン。

これはものすごいお宝と言えますが、あまりに万能なので、
番組が終わるまでに壊しておかないと
後々話的にも厄介です。

で、どうしたかというと、現代に戻ったときに
うっかり海中に落ちてしまい「ドアが開かね〜」と絶体絶命。

やむなく五右衛門が斬鉄剣でタイムマシンをバラバラに。

また、つまらぬものを斬ったか…


視聴者にも分かりやすい、ホッとするような結末ですね。
まあ、順当な処理ではないかと思います。




『まとめ』

あまり頭を使わず、動きの楽しさを観る分には、
今回はTV番組として十分なクオリティではなかったかと思います。

物事の解決法や結果に関しても、
今までよりちょこっとずつ1歩先に進んでいるので、
全体としての印象は良いです。

ただ、他のアニメ作品と比べると、どうしても見劣りが…

2時間スペシャルと言わず、1時間1時間半にしぼって、
画力・内容ともさらに凝縮してほしい…

もったいないと思います。





以上。 まあ、いつもよりは良いものが見れたので、
個人的には「良し」という感じでしょうか?






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