『真救世主伝説 北斗の拳
ラオウ伝 殉愛の章』






2006年 日本

監督 : 今村隆寛



執筆日 : 2012年 10月04日





■第1章 『原作に、オリジナルを少々』


タイトルから、ラオウユリアの話かと思っていたのですが、
映画オリジナルキャラを交えてのダイジェスト版
(としか言いようがない) でした。


メインの登場人物は、ケンシロウ・ラオウ・シュウ・サウザー など…

時期は、聖帝十字稜建設の頃で、
「シュウとケンシロウの再会 〜 ケンシロウがサウザーを倒す」あたりです。



これに、映画オリジナル要素として、
ラオウの故郷である「修羅の国」の幼なじみの兄妹が
ラオウの覇権に力添え
したり、

妹のレイナのラオウへの恋愛感情にも似た献身
付加されている感じでしょうか?







■第2章 『誰に対して発信?』


一言で言うと、

『誰に対して発信したかったの??』

と、首をひねらざるをえない内容でした。



幼少のケンシロウの命の恩人にして、
南斗屈指の慈愛の戦士 仁星のシュウ


北斗神拳を(事実上)無効にする神の肉体を持つ南斗最強の戦士にして、
当作品屈指のキャラを持つ 聖帝サウザー



この両名とケンシロウに関わる一連のエピソードを、
しかもオリジナル要素まで追加して、
100分そこらで描ききろう!

というスタート地点からして、神をも恐れぬ暴挙です。



おかげで、原作か、昔のアニメ版をちゃんと観ていない人にとっては、
『展開がスピーディすぎて、しかもスカスカな1作』

原作か、昔のアニメ版をちゃんと観ている人にとっては、
『「おい、それを省くなよ!」とツッコミ所が満載の、
スカスカでスピーディな1作』


という、ある意味予想通りの 悲惨な代物 に仕上がってしまっております。







■第3章 『悲しみを繰り返してはならぬ』


加えてツラいのが、

『俳優などの経験はあるが、声優としては素人』

な人たちの起用です。



ケンシロウ役の 阿部 寛さんは
かろうじて我慢できるレベルですが、
(それでも何ヶ所か聞き取れなくて、DVDを巻き戻しましたが)

ラオウ役の 宇梶 剛士さんに関しては、
キャラと声の合ってなさがあまりに露骨で、
怒りを通り越して同情すら湧くほどでした。



映画も商品である以上、
「話題性」がいかに大切かは、僕も理解しているつもりです。


でも、素人声優の起用は、
その本人にとっても、制作サイドにとっても、ユーザーにとっても、
結局のところ、不幸のほうを多く残すばかり
だと思うのです。




「声優素人とは思えませんでした!!」

そんなふうに擁護するファンも一部にはいるでしょう。


でも、こういう褒め言葉って、
キチンとしたプロ意識のある人にとっては、物すごくツラい一言です。



「○○さんの声の熱演はすばらしい! とても素人とは思えません!」

阿部さんや宇梶さんは、
こんな褒め言葉で喜べる程度の俳優なのでしょうか?



素人声優の起用を推したのが、
監督さんか、スポンサーさんかは分かりませんが、

「本当に息の長い商品」を作りたいのであれば、
こうした痛々しい「話題づくり」からは、
1日も早く卒業されることを強くお勧めしたい
です。







■第4章 『まとめ』


原作を知っている者にとってはイライラする場面が多く、

原作を知らない者にとってはスカスカな内容で心に残らず、

素人声優のせいで所々セリフが聞き取れない…




久しぶりにビックリするほどダメな1作でした。



原作や、過去のアニメ版と見比べて、
「どれぐらいヒドいダイジェストになっているか」
を比較して苦笑するぐらいしか、
楽しみ方(?)が無いんじゃないかな?


とにもかくにも、地雷です。

避けて通ることをお勧めします。






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