スーパーファミコン用ソフト

『イーハトーヴォ物語』

販売…ヘクト     購入価格 1680円



■第一章『見知らぬ駅で…』

…宮沢賢治をご存知の方なら、「イーハトーヴォ」が
「岩手県」を意味する
ことをご承知でしょう。

当作品は、彼の生み出した数々の物語の、登場人物・動物・場所が混在する
架空の世界「イーハトーヴォ」
で、行方不明の「宮沢賢治」をさがして
1年間を過ごすアドベンチャーゲームです。

主人公である「あなた」は、ある日「イーハトーヴォ」という見知らぬ駅で下車します。

そして、住人から慕われている「宮沢賢治」なる人物への興味からその町にとどまり、
まだ見ぬ彼に会うために「7冊の手帳」を求める日々が始まるのです。


…自分がどこから来たのかも思い出せぬまま。



■第二章『当ゲームの楽しみ方』

…このゲームのシステムや演出は、非常に簡素なものです。

キャラの動き以外はフラッシュ程度しか画面に変化が無いので、
昨今のゲームに慣れた目には「手抜き」とすら感じられる場面も少なくないでしょう。

ストーリーを進めるための「お使い的行動」も多く、
古臭いゲームであることは否めません。

しかしながら、当ゲームを『SFCで読む絵本』だと解釈して見ると、
その簡素さが逆に「素朴な味わい」にも感じられるのです。


…たしかに画面に派手さはありませんが、そのグラフィックの
落ち着いた美しさと統一感には、独特の品があります。

世界観を支える音楽もたいへんに秀逸で、
音楽だけのためにCD1枚分ぐらいの金額を出す価値があります。
と言うか、私はありました。
(作曲者は、ジャレコの『EDF』やバンダイの『ゼクシード』など、
多くの作品をを手がけられている「多和田」さんです。)


また、「軸になるストーリーがほとんど原作どおり」という
思い切った構成がなされている点も興味深いです。

つまり、例えば原作でイーハトーヴォの冷夏を乗り切るために
火山を噴火させて命を落とした「グスコードブリ」は、
当ゲームでもやはり噴火に巻き込まれて死亡してしまいます。

事前に原作を読んでいると、「自分のためにセッセと情報などを提供してくれる
この人物が、もうすぐアノ事件で命を落とすのだ…」などと思え、
その切なさ・辛さは言葉では言い表せません。

アニメ『天空のエスカフローネ』で、未来が見えてしまう主人公「ひとみ」が、
「こんな能力なんかいらない」と言って泣いていましたが、そんな感じです。

逆にほとんど原作を読んでいなかった私は、いつも情報を提供してくれた
愛らしい『かま猫』があんなことになってショックでした。



…話が少々ズレてしまいましたが、つまり当作品は
『美しいグラフィックと穏やかな音楽の中で、
「宮沢賢治」の作品世界をのんびりと味わうゲーム』

なのです。

涼しい秋ごろに、2、3日かけて静かに味わいつつプレイするのがお勧めです。
セガサターンソフトの『七つ風の島物語』(ギブロ)のような
ゲームが好きな方なら、きっと楽しめることでしょう。

そうでない人も、一度はさわってみる価値のあるゲームだと思います。

お試しを。



戻る